タイトル:ABCA1 as a Gatekeeper of Pancreatic β-Cell Cholesterol Homeostasis: Links Between Lipoprotein Stress, Lipotoxicity, and Insulin Secretion
著者:Kensaku Fukunaga, Toshihiro Kobayashi, Takanobu Saheki, Takafumi Yoshimura, Wenyi Jiang, Haotian Zhang, Rathana Ly, Marino Kumano, Ayako Yamashita, Hitomi Imachi and Koji Murao

このたび、膵β細胞におけるコレステロール代謝とインスリン分泌の関係についてまとめた総説論文が、国際学術誌 Nutrients に受理されました。
膵β細胞では、細胞内のコレステロール量だけでなく、その取り込み、細胞内での輸送・貯蔵、そして細胞外への排出を適切に保つことが、正常なインスリン分泌に重要です。
本総説では、細胞内コレステロールを細胞外へ排出するATP-binding cassette transporter A1(ABCA1)に着目し、膵β細胞におけるコレステロール恒常性とインスリン分泌との関係について、これまでの研究成果を体系的に整理しました。
本総説には、村尾教授の指導のもと、当科の研究グループがこれまで長年にわたり取り組んできた、膵β細胞におけるABCA1の発現調節とコレステロール代謝に関する一連の研究成果が数多く含まれています。これらの研究成果を国内外から報告された最新の知見とあわせて整理することで、膵β細胞におけるコレステロール恒常性とインスリン分泌との関係を包括的に捉えることを目指しました。
特に、GLP-1受容体シグナル、IGF-1、PPAR-α活性化などがABCA1を介したコレステロール排出を促進する一方、アンジオテンシンII、TNF-α、酸化LDL、NMDA、miR-33aなどの代謝・炎症ストレスがABCA1の発現や機能を抑制し、膵β細胞機能に影響する可能性についてまとめています。
また、ABCA1のみならず、LDL受容体、PCSK9、ABCG1、細胞内コレステロール輸送・貯蔵機構などを含めた「コレステロールの流れ(cholesterol flux)」全体のバランスが、膵β細胞の機能維持に重要であるという新たな視点を提示しました。
これらの知見は、2型糖尿病における膵β細胞障害の病態を脂質代謝の観点から理解する上で重要であり、今後の新たな治療標的や研究につながることが期待されます。
本論文の作成に携わられた皆様、論文の受理、誠におめでとうございます。


タイトル:Severe Diabetic Ketoacidosis as the Initial Presentation of m.3243A>G-Related Mitochondrial Diabetes in a 19-Year-Old Woman

本研究ではミトコンドリア糖尿病ではDKAは一般にまれとされていますが、m.3243A>G変異を有する19歳女性が重症DKAを契機に診断されました。膵島関連自己抗体は陰性で、急性期に低下していたCペプチドは代謝安定化後に回復し、内因性インスリン分泌が保たれていました。また、低身長、WPW症候群、小脳萎縮、脳病変、軽度の高乳酸血症、母系の家族歴を認めました。
遺伝子検査でmtDNA m.3243A>G変異(ヘテロプラスミー53%)が確認されました。若年者のDKAで自己抗体陰性やミトコンドリア病を示唆する所見を認める場合は、ミトコンドリア糖尿病を鑑別することが重要です。
Ly Rathana先生をはじめ、本研究に携わられた皆様、論文の採択、誠におめでとうございます。


タイトル:Changes in Eating Behavior, Physical Activity, and Glycated Hemoglobin A1c during the Transition Toward Post-Pandemic Conditions in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus: A Two-Year Retrospective Paired Analysis


本研究では、2型糖尿病患者を対象に、COVID-19パンデミック下の2021年から社会活動が徐々に正常化へ向かった2023年にかけて、食行動、身体活動、体重およびHbA1cがどのように変化したかを検討しました。

当院に通院する2型糖尿病患者を対象に解析した結果、2023年には2021年と比較して、食行動の改善と体重の減少が認められました。一方、身体活動には明らかな改善は認められず、特に75歳以上の高齢者では、身体活動頻度の低下がより大きいことが示されました。

本研究の成果は、COVID-19パンデミックから社会活動が回復していく過程においても、食行動と身体活動の変化は必ずしも並行しないことを示しています。特に高齢の2型糖尿病患者では、日常診療において身体活動の維持・評価を継続して行うことの重要性を示唆する結果と考えられます。

Ly Rathana先生をはじめ、本研究に携わられた皆様、論文の採択、誠におめでとうございます。


2026年8月9日(日)、観音寺市のハイスタッフホールにて、県民公開講座「災害に備える~内分泌代謝疾患~」を開催いたしました。

当日は42名の方にご参加いただき、多くの皆様にご来場いただきました。

講演では、「内分泌疾患の災害対策」をテーマに、当院内分泌代謝内科准教授 井町仁美先生より「副腎皮質機能低下症と災害」、助教 小林俊博先生より「糖尿病がある人のための防災入門」、助教 福長健作先生より「甲状腺疾患を持つ方が災害時に気を付けるべきこと」について、それぞれご講演いただきました。

災害時における内分泌代謝疾患への備えや、疾患を持つ方が日頃から準備しておくべきことについて、具体的に学ぶ貴重な機会となりました。

ご参加いただきました皆様、ならびに開催にご協力いただきました関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。



タイトル:Interleukin-1β decreases hepatic ATP-binding cassette subfamily A member 1 expression through p38 mitogen-activated protein kinase signaling and an H-89-sensitive pathway

本研究では、肝臓における脂質代謝に重要な役割を担うATP-binding cassette subfamily A member 1(ABCA1)に着目し、炎症性サイトカインであるインターロイキン-1β(IL-1β)が、その発現および肝細胞内の脂質蓄積に及ぼす影響を検討しました。

マウス初代培養肝細胞およびヒト肝由来HepG2細胞を用いた解析の結果、IL-1βはABCA1の遺伝子およびタンパク質発現を低下させるとともに、細胞内コレステロール量と脂肪滴の蓄積を増加させることが示されました。

さらに、このABCA1発現低下には、p38 MAPキナーゼシグナルおよびH-89感受性経路が関与し、転写調節因子PREBを介した転写制御が関係している可能性が明らかとなりました。

本研究の成果は、炎症に伴う肝細胞内脂質蓄積の分子機序の一端を明らかにするものであり、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)の病態解明や、新たな治療標的の探索につながることが期待されます。

Jingya Lyu博士をはじめ、共同研究に携わられた皆様、論文の採択、誠におめでとうございます。