漏斗胸の治療について説明する「胸のかたち」研究室

大人の漏斗胸・女性の漏斗胸の手術をたくさん行っています。

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「猫背」と漏斗胸治療の関係

漏斗胸の患者の中には姿勢が悪い方が、比較的多く見られます。いわゆる「猫背」という状態です。
なぜ漏斗胸の患者さんに「猫背」が多く見られるのかは、まだ判っていません。胸が陥没していることに対して潜在的なコンプレックスがあるので、無意識のうちに隠そうとして前かがみになっているのかも知れませんし、胸郭のアンバランスが背骨の前後的位置に影響しているのかも知れません。

室長(永竿)は自身の経験から、手術を行うと姿勢が良くなる場合が多いことに気がついていました。つまり漏斗胸の手術は「猫背」を治す効果があるようなのです。

室長の大学の後輩である坂本好昭先生(慶應大学病院形成外科)が、この効果が確かにあることを実証してくれました。室長は2016年まで慶應大学病院で漏斗胸の治療を行っていました。室長の手術した患者さんの胸郭の3次元データを集め、術前と術後の形を重ね合わせてみると、背骨の曲がり方が緩やかになることが判りました。図1はある患者さんの術前の胸郭(青)に術後の胸郭(緑)を重ね合わせた図ですが、背骨の弯曲が軽減しているのがわかります。

図1:術前(青)と術後(緑)の比較
(Elsevier社Journal of Aesthetic and Plastic Surgeryより引用)

漏斗胸の患者さんの中には「猫背」について悩まれている方が沢山おられるので、室長もこの問題については並々ならぬ関心を抱いています。

そこで、なぜ漏斗胸の手術を行うと、猫背も治ることがあるのかについて、研究を行っています。
なぜこの現象が生じるのかについては研究中です。今のところ、以下のように考えています。

図2:漏斗胸におけるバー装着

漏斗胸においては図2のごとく胸郭に、矯正用のバーを装着して凹んでいる部分を持ち上げます。

図3:挙上された胸壁とバーとの関係

矯正バーにより胸壁は持ち上げられますが、もとの位置に戻ろうとするのでバーに力が加わります。バーを支えるためには支点が必要です。一本のバーは、左右それぞれ一つの点において肋骨に接しています。つまりこれらの点が、バーを支える「支点」になります(図4左)。

図4:(左)肋骨上の点がバーを支える支点となる (右)支点を通じて肋骨に、後方に向かう力が作用する。

漏斗胸の患者さんの胸壁はもともと、落ち込んでいます。それを前方に持ち上げるわけなので、持ち上げられた胸壁は、もとの位置に戻ろうとしてバーを後方(背中の方)に押します。この結果、バーを支えている肋骨は後ろ向きに推されることになります(図4右)。

図5:肋骨によって介達された力は、脊椎に作用する

 肋骨は脊椎によって支えられています。ゆえに、肋骨に力が加わると、その力は脊椎に介達します。したがって、胸壁がバーを後方に押す力は、肋骨を通じて、結果的に脊椎に伝わります。こうして脊椎に力が後方に作用するために、いわゆる「猫背」が修正されて姿勢が良くなるのではないかと、室長は考えています。

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