漏斗胸の治療について説明する「胸のかたち」研究室

大人の漏斗胸・女性の漏斗胸の手術をたくさん行っています。

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女性の患者は美容の技術を

乳房の再建外科・美容外科の技術をフルに活用します

漏斗胸は確かに胸の病気ですが、胸を構成しているのは肋骨と肋軟骨、つまり「あばら」と言われる部分だけではありません。胸の印象をかたちづくる要素として、筋肉や脂肪・乳房などの軟部組織が占める割合は、「あばら」と同じかそれ以上に大きいのです。このことから、香川大学の漏斗胸チームにおいては、漏斗胸の治療の一方で、乳がんで失われた乳房の再建や、乳房の整容手術にも取り組んでいます。私たちは、「胸壁と乳房の双方を扱えてこそ、女性の漏斗胸でよい結果が出せる」と考えているからです。
今までにチームリーダーの永竿が手術した例を図1・図2に示します。

図1:左の乳房を、背中の組織で再建した例

図2:右の乳房を腹部の組織で再建した例

また、ご自身の組織を移植する方法以外に、シリコンインプラントなどを扱って乳房の外見を整える手術も行うことができます。

図3:左の乳房の豊胸を行った例

漏斗胸の手術においても、こうした乳房の再建・整容手術のノウハウを十分に発揮させます。漏斗胸の手術を行う施設は複数あります。乳房の整容や再建の治療に取り組む施設も、数多くあります。しかし、漏斗胸と乳房の双方の治療に本格的に取り組んでいる施設は、香川大学形成外科の他にはほとんどありません。ゆえに私たちは、こと女性の漏斗胸の治療に関しては日本で最高峰であるという自信があります。

傷を残しにくい切開・縫合法を行っています

傷をきれいに治すプロ

形成外科医は傷跡をきれいに治すプロ集団です。形成外科医は他の診療科にはない、切開・縫合のテクニックをもっています。また、体質的に傷が目立ちやすい場合でも、軟膏やケアによって傷が目立ちにくくするノウハウも持っています。こうしたテクニックを用いれば、目立つ傷跡を消す、あるいは目立たなくさせることができます。漏斗胸の手術にもこのテクニックを用いることにより、傷が目立たないようにしています。
特に、漏斗胸の手術において傷跡が残りにくくするテクニック(香川式切開法)を開発して手術に活用しています。

切開の部位と方向へのこだわり

思春期前の女児では乳房が発達していません。ゆえにこの時期に普通のやり方で手術を行ってしまうと、乳房の部分に傷跡が及んでしまい、ひきつれた形の乳房になってしまいます(女性におけるナス法の問題点)。数年後に乳房の変形が出ないようにするためには、その子の乳房がどのような形になるかを十分に予測した上で、切開線をデザインしなくてはいけません。私たちは豊富な乳房の形成手術の経験に基づき、最適な位置で切開を行います。
また、仮に不適切な切開によって乳房に変形が生じてしまったとしても、形成外科的なテクニックを用いれば修正することが可能です(図4:漏斗胸の教科書を共同執筆した、長野県立こども病院の野口先生からお借りしました)。香川大学形成外科では、他院で漏斗胸に対して手術をお受けになった後で、傷跡が目立つ場合や乳房に変形が生じてしまった場合に対しても、治療を行っています。

図4:胸のひきつれを修正した例

乳房と胸郭のバランスをトータルに考えた治療

別項(オーダーメイド手術プラニング)でも述べたように、香川大学形成外科においてはおのおのの患者さんにおける胸郭の硬さやかたちの個性を十分に考慮した手術のプランニングを行っています。またそれと同時に、乳房の整容手術におけるプラニングの研究も展開しています(女性の漏斗胸治療には特別の配慮が必要である » 【3.乳房のかたちは、漏斗胸の手術により変化する】)。
これらの技術を使って、個々の患者さんについて胸郭の形態や、乳房の大きさを十分に考慮した上で、その患者さんに対して最適な方法で手術を行っています。

治療の例をご覧にいれます。術前は、乳房が内側を向いていました(図5左)。乳房の向きを外側に向けるように綿密に手術を計画し、胸郭を形成しました。術後(図5右)は自然な感じになっています。

図5:乳房の位置を外側に誘導するように工夫した症例

乳房の位置は正しい位置にありましたが、胸骨の部分が大きく陥没していたので、全体として貧弱な感じの胸になっていました(図6左)。胸の中央部を持ち上げて輪郭を整えることにより、頼りない感じだった胸が、美しくなりました(図6右)。

図6:胸壁の陥没を修正して乳房の輪郭を調整

図7は、乳腺の発達が良くないので、術前はボーイッシュな感じの胸郭をしていた症例です。「女性らしい胸を作ってほしい」というのが患者さんの希望でした。胸郭の正中部が凹んでいますが、陥没の程度はそれほどではありません。このような場合には、胸郭の凹みを治すだけでは、ふっくらとした女性らしい胸にすることはなかなか難しいです。

図7:乳腺の低形成を伴った例(術前)

そこでナス法を用いて胸郭の形を整えた後に、乳房の形成術を行ってボリュームをアップしました(図8)。胸郭の輪郭がなめらかになったことに加えて、乳房も豊かになりました。女性らしい胸の感じが得られたと患者さんには喜んでいただけました。私たちは、「女性の場合には、胸郭の形を修正する漏斗胸の手術を行うだけでは、理想的な結果を得られない」と、いつも主張していますが、この患者さんはその良い例と言えます。

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