1.はじめに

 医療安全の究極の目標は、有害事象の撲滅、軽減にあります。わが国の医療施設では、医療安全に関する取り組み精力的に行われていますが、その効果(有害事象の頻度)を簡便に測定する手法が無く、対策の評価と改善の大きな支障となっています。院内では自発的報告システムが稼働していますが、その多くは医療のプロセスに焦点を絞ったもので、これまでの研究から有害事象の把握には不向きであることがわかっています。
 この度ご紹介させて頂くGTT(Global Trigger Tool、トリガーツール)は、米国IHI(Institute for Healthcare Improvement、医療の質改善研究所)で考案されたもので、これまで多くの時間と経験を費やすとされてきた有害事象の把握について大幅に簡素化を行い、一般医療施設で負担無く行える手法として開発されたものです。GTT は米国の「100K/5M キャンペーン(10 万人の命を救え/500 万人の命をまもるキャンペーン」の一環として多くの病院で採用されており、安全・質の改善の測定に用いられ多くの成果が上がっています。研究班ではわが国におけるこれまでの研究事例等を鑑みて、本手法をわが国でも導入する価値があると考えています。本手法を用いることにより、院内安全の程度の把握、時系列モニタリングが可能となり、貴施設の安全向上に大きく資するものと考えられます。




















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