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小児泌尿器科疾患

小児泌尿器疾患の種類

お子さんの泌尿器的な疾患は成人同様たくさんあり、以下のものがあげられます。

  • 包茎
  • 夜尿症
  • 排尿障害・尿失禁症
  • 尿路感染
  • 停留精巣
  • 陰嚢水腫(鼠径ヘルニア)
  • 尿道下裂・陰茎屈曲
  • 精索静脈瘤
  • 急性陰嚢症
  • 性分化疾患
  • 膀胱尿管逆流
  • 水腎症(腎盂尿管移行部通過障害)
  • 尿路結石
  • 二分脊椎・神経因性膀胱
  • 腫瘍など

ただ大人と違うことは、自然に治る病気が多くあるということです。
これらの疾患の中で診察や治療の機会が多い3つの疾患について説明します。

膀胱尿管逆流症

①膀胱尿管逆流症とは

腎臓から出た尿は尿管を通って膀胱まで流れていきますが、通常は一方通行です。膀胱内に尿がたまったり排尿した時に膀胱から尿管、腎臓へ逆に流れてしまう異常が膀胱尿管逆流症です。

多くの場合、尿管が膀胱に入ってくる部分の抵抗が先天的に弱いために生じます。
逆流の程度は腎盂・尿管の拡張の程度によって5段階に分類されており、程度が強いほど尿路感染症や腎障害を起こす可能性が高くなります。

②症状

よほど強い逆流がなければ無症状ですが、発熱を伴う尿路感染症(腎盂腎炎)を起こすことがあります。

③検査

膀胱尿管逆流症は排尿したときでないとみつからないことがあるため、実際に排尿しながらX線などの画像検査を行う「排尿時膀胱尿道造影」が必要です。
侵襲の少ない超音波検査(エコー)だけでは、確実な診断は困難です。腎臓の形態・機能を評価するために腎シンチグラムといわれる核医学検査も重要な検査です。
放射性同位元素(RI=ラジオアイソトープ)を注射して、腎臓の変化をシンチカメラで検出し、画像処理して判定します。

④治療

膀胱尿管逆流症は成長と共に自然に消失する可能性があります。そのため初期治療として抗菌薬(抗生物質)を一日一回少量飲み続けて感染を予防しながら経過観察する方法があります。

薬に対するアレルギーなどがなければ予防投与法は長期に継続しても安全な方法です。予防投与法をしている間に、再び腎盂腎炎を起こすとき、自然消失しない高度の逆流は手術(逆流防止術)の適応となります。

夜尿症

①夜尿症とは

夜尿症は睡眠中に不随意に尿を漏らすことで、自然によくなることが多いですが、その頻度は5~6歳で約20%、小学校低学年で約10%、10歳以上で5%前後とされています。

②検査・治療

初めは問診、身体診察、尿検査、画像検査(主に超音波検査)など侵襲のない検査を行います。
便秘や神経疾患、多動性障害(ADHD)、発達障害など依存症が疑われる場合はその検査や治療をすすめることがあります。

最初の治療としては行動療法(水分制限、膀胱訓練など)を行います。行動療法でよくならない場合にはアラーム療法や薬物治療を行います。アラーム療法は下着の中にセンサーを入れておいて尿が漏れたときにアラームが鳴って本人や家族が起きてトイレにいくという方法です。

夜間の膀胱の蓄尿量が増えることで治療効果が出ると考えられており、約2/3で有用といわれています。アラーム治療や薬物治療でなかなかよくならない場合は尿流動態検査という尿道からカテーテルを入れて尿路の器質的な異常や膀胱の機能を調べる検査を行うことがあります。

先天性水腎症

①先天性水腎症とは

水腎症とは腎臓で作られた尿が腎臓の中(腎盂)や尿が流れる管(尿管)にうっ滞して腎盂が拡張した状態をいいます。
尿は川の流れのように腎臓から尿管、膀胱、尿道へと流れて体外に出て行きますが、この流れの途中に狭い部位や通過障害があるとそこより上流の尿路が拡張して水腎症が生じます。

拡張の程度はさまざまで、腎臓がボールのように膨らんで見える場合もありますし、正常に比べてわずかに拡張している軽いものもあります。

②症状

最近は赤ちゃんが生まれる前に産科で胎児超音波検査(エコー)が行われるため、胎児期にみつかる水腎症が増えています。
もちろん胎児期や新生児期にはみつかっておらず幼少時に尿路感染で熱を出してから発見されたり、年長児になってから腹痛や血尿などの症状でみつかることもあります。

③検査

超音波検査(エコー)

腎臓の形をみる検査です。水腎症の程度によって1度から拡張の強い4度に4段階に分類されます。

核医学検査(レノグラム)

腎臓の機能と尿路の通過障害の程度を調べる検査です。超音波検査による水腎症の程度がきつくても実際の腎機能は正確に診断できません。

レノグラムでは少量のアイソトープ(放射性同位元素)を注射して特殊なカメラで右と左の腎臓の働きを40分程度かけて撮影します。
通過障害の程度を調べるために、検査の途中で利尿剤を使用することがあります。膀胱に尿がたまって検査中に排尿してしまう心配がある場合、検査前に尿道から管を入れておくことがあります。

この検査は赤ちゃんに行ってもきわめて安全な検査であり、アイソトープによる放射線の影響は普通のレントゲン写真を一枚撮るより少ないことがわかっています。小さいお子さんで検査中の安静が保てない場合は、鎮静剤を使用することがあります。

④治療

症状がなくて腎機能が保たれている水腎症では経過を観察します。1度、2度の軽い水腎症の場合は経過中に水腎症が改善することが多いです。
腹痛などの症状がある場合や尿路感染で発熱を繰りかえしたり、レノグラムで腎機能が低下している場合は根治術を行うことがあります。