漏斗胸の治療について説明する「胸のかたち」研究室

大人の漏斗胸・女性の漏斗胸の手術をたくさん行っています。

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香川大学のOnly One’s

われわれの考える漏斗胸治療

1989年に米国の小児外科医であるドナルド・ナス氏により報告された、矯正バーの挿入による胸郭形成術は、従来の手術法であるラビッチ法と比べてはるかに少ない侵襲で、効率的に漏斗胸手術を行うことを可能にしました。ナス法は20世紀末から短期間に我が国にも広がり、現在(2015年)には漏斗胸に対する標準的な治療法になっています。

この反面で、私たちはここにきてナス法を見直すべき時期に来ていると考えています。ナス法はたしかに優れた手術法です。またナス法はすべての漏斗胸患者に用いられるべき、万能な手術法と見る先生方もおいでになります。しかしこの、ナス法に対する絶対崇拝という現在の潮流に対して、私たちはあえて疑問を投げかけます。

ナス法をそのまま用いてもよい結果を得ることができない症例は多々存在します。たとえば、胸郭がすでに硬化している成人の患者さんに対してナス法をそのまま用いた場合、何年か経ってバーを抜けばまた胸郭は凹んでしまいます。また、女性の漏斗胸患者さんに対して胸のかたちをきれいに治そうとするのならば、胸郭の形よりもむしろ問題になるのは乳房のかたちなのです。さらに、仮に胸郭の凹みが最終的に治ったとしても、回復の過程で患者さんに対して痛みをがまんすることを強いるならば、はたしてそれは成功した治療と言えるでしょうか?

このような、ナス法の問題点の指摘と、それに対する対策の検討は今までほとんど行われてきませんでした。ナス法の出現がドラマチックであった事と、あまりにもナス氏が有名になってしまったために、ナス法に対する批判が行われにくい空気が外科医の間にあったためです。また、ナス法を先進的な手術法と奉り、その先進的な技術を取り入れている、というスタンスをアピールすることが、患者さんや学会にとっても受けが良かったことも大きな原因です。このため、「ナス法を改良してよりよい方法にしよう」というよりも、「いかに多くの症例をナス法で治療してきたか」ということを競う流れも一部にあります。

しかしナス法が出現してからすでに四半世紀の時間が過ぎ去っているのです。ナス法に固執するのではなく、ナス法を一つの方法としてうまく使いつつも、より総合的・合理的なアプローチで漏斗胸の治療をとらえてゆく必要があります。また、画一的な手術を行って症例数をいたずらに競うよりもひとりひとりの患者さんの違いを認識したうえで、それぞれの患者さんに合ったベストな治療を提供することが重要です。

このために香川大学形成外科では、3つのミッションを自身に科しています。

1. 個々の患者さんに合った、「オーダーメイドの漏斗胸治療」を行う

ナス法が向く患者さんと向かない患者さん。ナス法の適応になったとしても、やり方を少し変えなければいけない患者さんなど、患者さんの個性に合わせた治療を行います。

2. 漏斗胸の治療を行う外科医に対して、教育と指導を行う

漏斗胸の治療をこれから始める医師に対して、技術の指導を行います。

3. 日本から漏斗胸の治療技術につき、世界に向けて情報を発信してゆく

国立大学は日本の科学技術を発展させ、世界に向けて情報を発信して行く責任をおっています。香川大学形成外科は理工学技術を応用した手術プランニングや、培養軟骨細胞の移植など、世界初の漏斗胸の治療技術を開発し、海外の一流医学雑誌に報告してきました。

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