HIV感染症における自然経過は、下記の3つの時期に分かれます(図1)。
HIVが感染すると、感染後1~2週間の間にウイルスが急速に体内で増殖します。この時期に約半数の患者で発熱・発疹・リンパ節腫脹などの急性ウイルス感染症状が出ます(インフルエンザ様症状や無菌性髄膜炎症状など;表1)。その後、ウイルス量は減少して、症状も消失します。当院では現在までに、感染性腸炎、無菌性髄膜炎、感染性筋炎、血小板減少症などで発症し、急性感染期に診断されたHIV感染症患者を経験しています。
急性感染期を過ぎると慢性のウイルス感染状態に移行します。この時期は、あまり臨床症状がみられませんが、体の中では、HIVと免疫機構とが拮抗した戦いを続けています。この状態は平均10年くらい続くとされてきましたが、近年短くなる傾向があるといわれています。経過とともにHIV量が増加して、CD4陽性Tリンパ球が減少してきます。
CD4陽性Tリンパ球が減少すると免疫力が低下して、日和見感染症や日和見腫瘍を合併しやすくなります(特に、200/mL以下になると合併しやすくなるといわれています)。エイズ指標疾患(表2)である日和見感染症や日和見腫瘍を併発した場合にエイズ発症と呼びます。治療が行われない場合、エイズ発症から約2年で死亡するといわれています。