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ブラキセラピー

前立腺永久挿入密封小線源治療(ブラキセラピー)とは?

最近、前立腺癌に関する様々な情報が新聞、テレビなどを通じてよく報道されるようになり、前立腺癌に対する関心が高まってきています。

日本の前立腺癌新規罹患者数は2000年の報告では約23,000人です。アメリカの約1/15で、その発症数はまだ多くはありません。しかし、最近は増加傾向にあり、2020年には男性の癌発症数は、1位が肺癌、2位が前立腺癌と予測されています。

日本の前立腺癌が増加している大きな要因は食生活の欧米化と高齢化にありますが、PSA(前立腺特異抗体)検診の普及により早期の前立腺癌が発見される頻度が増加したことも大きな要因です。

放射線治療方法について

早期前立腺癌の治療方法として、一般的には外科療法、放射線療法、ホルモン療法、あるいはこれらの併用療法や待機療法が選択されます。
中でも放射線治療は様々な治療法があり、大きく外照射と組織内照射に分類されます。

外照射による治療では、近年の放射線治療技術や治療計画システムの進歩と普及により、通常のリニアック装置(直線加速器)を使って高線量の放射線治療ができる原体照射やIMRT(強度変調放射線治療)が行われています。また、陽子線や炭素線を用いた粒子線治療も行われています。

一方、組織内照射では高線量率イリジウム192照射装置による組織内照射と一昨年の9月より関連する法令の改定により使用可能となったヨウ素125(I-125)シード線源による永久挿入治療があります。

ヨウ素125シード線源による小線源療法

香川大学医学部附属病院においても、ヨウ素125(I-125)シード線源永久挿入による密封小線源療法が受けられるようになりました。

ヨウ素125シード線源による永久挿入治療は、放射線による治療法の一つで、組織内照射と言われています。アメリカでは1990年頃から盛んに行われ、現在では年間約4万人がこの治療法を受けています。日本では放射線取り扱い上の法的問題があり、この治療を行うことが出来ませんでしたが、2003年9月より日本でも治療を行っています。

前立腺内に挿入する放射性ヨウ素(I-125)は、長さ約4.5mm、直径約0.8mmのチタン性のカプセル内に密封されています。I-125は非常に弱い放射線を出す物質で半減期は約60日で1年後にはほとんどゼロになります。

適応とその実際の方法

転移や浸潤がなく、癌が前立腺内に限局している早期癌がこの治療法のよい適応です。

一般には対象となる患者さんの臨床病期、PSA値、グリソンスコアにより、その適応が決定されます。前立腺肥大症などを伴って前立腺が非常に大きい場合、あるいは以前に骨盤内手術の既往がある方、骨盤への照射の既往がある方などはこの治療ができないとされています。

治療方法は入院の上麻酔をかけて超音波の画像を見ながら、会陰部(陰嚢と肛門の間)から前立腺臓器に長い筒状の針を挿入し、その針を通してI-125の線源を挿入します。針を刺入する位置、線源を留置する場所、その個数はいずれもコンピュータによる治療計画に基づいて決定されます。

治療効果と副作用

放射線を発生する線源を前立腺内に挿入することで、腺内に集中して照射する治療法ですから、大きな効果が期待できるだけでなく、周囲の膀胱や直腸への影響は少なく、その分、外照射に比べ副作用は少なくなります。

身体への負担も手術に比べて軽く、入院期間も短くて済みます。また、治療後の性機能は約7割の人で維持されると言われています。因みに、アメリカでの10年間の治療成績では前立腺全摘手術を行った場合とほぼ同程度の治療効果とされています。

今、お話したように副作用は少ないのですが、具体的な症状として、まず治療後早期に現れる症状は、排尿困難、排尿痛、肛門痛、血尿、頻尿、便意頻回などですが、その多くはあっても軽いもので、長くは続きません。また、放射線による晩期の障害として治療後、数ヶ月から2年ほどの間に異常が現れることがまれにあります。強い肛門痛や血便、血尿などがみられ、多くは何らかの治療が必要です。

合併症のリスクを減らす目的にハイドロゲルスペーサー(Space OAR)を併用

ブラキセラピーの合併症で起こうる直腸の合併症のリスクを減らします。

詳細はこちら(前立腺がん/ハイドロゲルスペーサー - Space OARを併用した放射線療法)

退院後の放射線安全管理について

退院後の日常生活の注意はほとんどありません。
小線源からの放射線はほとんど前立腺で吸収され、体外に放出されるのは微量で、周囲の方々が受ける放射線量は低いものです。
新生児や妊婦との直接接触については、2ヶ月間は避けたほうがよいとされています。

また、患者カードは1年間の携帯が義務づけられており海外渡航時は英語訳カードの携帯が必要です。もし、何らかの理由で挿入後1年以内に死亡された場合には剖検的にシードを取り出す必要があります。

前立腺癌は経過の長い病気であり治療が終了しても長期にわたり経過観察していかなければなりませんので、治療された方もこの点でご協力をお願いすることになります。

患者さまをご紹介いただくにあたって(医療関係者向け)

適応について

  • 限局性前立腺癌:臨床病期T2まで
  • PSA≦20ng/ml
  • 中分化腺癌(Gleason scoreは一応3+4までですが、それ以上の症例も当院病理医にて再検討いたしますのでご相談くだされば幸いです)
  • 骨盤内への放射線治療の既往がない
  • 前立腺容積が40ml 以下:ホルモン療法による縮小後でも可能
  • 前立腺肥大症の手術の既往がない
  • 高度の排尿障害がないもの
  • 年齢不問

前立腺が大きいと線源数が規定量を越えたり、恥骨弓の障害により穿刺が困難になります。
また前立腺容積があまり大きい場合には3-4ヶ月間のホルモン療法を先行し、前立腺を小さくしてから治療を行う場合があります。

ご紹介時にご用意いただくもの

  • 紹介状
  • 生検後であればプレパラート
  • 画像診断資料(施行してある場合)

初診から治療までの手順

  • 初診 診察,小線源治療法と他の選択枝の説明
  • 第2回目受診 臨床病期と適応の確認,術前検査 適応と判断されれば治療の説明・日程の調整
  • 一泊入院にて照射計画を立てます(preplanning)
  • CT・MRI、麻酔科受診、線源(I-125)発注
  • 3-4週間後に小線源刺入のために治療の前日に入院していただきます(3泊4日予定)
  • 1ヶ月後、外来にてCTを撮影し、postplanning を行います