がん化学療法プロトコール審査部門
がん化学療法においてはがん種によりプロトコールとして数種類の抗がん剤や副作用の発現を回避するための薬剤などが規定され、その投与方法は複雑化してきています。抗がん剤を適正に使用するためには、プロトコールにおける抗がん剤の種類と投与量、前投薬、輸液、併用薬剤、投与順序、投与経路、投与期間、休薬期間を整理して管理することが重要です。
香川大学病院(以下、本院)では平成18年7月、がん化学療法の標準化を進め、安全性の向上を図り、抗がん剤の適正使用を推進する目的でプロトコール審査委員会が設立されました。委員の構成は医師6名(委員長:腫瘍センター長)、薬剤師1名、看護師2名です。プロトコール委員会は少数精鋭でプロトコール審査の方針等を決めています。さらにプロトコールを実質審査する機関として、平成20年9月、プロトコール審査実務委員会が設立されました。委員はキャンサーボード代表者と実務に関わっている看護師で構成されています。
キャンサーボードは、がん種を臓器別に11種類に分け、関係する診療科で積極的に抗がん剤治療を行っている医師により構成されています。主ながん種には消化器がん、乳腺・内分泌がん、呼吸器がんなどがあります。例えば、消化器がんの場合、診療科は消化器外科と消化器・神経内科がキャンサーボードを務めています。
●プロトコールの申請から承認まで

プロトコールは複数の診療科から構成されるキャンサーボードで、その妥当性・必要性・安全性などが厳しく審査されることで、同一プロトコールの異なる診療科での統一化あるいは適正化がされました。さらに、プロトコール審査実務委員会では看護師が審査することで前投薬など支持療法が投与されるタイミングや投与時間が適正化され、より安全性で完成度の高いプロトコールが作成されたと考えています。抗がん剤治療は原則としてプロトコールの承認後に開始することとしているため迅速な審査が必要となります。本院では申請から審査までを3日間で行うようにしています。
がん種別登録プロトコール数
肺がん・胸膜中皮腫 | 87 | |
---|---|---|
乳がん | 63 | |
消化器がん | 胃がん | 23 |
食道がん | 7 | |
大腸がん | 31 | |
肝・胆・膵がん | 26 | |
その他 | 1 | |
婦人科がん | 86 | |
泌尿器・胚細胞腫瘍 | 52 | |
造血器腫瘍 | 128 | |
小児がん | 179 | |
骨・軟骨肉腫 | 8 | |
皮膚がん | 16 | |
頭頸部がん | 46 | |
脳腫瘍 | 21 | |
甲状腺がん | 1 | |
原発不明がん | 1 | |
がん以外に使用する生物製材 | 免疫疾患 | 14 |
眼疾患 | 3 | |
クローン | 3 | |
合計 | 796 | |
2013.11.1現在 |
診療科別登録プロトコール数
内分泌代謝・血液・免疫・呼吸器内科 | 血液 | 124 |
---|---|---|
免疫 | 13 | |
呼吸器 | 32 | |
循環器・腎臓・脳卒中内科 | 1 | |
消化器・神経内科 | 24 | |
総合診療科 | 71 | |
皮膚科 | 16 | |
小児科 | 179 | |
周産期科女性診療科 | 86 | |
消化器外科 | 2 | |
呼吸器・乳腺内分泌外科 | 呼吸器外科 | 55 |
乳腺内分泌外科 | 64 | |
整形外科 | 7 | |
泌尿器・副腎・腎移植外科 | 52 | |
脳神経外科 | 21 | |
眼科 | 3 | |
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 | 24 | |
歯・顎・口腔外科 | 22 | |
合計 | 796 | |
2013.11.1.現在 |
抗がん剤の適応外使用や、プロトコールを承認外のがん種に使用することには問題があるため、治験、臨床試験に関しても治験管理センターや医薬品等臨床研究審査委員会(IRB)と連携し、そのようなプロトコールについて倫理面と投与計画の妥当性の両方を審査することとし、抗がん剤が安全に使用されるようにしています。