香川大学医学部小児科

診療グループの概要

アレルギー疾患は、新生児・乳児期からはじまり、成長過程でも様々に発症し、近年においても増加傾向にあると考えられています。慢性疾患の一面も持っているがゆえに、日々の生活の中で不安に思うことや悩むことの多い疾患です。
アレルギー疾患には、その多くが乳児期にアトピー性皮膚炎を発症し、後に食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎を次々と発症する「アレルギー・マーチ(atopic march)」という概念や特徴があり、発症早期に適切な診断と治療を行うことにより、この「アレルギー・マーチ」の進展を予防できると考えられています。とくに「アレルギー・マーチ」のはじまりである小児期に、いかに適切に治療するかが非常に重要です。
近年、様々なアレルギー疾患の病態解明がなされ、新しい治療薬の開発が進み、驚くほど、その治療法が変化しています。

香川大学小児科アレルギーグループでは、最新情報について把握し、常に適切な診断と管理を行うことを信条としています。何よりも、十分な説明を行うことで、アレルギー疾患を持つ子どのやその保護者の不安を解決し、生活の質 (Quality of life)の向上に役に立つような診療を目指しています。当院には日本小児臨床アレルギー学会認定の小児アレルギーエデュケーター(PAE)の看護師も勤務しており、治療アドヒアランスを含めた指導にも重点をおいています。

注力している疾患

アトピー性皮膚炎

「アレルギー・マーチ(atopic march)」のスタートとなる疾患と考えられており、その後のアレルギー疾患発症の予防のためにも早期診断・治療が重要です。治療の第一選択はステロイド外用薬ですが、慢性の経過をとるため、良くなったり悪くなったりします。われわれは、プロアクティブ療法(皮疹が改善した後も定期的にステロイド外用剤を塗布することで再発を予防し、最終的に保湿剤によるスキンケアのみでツルツルな状態を維持する治療)を適切に行い、再燃を繰り返さず良い皮膚状態を維持することを目標としています。一方、ステロイドではない外用薬や、免疫をコントロールする内服薬や注射薬が開発され、難治性や重症の患者さんにも高い効果が確認されています。

食物アレルギー

子どもに多くみられるアレルギー疾患の代表です。食物アレルギーの管理の基本は「必要最小限の除去」であり、血液検査や皮膚検査の結果だけで食物除去をすることはすすめられていません。また原因食物を食べることができる範囲で継続することは耐性獲得につながることが期待されています。そのためには、経口食物負荷試験による適切な診断や安全に摂取できる量の確認は重要です。
われわれは、県内で最も多く経口食物負荷試験を行っており、食物アレルギーの管理に力を入れています。

消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)

一般的な食物アレルギーとは症状が違い、嘔吐や下痢・血便など消化器症状がみられます。最近では卵黄による乳児の消化管アレルギーがトピックスとなっていますが、血液検査では診断することができず、食べてみないと診断や寛解(治ったかどうか)が分かりにくいのが難しい点です。われわれは消化管アレルギーに対しても、積極的に経口負荷試験を行っています。

気管支喘息

一般的な疾患で定まった治療方針もありますが、適切な診断を受けられていない場合や、吸入アドヒアランスが悪いことに気づかれずコントロールが不良な例も散見されます。当科には呼気NO検査に加え、モストグラフも導入しており、適切な診断・治療評価に努めています。またPAEの指導のもと、吸入アドヒアランスを高めることに注力しています。

教育

月に1回カンファレンスを行い、アレルギー疾患の基礎と最新情報を学ぶ機会を設けています。小児診療においては、アレルギー疾患はcommon diseaseであるので、アレルギー専門医でなくても適切な診療を行うことができることを目指しています。もちろん、アレルギー専門医を目指す場合には、将来のキャリア形成についても気軽に相談できるようにしています。

診療グループスタッフの紹介

病院助教/国立成育医療研究センターアレルギーセンター臨床研究員
荻田 博也
役職 病院助教(大学院生)
出身大学 香川大学
卒業年 平成23年(2011年)
専門 小児アレルギー
所属学会 日本小児科学会
日本アレルギー学会
日本小児アレルギー学会
日本周産期・新生児医学会
日本新生児成育医学会
The European Acaademy for Allergy and Clinical Immunoligy Junior Member
資格等 日本小児科学会 小児科専門医・指導医
日本アレルギー学会 専門医
日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生インストラクター

メンバー構成

西庄佐恵、荻田博也
(いずれも日本アレルギー学会専門医)

関連病院

  • 香川県済生会病院
  • 坂出市立病院
  • さぬき市民病院
  • 小豆島中央病院
(五十音順)

若手へのメッセージ

地域の病院にあっても、常に最新の治療を学び、高水準な治療を提供することを目指していますが、なによりも「アレルギー疾患に悩む患者と家族に寄り添う」ことが重要と考えています。私たちと共に学び、子どものアレルギー診療レベルをさらに良くしていきませんか。