香川大学医学部小児科

診療グループの概要

小児腎臓グループでは、胎児期に発見される先天性水腎症などの先天性腎尿路奇形から学校検診での検尿異常で発見される慢性糸球体腎炎など様々な疾患を対象にしています。
腎臓病は自覚症状に乏しく、病状が進行してからでないと気が付きにくいといわれているため、学校検診などで早期に発見し、適切な治療を受けることが重要です。検尿異常を認める児に対しては、詳細な問診や身体診察から鑑別疾患を検討し、尿検査や血液検査、超音波検査を行い、より正確な診断が出来るように努めております。腎臓の組織を確認する必要がある場合には腎生検を行い、より適切な治療を提供することで、腎疾患をもつ患者や家族がより良い生活を送ることが出来ることを目指しています。

注力している疾患

ネフローゼ症候群

高度蛋白尿と低アルブミン血症により全身性浮腫を来たす病態の総称で、本邦では1年間に小児10万人に6.5人が発症しています。ステロイド感受性ネフローゼ症候群が80~90%と言われており、治療の第一選択薬としてステロイドを用います。再発の多い疾患であり、頻回再発型ネフローゼ症候群やステロイドが効かないステロイド抵抗性ネフローゼ症候群と診断された場合には、免疫抑制薬による治療も行います。難治性頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群では、リツキシマブ(リンパ球のひとつであるB細胞に対する抗体)を用いて寛解維持を試みます。

IgA腎症

IgAを主体とする免疫グロブリンが関与し腎臓で炎症を起こす慢性糸球体腎炎です。70~80%が学校検診で、15~20%が感染症を契機とした肉眼的血尿で発見されます。COVID19ワクチン接種で肉眼的血尿を呈する報告があり注目されました。学校検診で早期に発見されることが多いため、成人発症と比較して小児発症では腎予後が良好と報告されています。治療方針は蛋白尿の程度や腎臓の組織所見によって決定されますが、我々の施設は香川県では数少ない小児の腎臓組織の採取が可能な施設の一つです。

先天性水腎症

腎盂・腎杯および尿管を含む尿路が先天的に拡張した病態を表します。原因としては腎盂から尿管に移行する部分の狭窄が最も多く、膀胱尿管逆流症なども原因となります。超音波検査を定期的に行いながら、必要に応じて画像検査(核医学検査)で腎機能の左右差や尿路通過障害の評価を行います。水腎症が軽度な場合は自然軽快が期待されますが、水腎症が高度な場合は経過により手術療法が選択されることもあります。

夜尿症

5歳以上の小児の就寝中の尿失禁のことで、膀胱の大きさや夜間の尿量、睡眠の深さが関与していると言われています。生活指導を始めとする治療介入を行うことで、自然経過と比べて治癒率を2~3倍に高めることが出来ると報告されています。患者、家族が希望される場合には積極的に治療介入を行っており、内服療法やアラーム療法を行っています。また、夜尿症の児は便秘症の頻度が高く、便秘症を改善させることで夜尿症が改善されることが指摘されています。そのため、便秘症も認める場合には便秘症に対する治療も一緒に行っています。

教育

定期的に小児外科と画像カンファレンスを行っており、先天性水腎症や膀胱尿管逆流症などの外科的介入が必要な症例も学ぶことが出来ます。尿検査の手技や判定方法、検診での検尿異常や夜尿症への対応など、一般小児科医としても必要な知識も学ぶことが出来ます。

診療グループ長の紹介


若林 誉幸
役職 病院助教
出身大学 香川大学
卒業年 平成21年(2009年)
専門 一般小児、小児腎臓
所属学会 日本小児科学会
日本小児腎臓病学会
日本腎臓学会
資格等 日本小児科学会 小児科専門医

メンバー構成

若林誉幸、品部佑太

関連病院

  • 香川県済生会病院
  • 四国こどもとおとなの医療センター
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若手へのメッセージ

香川県では数少ない腎生検を実施することが可能な施設の一つです。腎疾患を持つ患者や家族が笑顔で日常を送ることができるように、より正確な診断、より適切な治療を行うことができるように一緒に学んでいきましょう。