アデノシン類似化合物COA-Clによる虚血性疾患新規治療法の開発(研究開始:2008.5~)

高齢化・生活習慣の欧米化などを背景に我が国では虚血性疾患の罹患者が数多く存在し、死亡原因の上位を占めるとともに医療経済面での負担となっています。虚血性疾患の例として、冠血管の障害により生じる狭心症・心筋梗塞とともに、下肢末梢血管の障害により生じる閉塞性動脈硬化症があります。虚血性疾患に対して遺伝子治療・再生治療を用いた血管新生促進による血流再建療法が試みられていますが、技術・倫理・医療経済の諸点で未だ問題が多いと考えています。

 私どもは、小分子化合物を用いた、虚血性疾患に対する新規血管新生促進療法の開発を目指しています。COA-Clは徳島文理大学と共同で開発注の、強力な血管新生促進作用を有するアデノシン類似化合物です。これまでに、培養線維芽細胞を用いて、COA-Clによる血管新生促進作用には転写補助活性化因子PGC-1αの誘導を介した血管内皮成長因子VEGFの分泌促進が重要であることを報告しています。

 現在、COA-Clを虚血性疾患の新規治療薬として応用することを念頭に、培養心筋細胞・骨格筋細胞を用いて以下の項目を検討しています。

(1)血管内皮成長因子VEGFの遺伝子・タンパク質発現解析(研究開始:2014.4)
RT-PCR法・ウエスタンブロット法・ELISA法を用い、COA-Clが心筋細胞・骨格筋細胞におけるVEGFの遺伝子・タンパク質発現に与える影響を定めます。


(2)転写補助活性化因子・PGC-1αの遺伝子プロモータ解析(研究開始:2016.1)
ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイを用い、COA-ClがPGC-1αの遺伝子プロモータ活性に与える影響を定めます。さらに分子薬理学的な手法を用い、その機作を定めます。

(3)ストレス因子負荷の解析
虚血性疾患の病態には酸化ストレス・代謝ストレスが関与することが知られています。培養細胞に対して模擬的な酸化ストレス(低酸素)・代謝ストレス(ミリスチン酸、グルコース/インスリン)を負荷し、PGC-1α/VEGF経路を抑制します。そのうえで、1)2)で検討したCOA-Clの作用を定めます。