2.トリガーツールについて

 GTT の基本はチャートレビューですが、カルテを隅々まで読み込むことはしません。トリガー(きっかけ)と呼ばれるイベントを「斜め読み」で拾い上げ、トリガーイベントがあった場合にのみ、その周辺のカルテ記載を読み込み、有害事象が起きていないか判定します。トリガーはあくまで(きっかけ)であって、有害事象ではありません。個々のトリガーについての定義は一応 ありますが、定義の細部についてこだわり過ぎる必要はありません。この方法を用いることにより、1カルテのレビュー時間は平均10 分以内となります。
 チャートレビューの本体は看護師等(薬剤師、診療情報管理士、もちろん医師でも可)が行い、最終判定は医師が行います。医師はカルテを読み込む必要は無く、看護師のレビュー記録を確認することで判定を行います。
 また、GTT では負担を軽減するため、1 ヶ月を前半と後半に分け、それぞれ10 カルテをレビューします(1 ヶ月に20 カルテ)。1 日あたり1 カルテのレビューとなり、日常業務のなかで充分こなせる作業量となります。有害事象の集計は半月毎(月の前半と後半)に行い、グラフにすることにより有害事象の発生頻度を時系列で把握することができます。また5〜6 ヶ月継続することにより、有害事象頻度のベースライン値を得ることができます。
 GTT のコンセプトは、「すべての有害事象を把握する」のではなく、限られた院内のマンパワーを用いて「可能な限りの有害事象を把握する」ことです。これまで把握することが困難であった有害事象の測定が可能となり、院内の安全対策の立案、対策の評価に大きな力となることが期待されます。

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