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臨床遺伝ゲノム診療科

遺伝子や染色体が関係する病気の診断と遺伝性疾患の最新情報の提供と社会・心理的サポートに努めます。

隈元謙介 診療科長

隈元謙介 診療科長

診療内容

1.はじめに
近年の急速な遺伝子解析技術の発展が日常診療に大きな貢献をもたらし、がんをはじめ様々な病気の診断・治療に続々と遺伝子検査が導入されています。最近、新型コロナウイルスの診断でよく耳にするPCR検査は1987年にKary Mullisらにより開発され、その10年前にはFrederick Sangerが遺伝子配列の解読法を発明していました。それらの技術を用いてヒト一人の全遺伝子配列情報を解読するヒトゲノム計画が1990年から2003年までの13年間の歳月をかけて成し遂げられました。当時3000億円の費用がかかるため研究レベルの話でしたが、ここ数年で10万円程度まで下がり、その結果日常診療でも比較的容易に遺伝子解析が実施されるようになり始めました。一方、遺伝という概念は、1865年のメンデルの法則から1900年になってメンデルの法則の再発見により形成され、1905年に英国の遺伝学者William Batesonによりgeneticsという言葉が用いられるようになりました。日本でも1906年に夏目漱石が小説「趣味の遺伝」のなかで遺伝学という文字を使用しています。100年以上も前から確立していた遺伝学とここ数十年の新しい遺伝子解析技術が融合し、まさにこれからの時代、遺伝医学やゲノム医療による様々な病気の診断や治療が日常診療で活用され個別化医療の先駆けとなっていくものと考えます。 遺伝情報は我々の身体を構成する約37兆個の細胞すべてに刻まれています。わずかな遺伝子の配列の違いは、個人間の外見や体質の違いに関与しているだけでなく、病気のかかりやすさや薬の効果・副作用にも関与しています。大腸がんや乳がんをはじめ子宮がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がんなど様々ながんの原因となる一部に遺伝が関係していることが知られています。また、遺伝子や染色体が関係して生まれながら症状を呈する病気には適切な診断とその後の対応が必要になります。このような遺伝情報は個人情報でもあり、遺伝子検査の前後には必ず遺伝カウンセリングを受けていただき、ご本人の病気への十分な理解はもちろんのこと血縁者にも影響する可能性があることもご理解いただき実施しています。

2.受診の対象となる方
●主な対象疾患に該当する方
●主な対象疾患に該当するか不明であり、下記のような遺伝や遺伝性疾患に関わるいろいろな悩みや不安を抱いている方
例えば
・自分ががんになり家系的にもがんが多いが、遺伝するものなのか?
・家族が遺伝病だと言われているが、自分も同じ病気にかかるのだろうか?
・自分の病気が子供に遺伝しないか心配である。
・主治医に遺伝子検査を受けるように勧められたが、受けるべきか悩んでいる。
・先天異常、染色体異常、出生前診断などについて説明を受けたが、どうしたらよいのかわからない。
・子供が遺伝病と言われたが、どうなっていくのか不安である。治療法があるのか聞きたい。

3.がん遺伝子検査におけるgermline findingsについて
がん治療におけるコンパニオン診断での遺伝子検査やがん遺伝子パネル検査において、生殖細胞系列の病的バリアントが疑われることがあります(germline findings)。このような場合のカウンセリングも積極的に行います。必要あれば、確認するための検査を施行します。

4.遺伝カウンセリング(遺伝相談)について
出生前診断を希望される方や遺伝性疾患(の疑いも含む)の患者さんやその親族、あるいは遺伝について不安や悩みを抱えている方ならどなたでも対象になります。
遺伝に関する詳細な情報を提供して、遺伝性疾患の可能性や遺伝子検査を受ける必要性など十分な理解を得られたうえで、個人の意思を尊重し、様々な選択や決定を支援いたします。また、患者さんやご家族の不安を和らげられますように時間をかけて実施いたします。

5.費用について
・原則として自費診療(保険外診療)になります。
遺伝カウンセリング料は、
初回 1時間あたり 5,500円、30分延長毎に2,200円追加
2回目以降 1時間あたり 3,300円、30分延長毎に1,650円追加
・遺伝学的検査料等は、別途実費負担となります。
なお、一部の検査や検査の前後に行う遺伝カウンセリング等が保険診療として対応できる場合もありますので、詳細は担当医にお問い合わせください。

6.予約受付先
予約制になります。
香川大学医学部附属病院 総合地域医療連携センター(遺伝相談外来依頼受付担当)
TEL: 087-891-2363
受付時間:平日8:30~17:00

主な対応疾患

遺伝性腫瘍:遺伝性乳がん・卵巣がん症候群、リンチ症候群、家族性大腸腺腫症、リ・フラウメニ症候群、多発性内分泌腫瘍症、神経線維腫症など

先天性疾患・遺伝性疾患:染色体疾患(ダウン症候群、13トリソミー、18トリソミー、ターナー症候群など)、染色体微細欠失・重複症候群(22q11.2欠失症候群、ソトス症候群、プラダーウィリー症候群など)、単一遺伝子疾患(マルファン症候群、ヌーナン症候群、骨系統疾患など)、先天性代謝性疾患(ファブリー病、ゴーシェ病、フェニルケトン尿症など)、循環器疾患(遺伝性不整脈疾患、心筋症、家族性高コレステロール血症など)、神経筋疾患(結節性硬化症、筋強直性ジストロフィー、脊髄小脳変性症など)、耳鼻科疾患(先天性難聴など)

出生前検査:羊水検査、超音波検査