HIV/AIDSの基礎知識

HIV感染症の治療は?

1.いつ治療を開始するの?

 CD4陽性Tリンパ球数に関係なくHIV感染症と診断された全員が治療を開始する対象になります。ただし、実際に治療を開始するにあたっては、治療を受ける意思と能力を確認すること、さらに、治療費が高額になることから医療費助成制度の活用についても十分検討する必要があります。

 早期の治療開始が推奨されるようになったのは、HIV増殖により発症・増悪する可能性のある心血管疾患や肝臓・腎疾患、悪性腫瘍合併のリスクを減少させることができることなどから、早期治療開始が予後をより改善することが明らかになってきたためです。

 また、二次感染の予防にもつながることが明らかになりました。

2.治療方法

 HIV感染症に対して、ART(Antiretriviral Therapy)という多剤併用の抗HIV療法が行われるようになり、HIV感染者の生命予後は著明に改善されています。エイズを発症して死亡される方も少なくなり、現在では、慢性ウイルス感染症と考えられるようになってきています。ARTでは、核酸系逆転写酵素阻害剤2剤(バックボーンドラッグ)と非核酸系逆転写酵素阻害剤あるいは、プロテアーゼ阻害剤あるいは、インテグラーゼ阻害剤(キードラッグ)のいずれか1剤を組み合わせて内服します。最近では、キードラッグとして「インテグラーゼ阻害剤」が主に用いられています。

 現在の治療は、合剤なども使用可能になり、1日1回~2回の内服回数で、内服する薬の数も1~3錠/日と少なくなっています。食事と関係なく内服できる薬も多くなっており、副作用も軽くなっているので、以前よりは患者の負担も軽くなっています。

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抗HIV療法を開始する前には必ず薬剤耐性検査を行って、使用可能な薬剤を確認する必要があります。また、治療の目的は血中ウイルス量を検出限界以下に抑え続けることにより、免疫能を回復/維持することです。その結果、日常生活の質を良好に保ち、HIV関連疾患や死亡を減らし生存期間を延長します。また、HIVの二次感染を減少させ、HIV感染症の拡大を防ぐことになります。従って、治療開始後は、定期的に、CD4陽性Tリンパ球数とHIVウイルス量を検査して、治療効果や免疫状態を判定します。

 抗HIV療法で重要なことは、確実に内服をすることです。内服を忘れると、薬が効きにくい薬剤耐性ウイルスができやすくなります。内服率が95%以下になるとその確率が高くなります。また、現在の治療薬では、HIVを体内から完全に排除することはできませんので、内服を開始するとその後一生薬を飲み続ける必要があります。治療期間が長くなるため、患者自らが十分納得したうえで治療を開始することが重要です。

 治療の詳細については、

抗HIV治療ガイドライン(2019年3月; https://www.haart-support.jp/guideline.htm )、

HIV感染症「治療の手引き」(2018年11月; http://www.hivjp.org/guidebook

を参照してください。

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