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脳神経外科

脳血管障害に対する脳血管内手術

脳血管内手術について

脳血管内手術とは、頭部や頚部を切開しないで病気を治療する方法で、脳神経外科の医療現場において急速に普及しています。足の付け根や腕の血管からカテーテルという細くて柔らかい管を入れて脳血管まで誘導して病気の治療を行います。脳血管内手術が登場する以前は、脳神経疾患に対する外科的治療は開頭手術が行われていましたが、開頭手術は全身麻酔で行われ頭蓋骨を開けるなど侵襲が大きく、患者さんの身体には大きな負担がかかります。しかし脳血管内手術は身体に傷がつくのはカテーテルの穿刺部位だけで、局所麻酔でも治療が可能で、患者さんへの負担は大幅に軽減されます。治療成績も開頭手術に劣らないという研究結果が多く発表され、一部の脳血管内手術では開頭手術よりも良い治療成績を期待できることが分かっています。当施設においても脳血管内手術を積極的に取り入れ、ひとつひとつの疾患に対して有効で安全な治療法が選択されるように取り組んでおり、年間約100例の血管内手術を行っています。

 

脳血管内手術の適応疾患

脳血管内手術の適応疾患は、脳動脈瘤、脳梗塞(脳主幹動脈や頚動脈の急性閉塞および狭窄症)、脳動静脈奇形、脊髄動静脈奇形、硬膜動静脈瘻、脳腫瘍など多岐に渡ります。また、脳卒中の治療においても有効性が示されています。なかでも急性期脳梗塞に対する血栓回収(溶解)治療は、世界的な大規模試験において治療の有効性が示され、脳梗塞後の患者さんの後遺症を少しでも軽減する治療として認識されるようになりました。当施設でもこれらの治療をいち早く取り入れ、24時間365日体制で患者さんを受け入れています。

1.脳動脈瘤

脳動脈瘤は、脳血管の壁に瘤(コブ)ができたものです。瘤が大きくなるとそれだけ血管の壁が薄くなり、破裂してしまうことがあります。脳動脈瘤が破裂するとくも膜下出血となります。くも膜下出血は、半数以上の患者さんが死亡または重篤な後遺症が残るとされる重大疾患です。くも膜下出血を起こすと、直ちに破裂した脳動脈瘤を治療する必要があります。脳動脈瘤の治療には、主に開頭クリッピング術とコイル塞栓術の2通りがあります。開頭クリッピング術は、頭蓋骨を開けて脳動脈瘤の根元をクリップで挟む手術です。コイル塞栓術は、細いカテーテルを脳動脈瘤の中まで持っていき、そこからコイルと呼ばれる細くて柔らかいプラチナ線を詰める手術です。近年では脳ドックの普及とともに、破裂前の動脈瘤(未破裂脳動脈瘤)が発見されることが増えてきました。未破裂脳動脈瘤に対しても同様の手術をして、将来破裂してくも膜下出血となるのを予防することができます。



2.頚動脈狭窄症(脳梗塞の原因)
頚動脈は心臓と脳血管とをつなぐ大切な血流路です。これが狭窄する(頚動脈狭窄症)と脳梗塞の原因となることがあります。脳梗塞を起こす機序は2つあり、1つは頚動脈が細いために十分な血液が脳に送れなくなることです。狭窄率が高いほど脳梗塞を起こす危険性も高くなります。もう1つの機序は頚動脈を狭窄させている血管内の粥腫(プラーク)が一部剥がれて脳血管の方に飛んで血管が詰まってしまうことです。粥腫に軟らかい成分が含まれていれば剥がれる危険性が高くなります。頚動脈狭窄が原因で脳梗塞や一過性脳虚血発作を頻繁に発症していたり、無症候性であっても狭窄が高度であったり、粥腫がはがれやすい性質のものである場合、将来の脳梗塞発症のリスクを軽減するために予防手術を行います。頚動脈狭窄症に対する外科的治療には、頚動脈内膜剥離術(CEA)と頚動脈ステント留置術(CAS)の2通りの方法があります。頚動脈内膜剥離術は、首を直接切って頚動脈に切開を入れて、中にたまった粥腫を切除してきれいにし、その後また頚動脈を縫い合わせる方法です。頚動脈ステント留置術は、血管の中から風船で頚動脈を膨らませて、ステントという柔らかい形状記憶金属でできた網状の筒を頚動脈内に留置して血管を広げる方法です。首や頚動脈を切らなくても良く、局所麻酔で施行可能で患者さんへの侵襲が少ないなどの長所があります。



3.急性期脳梗塞
 脳梗塞とは、脳の血管が詰まったり何らかの原因で脳の血のめぐりが悪くなって脳組織が死んでしまったものを言います。脳梗塞は治療開始が早ければ早いほど機能回復が期待できます。脳梗塞急性期の治療は点滴や内服薬などの内科的な薬物治療が主体で、特別な場合に限り血管内手術などの外科的治療が行われます。発症からの時間が短く(4.5時間以内)、条件がそろう場合には血栓溶解薬(tPA:アルテプラーゼ)の静脈内投与による血栓溶解療法の適応となります。脳梗塞急性期で、血栓溶解薬でも血栓が溶けなかったり、発症から4.5時間以上が経過していたりその他何らかの理由で血栓溶解薬が使用できなかった場合、カテーテルによる血管内手術(急性期血行再建術)を行うことが有効とされています。特別な器材を用いて器械的に血栓を回収したり、動脈内に直接血栓を溶かす薬を注入して血管を再開通させる治療法です。この治療を行うことで、脳梗塞後の後遺症を軽減させることが期待できます。



当施設では、その他多くの疾患に対して脳血管内手術を行っています。脳血管内手術は患者さんにとって低侵襲で入院期間も短縮できるメリットがあり、新しい器材も次々に開発されて、手術成績も向上してきています。
脳血管内手術についてお聞きになりたいことがある方は、お気軽に外来を受診して下さい。担当医から詳しく説明させていただきます。
担当医:川西 正彦、新堂 敦、岡内 正信