Kagawa University School of Nuring香川大学医学部看護学科 地域看護学

抄読会報告

令和6年5月1日実施

日付:May 1, 2024 担当者:Kozai, F.
主題:Maternal body mass index in early pregnancy and offspring asthma, rhinitis and eczema up to 16 years of age
(妊娠初期の母体のBMIと16歳までの子どもの喘息、鼻炎、湿疹の関連)
著者:S. Ekström, J. Magnusson, I. Kull, et al.
出典:Clinical & Experimental Allergy 2015 Jan; 45 : 283-291

1.Abstract

1)背景・目的

母体の肥満が子どもの喘息と関連していることは明らかにされてきたが、小学校低学年以降の発症との関連や、他のアレルギー疾患との関連についてほとんど研究されていない。そこで本研究は、妊娠初期の母体のBMIと16歳までの子どもの喘息、鼻炎、湿疹および感作との関連を明らかにすることを目的とした。

2)デザイン

前向きコホート研究

3)セッティング

スウェーデン ストックホルム

4)対象者

スウェーデンの出生コホートBAMSEに登録されている3294人の子ども

5)データ収集・解析方法

母体のBMIは妊娠10週頃で評価した。子どもが1,2,4,8,12,16歳時点において、保護者への質問紙調査によってアウトカムである喘息、鼻炎、湿疹と関連因子である生活習慣要因、環境暴露についての情報を得た。なお、その他のアウトカムである感作については、サブサンプルの2850人の子どもにおいて4,8,16歳時点の吸入性アレルゲンに対するIgE値とした。子どもが1から16歳に至るまでのアウトカムとの関連を解析するために、一般化推定方程式モデル(GEE)を用いた。

6)結果

母体のBMIは、低体重の母親を除くと、16歳までの喘息の全体的なリスクにおいて正の相関が見られた(5kg/m2増加あたり喘息有病率の調整OR:1.23; 95%信頼区間1.07-1.40)。一方で、鼻炎、湿疹、感作については有意な関連は認められなかった。子どもの喘息との関連は母親の過体重よりも肥満に限定されたが、子ども自身の過体重を調整するとその関連は弱まった。さらに、16歳時の因果推論検定では、母体のBMIと16歳時の子どもの喘息との関連において、子ども自身の過体重が中間因子であることが示唆された。

7)結論

母体のBMIは、子どもの喘息のリスク上昇と関連しているが、鼻炎、湿疹および感作とは関連していない。しかし、子どもの過体重は介在的な役割(中間因子)を果たしている可能性があった。母親の妊娠前および小児期に肥満を予防することは、小児喘息の有病率を減らすために重要であるだろう。

2.Discussion Points

  • 緒言には、親の肥満が子どもの喘息と関連していることについては詳細に記載されているが、子ども自身の過体重がアレルギー疾患発症の介在的役割を果たしていることについても説明すると、概念枠組みがより明確になるのではないか。
  • 選定条件に、フォローアップ期間中におこなったアンケートの回答が3時点以上であることを挙げているが、小児喘息発症の好発年齢(3歳までに60%、6歳までに90%)以降までを対象としない場合、例えば4歳までとした場合にはその後の発症をカウントできない可能性がある。少なくとも好発年齢を過ぎた8歳までの回答があった子どもを分析対象とするべきではないだろうか。
  • 胎児の器官形成期は妊娠数週5週~11週頃とされており、この時期の母体の体格は非妊娠時の体格と大きな差がないため、妊娠前からの予防を示唆する結果として捉えることができるだろう。
  • 母体のBMIと子どもの喘息の用量反応の分析において、BMI20kg/m²を基準にした根拠が記載されていない。臨床的に20kg/m²がもつ意味を考察に述べることで、予防の際の示唆が得られたのではないか。

令和6年4月3日実施

日付:2024年4月3日 担当者:H Toki
主題:Effectiveness of a Multifaceted Intervention for Prevention of Obesity in Primary School Children in China:A Cluster Randomized Clinical Trial
(中国の小学生の肥満予防のための多面的介入の有効性:クラスターランダム化臨床試験)
著者:Zheng Liu , Pei Gao , Ai-Yu Gao et al.
出典:JAMA pediatrics 2022;176(1)

1.Abstract

1)目的

急速な栄養転換により、多くの国で小児肥満の有病率は上昇しているが、効果的な予防介入のレパートリーは限られている。本研究は、小学生における肥満予防のための新しい多面的介入の有効性を明らかにすることを目的とした。

2)研究デザイン

クラスターランダム化臨床試験

3)セッティング

中国の社会経済的に異なる3つの地域(東部(北京)、中部(山西省長治)、西部(新疆ウイグル自治区ウルムチ))

4)対象者

24校に所属し8〜10歳の適格基準を満たす1392人を介入群と対照群に無作為に割り付けた(1:1)。

5)データ収集・解析方法

多面的介入は、子ども(健康的な食事や身体活動の促進)とその環境(子どもの行動変容を支援するための学校や家族の関与)を対象とした。主要アウトカムは、ベースラインから試験終了時までのBody Mass Index (BMI:体重(kg)/身長(m2))の変化であった。副次アウトカムは、肥満と関連するアウトカム(BMI zスコア、肥満の有病率等)、血圧、身体活動および食行動、肥満に関する知識、体力を含んだ。
解析には、一般化線形混合モデルを用いた。

6)結果

1392人の対象者(平均(SD)年齢9.6(0.4)歳、男子717人(51.5%)、平均(SD)BMI18.6(3.7))のうち、追跡できた1362人(97.8%)を解析対象とした。ベースラインから試験終了時までに、介入群の平均BMIが低下したのに対して、対照群では増加した。BMI変化の平均値の群間差は、−0.46(95%信頼区間 −0.67〜−0.25、p<0.001)であり、地域別、性別、母親の学歴、主要な養育者(親vs親以外)の間に差はなかった。肥満の有病率は、対照群ではベースラインから5.6%減少したのに対して、介入群では27.0%減少した。さらに、介入は、その他の肥満と関連するアウトカム、食事・座りがち・身体活動等の行動、肥満に関する知識を改善したが、中高強度身体活動、体力、血圧は変化しなかった。なお、介入中に有害事象は観察されなかった。

7)結論

多面的介入は、中国の社会経済的に異なる地域にわたる小学生の平均BMIおよび肥満の有病率を効果的に低下させ、全国に拡大できる可能性がある。

2.Discussion Points

  • 中国は国内での経済格差が大きく、地域により肥満の有病率なども異なると考えられる。中国を低中所得国と一括りにせず、その差を活用し、社会経済的な影響を検討できることを強みとすれば、より研究の意義が深まるのではないか。
  • 介入方法について、システマティックレビューや関係者との協議などを通して検討を重ねたことが推察されるが、方法として明確に論述してもよいのではないか。
  • 主要アウトカムであるBMIには有意差を認めたが、その変化量(効果)は小さいため、慎重に検討する必要があるだろう。
  • 各群の平均BMIの変化には、BMIの上昇により痩せ状態から適正体重へと移行した者が含まれる可能性がある。ベースラインの体型による調整はされているが、平均BMIの低下だけに着目するのではなく、痩せが改善されるという視点も入れた分析があると良いのではないか。

令和6年2月21日実施

日付:February 21 , 2024 担当者:Fujita M
主題:Achilles tendon thickness is associated with coronary lesion severity in acute coronary syndrome patients without familial hypercholesterolemia
(家族性高コレステロール血症を伴わない急性冠症候群患者において、アキレス腱の厚さは冠動脈病変の重症度と関連するか)
著者:Ryosuke Fujiwara,Ryosuke Yahiro(MD)et al.
出典:Journal of Cardiology 79 (2022) 311-317

1.Abstract

1)背景・目的

アキレス腱の肥厚(X線検査で9mm以上)は、家族性高コレステロール血症(FH)の診断基準の1つである。FHは、急性冠症候群(ACS)を含む早期冠動脈疾患(CAD)と関連しているため、アキレス腱肥厚(ATT)の測定は、FHの早期診断に重要である。しかし、CADを有する非FH患者における、軽度アキレス腱肥厚の臨床的意義は不明である。本研究では、臨床的にFHと診断されていない早期発症型ACSにおける、ATTと冠状動脈病変の重症度との関連を検討した。

2)デザイン

横断研究における後ろ向き調査

3)セッティング

大阪府にある東大阪市石切生喜病院循環器内科

4)対象者

60歳未満のACSの病歴がある外来患者において、最大ATTが9mm未満で臨床的に非FHの76人(男性71人、女性5人、ACS発症時の平均年齢50.5歳)

5)データ収集・解析方法

冠動脈病変の重症度は、ACS発症時の冠動脈造影から得られたSYNTAXスコアによって評価された。
ATTとSYNTAXスコアとの独立した関連は、重回帰分析を実施して評価された。

6)結果

ATT値は、ST上昇型心筋梗塞(STEMI、n=47)、非STEMI(n=12)、および不安定狭心症(n=17)の患者間で有意差を認めなかった。一方、平均ATTおよび最大ATTは、単一血管病変(n = 51)の患者よりも多血管病変の患者(n = 25)で有意に大きかった。さらに、SYNTAXスコアは、平均ATT(r=0.368、p=0.0011)および最大ATT(r=0.388、p=0.0005)と正の相関があった。臨床パラメータとの関係に関しては、最大ATTは肥満度指数およびC反応性タンパク質と正の相関を示した。重回帰分析は、平均ATTと最大ATTが、さまざまな交絡因子とは無関係に、SYNTAXスコアと有意に関連していることを明らかにした。

7)結論

早期発症のACSを有する臨床的非FH患者において、ATTが9mm未満であっても冠状動脈病変の重症度と関連することが実証された。FHの診断とは別に、ATTはCADの進行予測因子である可能性がある。

2.Discussion Points

Introduction
  • 本研究は、CADを有する患者における、アキレス腱肥厚と冠状動脈病変の重症度との関連を検討している。このことはすでに冠動脈疾患に罹患している者の重症度をアキレス腱で評価しようとしていると解釈でき、その臨床的な意義が見えにくい。CADの有無にかかわらず、アキレス腱肥厚が冠動脈病変のリスクを示すことができたなら、簡便な身体所見でそのリスクを評価できるという意義があったのではないか。
Method
  • 本研究でもちいた重回帰分析の2つのモデルについて、そのモデルが示す臨床的な意味を示す概念枠組みがあれば、著者の意図が伝わりやすいだろう。
Result
  • SYNTAXスコアと平均および最大ATTの相関について、P値は有意な関連を示しているが、効果量としては弱い相関を示しているため、結果の解釈には慎重な姿勢が必要だろう。
Discussion
  • 主要なアウトカムである、アキレス腱肥厚とCADの重症度との関連について、アキレス腱肥厚によって冠動脈疾患の重症度を示すメカニズムについて説明がほしい。
  • 本研究の対象者の選択基準は、2017年度のFHの診断基準に依拠している。すでに2022年度に新たなFHの診断基準が提示され、判定基準が異なっているため、感度分析を行い、結果の信頼性・妥当性を担保する必要があったのではないか。

令和6年1月17日実施

日付:January17, 2024 担当者:Miyauchi S
主題:Assessment of knowledge, attitudes and practice towards Vitamin D among university students in Pakistan
(パキスタンの大学生におけるビタミンDに関する知識、態度、実践の評価)
著者:Amina Tariq, Shanchita R. Khan and Amna Basharat
出典:Tariq et al. BMC Public Health (2020) 20:355

1.Abstract

1)目的

 パキスタンは、世界中で実施された研究でビタミンD欠乏症の発生率が最も高い国の1つである。しかし、パキスタンの健康な若者の間では、ビタミンD関連の知識、態度、実践に関する調査は非常に限られている。本研究の目的は、パキスタンの大学生の間でビタミンD関連の知識、態度、実践(KAP)を評価することである。加えて、KAPと性別およびビタミンDの検査状況との関連の可能性についても検討する。

2)デザイン

横断研究

3)セッティング

パキスタンのイスラマバード

4)対象者

パキスタンに居住しており、2つの工学系大学の学部または大学院に在籍する男女の成人(16歳以上)

5)データ収集・解析方法

 参加者は、ビタミンDレベル、検査、およびサプリメントの実践に関する懸念について質問された。食物源、健康上の利点、および体内のビタミンD産生に影響を与える要因に関する質問を使用して知識を調べた。参加を呼びかけた900人の対象者のうち、505人(56%)がアンケートに回答し、分析に含まれた。

6)結果

 ビタミンDの正しい食物源を特定できた参加者はわずか9%で、33%がビタミンDの骨の健康上の利点(骨の健康とカルシウム吸収)を認識しており、36%がビタミンD産生に影響を与える要因として日光への曝露を特定した。ビタミンDの食物源と健康上の利点に関する知識は、性別や自分のビタミンDレベルを懸念していることとは関連していなかった。検査を受けてサプリメントを摂取した人は、骨に関連する健康上の利点とビタミンD産生に影響を与える要因を特定する可能性が高かった。男子学生の40%、女子学生の52%が、ビタミンD濃度が低すぎることを懸念していた。しかし、72%の参加者がビタミンD濃度の検査を受けたことがないと報告した。サプリメントの使用は女子学生で有意に高かった(F = 52% vs M = 37%;P = 0.003)。ビタミンDの検査を受けた人は、サプリメントを摂取する可能性が高かった。

7)結論

 高リスク集団として特定されているにもかかわらず、大学生のビタミンDに関する知識は限られていた。日光への曝露や適切な食事によるビタミンD摂取の必要性など、健康に対するビタミンDの重要性についての認識を高めるための介入が必要である。私たちの研究は、この脆弱な集団に対する医療政策の提言を行うために、非常に必要とされるベースラインエビデンスを提供している。

2.Discussion Points

  1. 南アジアの発展途上国であるパキスタンは、年間を通じてビタミンDの皮膚生産が可能であるにもかかわらずビタミンD欠乏症の有病率が高いこと、また公衆衛生戦略としてビタミンDに対する認識を高めることが求められているという社会背景は興味深い。
  2. KAPの概念に関する記載があれば、青年期のビタミンD摂取にどのようにKAPが関連してくるのかが伝わりやすくなるのではないか。
  3. 各質問項目をどのような因子として捉えたのか、また因子間にどのような関連があるのか概念枠組みを表した上で、何のために何との関連をみたのかを記載すると著者らの意図が伝わりやすい。
  4. 対象者におけるビタミンDの実態を正確に把握するには、検査受検の有無を問うのではなく、検査結果により評価し、ビタミンD不足の人を数値で明確化する方が本研究の目的と合致するのではないか。
  5. 図表を示すときは、それだけで全てが伝わるよう、タイトル、サンプル数をN、各項目の対象人数をnとし、P値の算出方法を記載する必要がある。
  6. リサーチクエスチョンが明確化しておらず、本研究の有益性があいまいになっている。研究結果をどのように活用すべきか、明記するとよいだろう。
  7. 国内の2つの大学生を対象としたことで選択バイアスの可能性に触れているが、その理由として大学への進学率やその大学の特徴などをもう少し掘り下げて記載すると読者も判断できたのではないか。

令和5年12月22日実施

日付:December 13, 2023 担当者:Haga, C.
主題:Impact of social prescribing to address loneliness: A mixed methods evaluation of a national social prescribing programme
(孤独への社会的処方の影響:国家的社会的処方プログラムの混合法による評価)
著者:Alexis Foster, Jill Thompson, Eleanor Holding, et al.
出典:Health Social Care Community. 2021;29:1439–1449

1.Abstract

1)目的

 孤独は身体的にも、精神的にも有害な影響を与えるため、世界規模の公衆衛生課題として考慮されているが、その解決方法はほとんど知られていない。1つの方法として考えられているのが社会的処方と呼ばれるもので、それはリンクワーカーが利用者に適切なサポート、例えば地区活動や社会的な活動をするグループなどを紹介する方法である。
 いくつかの質的先行研究が社会的処方により孤独を軽減する可能性を示してきた。これを受けて、英国赤十字(第3セクター)は孤独を経験している、あるいはそのリスクをもつ人々に対し、国家的な社会的処方を開発し、提供した。その内容は、リンクワーカーによる対象者への12週間サポートであった。
 本研究の目的は、このサポートが対象者の孤独に与える影響を理解することである。

2)デザイン

混合分析モデル

3)セッティング

英国

4)対象者

孤独を経験している、あるいはそのリスクをもつ人々。データ収集期間に集まった10,643人

5)データ収集・解析方法

本研究は3つの分析から構成される。
a) 量的分析:データ収集は2017年5月から2019年12月まで、定期的にUCLA調査が実施された。前後比較により孤独感の変化について2,250人を対象に分析した。
b) 対象者、リンクワーカー、ボランティア、への半構成的面接
c) 社会的投資収益率(SROI)の分析(※SROIは1990年代に米国REDF(ロバーツ財団)による社会活動の定量的評価指標として開発されたもの、主にNPO活動への業績評価に用いられる)

6)結果

 対象者の大多数(72.6%)はサポートにより孤独感を減少していた。実際、UCLAスコアの平均変化は-1.84で、最大変化は6ポイントであった(減少すると改善)。付加的な効果はウェルビーイングの改善であり、自信や目的のある人生を歩む実感などが増加していた。
 また、ベースとなる事例分析ではサポートサービス1ポンドの投資で3.42ポンドの社会的リターンがあると見積もることができた。熟達したリンクワーカーと個別のニーズに合わせたサポートが成功の鍵となっていたようであった。ボランティアの活用、サインポスト(地域活動の名称?)に関連した対象者のニーズ、そして孤独を改善した後の維持が課題であった。

7)結論

本研究結果は社会的サービスが孤独の改善に役立つことを示した。

2.Discussion Points

  1. 3つの研究方法を用いた研究であることはわかるが、各調査が独立して実施されているように読める書き方のため、調査時期のずれや対象者の重なりがよく理解できない。これでは、英国に住む成人期以降の人であれば、誰でも調査対象者であり、同じ集団を「混合分析した」といえるのか判断が困難
  2. 特に対象者の選定基準のところで作成した「sampling frame」の説明が曖昧。具体的にどのように判断したのか(例えば、英国のどのような地区から同じくらい集まるように階層化したサンプリングだったのか、など)記載した方がよいのではないか。
  3. データ収集方法の記載が非常に細かいところと、かなりざっくりしているところがあり、その理由がよく分からない。特に、混合分析法を用いたことの妥当性を判断するためには、今回もちいた3つの方法から得られた結果をどのように統合するのか、詳述する必要があったのではないか。
  4. 欠損値として80%の対象者を扱うのであれば、欠損値となった人たちの背景因子からどうしてそうなったのかを検討した方が良いのではないか。感度分析は、この欠損値の人たちの属性をもってなされるとよかったのではないか?
  5. 社会的処方として何をしたのかは重要情報なので、それを詳述しておく必要があったのではないか。介入研究なのではないか、という気になるが、サービスの中で得られたデータをもとに分析しているため、観察研究なのだろう。
  6. 主要なアウトカムであるUCLAやWell-beingなどの分析対象者が全体のおよそ2割であり、しかも全体の傾向と異なる集団、つまりバイアスを受けた集団だと想定されるため、結果を一般化することに疑問がある。
  7. 経済的な指標による効果評価は、インパクトの大きなものであり、政策提言の根拠ともなりうる。結果でどのように見積もったのかを説明しているが、説明なのか結果なのか、その内容の理解が困難。専門外の読者にも理解できるよう、その詳細な分析方法をメソッドに記載し、結果では、どのような意味があるのかを理解しやすい記述をするとよいのではないか。

令和5年10月18日実施

日付:October 18 , 2023 担当者:Fujita
主題:Relationship between lifestyle habits and cardiovascular risk factors in familial hypercholesterolemia
(家族性高コレステロール血症における生活習慣と心血管危険因子の関係) 著者:Laurie D, Gabrielle R, Patrick C, Anne G, et al.
出典:An international journal on Diabetes, Atherosclerosis and Human Nutrition

1.Abstract

1)目的

 家族性高コレステロール血症(FH)による心血管疾患の発生を健康的なライフスタイルが予防する可能性についてはほとんど知られていない。本研究の目的は、成人FH患者の生活習慣と心血管危険因子の関係を評価することである。

2)デザイン

 CARTaGENE(CaG)コホートにおける横断的解析
※CaGは、集団ベースのバイオバンクであり、ケベック州(カナダ)で進行中の最大の前向きコホート研究である

3)セッティング

カナダ ケベック州

4)対象者

 2009~2010年に募集されたCAGに参加した40~69歳のケベック州住民43,038人の中から、FH診断ツールとして承認された簡易式カナダ基準を用いてFHもしくはFH疑いとされた合計122人の人々 (推定FH,n=118、確定FH,n=4)

5)データ収集・解析方法

 個人歴と家族歴(脂質異常症、高血圧、心血管疾患、癌など)、生活習慣(喫煙、アルコール、身体活動、睡眠)、薬物(種類と量)の項目を含む、研究者によって管理された健康質問票を対象者に行い、身体的測定値(体重、身長、ウエスト周囲径、血圧)同様に生物学的サンプル(血漿、DNA) がインタビュー中に収集された。また、食物摂取頻度調査(FFQ)の記入も行われた。
 健康的生活習慣スコア(HLS)とCVD危険因子との関連を評価するために線形回帰モデルを使用した(GLM法)。

6)結果

 性別、年齢、肥満度、脂質低下薬の使用で調整後、HLSとLDLコレステロール濃度との間に関連は認められなかった(β=0.04,95%信頼区間=-0.08、0.15mmol/L,P=0.54)。しかし、HLSはHbA1cと良好な関連を示し(β=-0.07, 95% 信頼区間 =- 0.13, -0.01%、P = 0.02)、統計的傾向はHDLコレステロール(β=0.06, 95% 信頼区間=-0.02, 0.14 mmol/L; P = 0.06)とウエスト周囲(β=-2.22, 95% 信頼区間 =-4.62, 0.17 cm; P = 0.07)との良好な関連を示した。

7)結論

 本研究結果は健康的なライフスタイルがFHを有する成人におけるCVDリスク因子に良好な関連を示すことを示唆する。

2.Discussion Points

  1. FHは、冠動脈性疾患(以下CVD)による死亡を予防することが重要な遺伝的疾患である。そのための治療として、現在薬物治療が主であり生活習慣による治療は2次的である。しかし、本研究はFH患者のCVD発症リスクを生活習慣で評価しようとしており、その意義は薬物治療を回避したい小児期からのCVD予防を実現する可能性にあるのではないか。
  2. 生活習慣の評価指標は、基準を明確にして多角的にスコア化されており、妥当性が高い。信頼できるツール、基準を複数用いて評価していることは本研究における強みだろう。
  3. 対象の選択基準にある、FFQを完了し、60%以上の質問に回答したということについて、6割以上回答した対象者が全体の何%かは記載されていなかったため、選択バイアスの可能性を検討できない。また、FFQを実施したタイミングが不明であった。回答率、追跡率などを記載する必要があったのではないか。
  4. 研究対象者はFHもしくはFH疑い とされた成人とのに記載されており、ヘテロ接合体性かホモ接合体性かというFHの遺伝子型は区別されていなかった。この違いは、生活習慣の影響の差となる可能性がある。交絡因子として考慮すべき変数なのではないか。
  5. 生活習慣を総合的に評価することは、現状を反映より良く反映できると思われるが、特にLDLコレステロールと強い関連があった健康的な生活習慣について、詳細に検討することで臨床での活用に役立つのではないか。
  6. 本研究は、横断研究であったため健康的な生活習慣がFHをもつ成人のCVD発症を予防するかは明らかにできない。今後、FHをもつ成人において生活習慣の違いがある2つのグループをコホートで追跡し、CVD発症率の差を明らかにするような研究が必要だろう。

令和5年9月20日実施

日付:2023年9月20日 担当者:H Toki
主題:A community-based motivational personalised lifestyle intervention to reduce BMI in obese adolescents: results from the Healthy Eating and Lifestyle Programme (HELP) randomised controlled trial
(肥満の若者におけるBMIを低下させるためのコミュニティベースの動機付けを行う個別の生活習慣介入:Healthy Eating and Lifestyle Programme(HELP)ランダム化比較試験の結果)
著者:Christie D, Hudson LD, Kinra S, et al.
出典:Arch Dis Child 2017;102:695–701.

1.Abstract

1)目的

イギリスでは、5〜15歳の子どもと若者の約7%が、併存疾患を伴う可能性が高いレベルの肥満である。多要素のライフスタイル・プログラムは、イギリスの若者への適用可能性や一般化可能性が限られている。The Healthy Eating and Lifestyle Programme(HELP)は、特に青年期に焦点を当てた介入で、体重管理を必要とする12〜18歳の肥満者のために作られた。参加者は、12セッションのHELP介入または標準治療に無作為に割り付けられた。主要アウトカムは、ベースラインのBMI、年齢、性別で調整された26週目のグループ間のBMIの差であった。

2)デザイン

研究ランダム化比較試験

3)セッティング

イギリスロンドン市

4)対象者

ロンドン市内のイギリスの1990年の成長曲線による年齢と性別のBMIが95パーセンタイルより大きくBMI<45kg/m2の12〜19歳174人の対象者を無作為に割り付け、145人(83%)から26週目の主要アウトカムデータを取得した。

5)データ収集・解析方法

主要アウトカムのBMIは、ベースライン時、治療の半ば(13週目)、介入終了時(26週目)、介入終了後6か月(52週目)に、National Institute for Health Research Great Ormond Street Hospital Clinical Research Facility(CRF)または自宅で測定し評価した。年齢、性別、ベースラインのBMIで調整した線形回帰モデルを用い、26週目のBMIを群間で比較した。

6)結果

26週目において、BMIへの介入の有意な効果はみられなかった(BMIの平均変化は介入群では0.18kg/m2、対照群では0.25kg/m2、調整されたグループ間の差:–0.11kg/m2(95%信頼区間 -0.62〜0.40)、p=0.7)。26週目と52週目において、副次アウトカムにグループ間の有意差はみられなかった。

7)結論

イギリスだけでなく国際的にも公衆衛生的負担となっている肥満対策に取り組むために、より高水準で構造化された介入の必要性を強調した結果となった。HELP介入は、地域における肥満の若者のBMIを減らすために、1回の教育セッションより効果があるとはいえなかった。多様な理由で恵まれない環境にある若者は、肥満になりやすく、これらの若者に体重管理プログラムをどのようにして効果的に実現するか理解するためにさらなる研究が必要である。この研究は、小児肥満に取り組むための公衆衛生介入に情報提供するという点で重要な意味合いを持つ。

2.Discussion Points

  1. イギリスでは肥満の若者が多いという社会的背景や、現在推奨されている介入方法を青年期に適用することへの限界を述べており、青年期の肥満に対してより効果的な方法を検討する意義が伝わった。
  2. ランダム化してはいるが、サンプルサイズも小さいために、取り除けない可能性のある交絡因子の調整方法が詳細に記載されていた。これらを理解するためには統計学的な知識のブラッシュアップが必要である。
  3. 選別基準の設定の根拠の記載がない。根拠について説明した方が読み手に伝わりやすいのではないか。
  4. 除外した数が評価の段階ごとに分けて詳しく記載されていたが、なぜ2段階に分けて選択基準に合致しない対象者を除外したのか読み取ることができなかった。最初のベースライン評価においてさらに36人除外した理由の説明があるとよいのではないか。
  5. 先行研究を用いて、今回の結果との共通点や相違点、その要因について検討しており、肥満への介入には、心理的介入のみの単一の方法では不十分であること、介入の効果を長期に持続することの困難さ、環境要因の影響等を読み取ることができる。今後の研究の方向性として、対象者の背景を考慮した介入方法を開発していく必要があることを示唆している。

令和5年5月24日実施

日付:May 24, 2023 担当者:Haga C
主題:Liquefied Petroleum Gas or Biomass for Cooking and Effects on Birth Weight
   LP(液化石油)ガスかバイオマス燃料を調理に使用することが出生時体重に与える影響
著者:Clasen, H., Chang M., Thompson, M., et al
出典:The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE 387 (19), 1735-1746, 2022.

1.Abstract

1)背景・目的

固形バイオマス燃料の燃焼により引き起こされる家庭内空気汚染に妊婦が暴露されることが低体重児の出産のような有害な健康関連事象と関連するとされている。しかし、より多く使用されているLPGよりも、その影響が顕著かどうかは明らかにされていない。

2)デザイン

無作為化比較試験(RCT)

3)セッティング

グアテマラ、インド、ペルー、ルワンダ

4)対象者

以下の条件を満たした妊婦
①年齢18から35歳
②妊娠週数9から20週であることを超音波検査にて確定した者

5)データ収集・解析方法

 介入群をLPG燃料もしくは料理用ストーブを使用している群、対照群をバイオマス燃料ストーブを利用している群として、1:1になるように振り分けた。
 当該介入研究は主要アウトカムを4つ設定しているが、本研究はそのうちの出生体重であり、他のアウトカムについてはこれからである。出生体重は出生後24時間以内に計測され、微小粒子状物質(PM2.5)、ブラックカーボン(煤)、一酸化炭素について、ベースライン時と妊娠中に2回測定された。

6)結果

 合計3200人の登録者で、1593人が介入群に、1607人が対照群に無作為に割り付けられた。介入は完遂され、伝統的なバイオマス燃料ストーブの利用量の中央値は月当たり1日未満であった。無作為化の後、PM2.5への個人の曝露は、介入群で23.9μg/m3であり、対照群で70.7μg/m3であった。出産された児(Live birth)は介入群で94.9%、対照群で92.7%であり、平均出生体重児は介入群で2,921±474.3g、対照群で2,898±467.9gであり、これらの調整後の平均値差は19.6gであった。

7)結論

LPG燃料もしくは料理用ストーブを使用した女性から生まれた子どもの出生体重は、バイオマス燃料ストーブを利用した女性から生まれた子どものそれに比べて、有意な差は認められなかった。

2.Discussion Points

  1. 本研究の必要性について
    システマティックレビューを2本用いて家庭内の空気汚染の健康への影響として出生体重の低下の可能性が指摘されている現状を明らかにした上で、その検証が課題であることを示しており、簡潔にまとめられた文章であっても、説得力をもって本研究の必要性が説かれている。
  2. 多機関共同研究のため、それぞれの施設にて倫理委員会を通しており、その記述にボリュームがある。避けられないこととはいえ、HAPIN研究の概要については先行研究引用で大幅に省略されており、もう少し、説明が欲しい。例えば、なぜこの4つの国が選ばれたのか、もともとどれくらいの比率でバイオマス燃料を使用されている地域なのか、出生率など。
  3. 中・低所得国を対象としたとあるが、それでも国によって特徴が異なるのではないか。例えばルワンダは紛争により治安が悪化している国だと想像される。ランダム化したとはいえ、背景因子が揃わない可能性を感じるため、説明がほしい。
  4. 感度分析については,結果でのみ述べているが,実施した内容からみると,当初から予測できていた計算ではないかと思われる。方法で述べておく方がよいのではないか。
  5. ベースライン時の参加者特性に介入群・対照群に差がなく,類似した集団と記述しているが,表1には,その差が検定された様子はなく,5%程度異なる項目がいくつか見受けられる。差の検定結果を示した方がよいのではないだろうか。
  6. アウトカムが表2にシンプルに示されていてわかりやすいが,線形回帰分析をした結果としてどのように読み取ればよいのか,最終結果のみを見ているために気になる。必要最小限に示すとこうなるのだろうか。
  7. 今回は,差がなかったとのことであったが,低出生体重児の出現割合が大きく異なる国であることが分かっていたのであれば,事前に対策を講じる必要があるように思えるが,しなかったのはなぜなのか。考察する必要はなかっただろうか。
  8. 大きなプロジェクトであったことはわかるが,本結果に示していない内容を他の論文を引用して説明していることに疑問を感じた。強みを述べるために致し方ないのかもしれないが,1つの論文では,本研究のみに焦点を当てた書き方の方がよいのではないか。

令和4年11月16日実施

日付:November 16, 2022 担当者:Kai D
主題:Inadequate gestational weight gain contributes to increasing rates of low birth weight in Taiwan: 2011-2016 nationwide surveys
(台湾において妊娠中の不適切な体重増加は低出生体重児の増加を助長する:2011年から2016年の全国調査より)
著者:Alexander Waits, Chao-Yu Guo, Li-Yin Chien
出典:Taiwanese Journal of Obstetrics & Gynecology

1.Abstract

1)目的

低出生体重は不健康な状態と関連している.台湾における低出生体重児の発生は1997年の5.0%から,2016年には8.4%まで上昇した.本研究の目的は2011年から2016年における低出生体重児の発生率の変化に寄与する妊娠前のBMI,および妊娠中の体重増加量の影響を明らかにすることを目的とする.

2)デザイン

2011年から2016年間に行われた6回の横断調査をした利用コホート研究

3)セッティング

台湾における全国調査

4)対象者

2011年から2016年間において6回の横断調査で得られた66,135人の産後女性のデータ

5)データ収集・解析方法

本データはランダムに選択された母親に対する電話インタビューにより収集された.低出生体重児割合の経時的変化に寄与する母親の特性を評価するためにロジスティック回帰分析を行い調整した.

6)結果

2011年から2016年において低出生体重児は5.3%から7.0%に増加した(粗オッズ比1.04/年).その間不適切な体重増加量の妊婦は27.9%から41.5%に増加した.母親のBMIについて過体重(9.7%から11.1%)や肥満(4.8から7.4%)が増加するに伴って,痩せの有病率も16.0%から17.8%まで上昇した.痩せの集団において低出生体重児は6.3%から9.5%まで上昇した(粗オッズ比1.09/年).妊娠中の体重増加量での調整は全サンプルにおいても(調整オッズ比1.03),また痩せの集団においても(調整オッズ比1.08)オッズ比を減じた.

7)結論

不適切な体重増加量である女性の割合が増加することは,特に痩せの集団において,2011年から2016年間の低出生体重児の増加に寄与しているだろう.妊娠中の体重増加における親へのアドバイスは妊娠前の妊婦のBMIによって個別化される必要がある.

2.Discussion points

【緒言】
  • 妊娠中の体重増加量と低出生体重児の関連について,その検討の必要性が指摘されているが未だ明らかになっていないという点の論述がもっと述べられると本研究の意義がより明確になったのではないか.また妊娠中の体重増加量について,過剰であることに敏感な医療従事者が未だ多いという指摘もある中で,適切な体重増加として過小であることに着目する必要性を示すことができる点に言及されると,よりインパクトを与えられたのではないか.
【方法】
  • 妊娠中の体重増加量を対象となる母親が産後6~14か月の時期に聞き取っていることの適切性が疑問である.また,産後6~14か月では幅が大きく,生後半年の母親の体格と1歳半を過ぎた子どもを持つ母親の体格を同等として扱ったことの妥当性を示すべきだろう.
【結果】
  • 本研究で示された図表はいずれも明快に記載されていた.しかし,95%信頼区間を算出しながらも,p値を算出し有意水準を3つ(0.1%,1%,5%)設定する必要があったのだろうか.
【考察】
  • 妊娠中の体重増加量が不適切であることが低出生体重児のリスクとなる機序について示す必要があったのではないだろうか.これまでの先行研究との違いが明確になるよう,本研究のメインアウトカムである出生体重に対する,母親の非妊娠時の体格の影響や,たとえ肥満の母親であっても妊娠中に体重を増加させると低出生体重児のリスクを低下させるという事実に焦点を当ててもよかったのではないか.
  • これまでの先行研究を概観するための引用文献が10年以上前のものであったことは,本研究の新規性について疑義が生じるもとになる.できるだけ新しい論文を引用するべきだろう.

令和4年9月21日実施

日付:September 21,2022 担当:C Haga
主題:Body mass index and all cause mortality in HUNT and UK Biobank studies: linear and non-linear mendelian randomization analyses
(HUNTおよびUKのバイオバンクスタディにおける体格と全死亡:線形および非線形メンデルのランダム化解析)
著者:Yi-Qian Sun,1 Stephen Burgess,2,3 James R Staley, et al.
出典:BMJ

1.Abstract

1)目的

BMIと死亡の間の因果関係を視覚的に明らかにすること

2)研究デザイン

線形および非線形メンデルランダム化研究

3)セッティング

ノルウェーのHUNT研究と英国のUKバイオバンク

4)参加者

56,150人のHUNT研究参加者と366,385人のUKバイオバンク登録者で欧州人の系統にある中年から初老期にある人々

5)主要アウトカム

全ての原因による死亡と個々の原因(心血管疾患,がん,その他)の死亡

6)結果

HUNT研究の12,015人,UKバイオバンクの10,344人がそれぞれ中央値で18.5年と7年の追跡期間中に死亡した。線形メンデルランダム解析の結果,遺伝学的に予測されたBMIと全原因による死亡に正の関連があることを示した。そのBMIが1増えると過体重であった場合に5%リスクを上昇させ,肥満の場合には9%上昇させた。一方,やせの場合には34%リスクを減少させ,標準の場合には14%減少させた。非線形分析では,Jの字型にリスクを変化させ,BMIが22から25であることがもっともリスクが低かった。しかし喫煙状況によるサブグループ解析の結果は,非喫煙者ではBMIと死亡は正の相関関係にあり,喫煙歴のある者においてはJの字型にリスクが変化した。

7)結論

BMIと全死亡原因の間に認められてきたJの字の関係は、喫煙を交絡として検討したサブグループ解析によりJの字というよりも、少なくとも2つの別々の曲線から構成される可能性を示した。痩せであることが死亡リスクを上昇させることは、喫煙歴のある者においてのみ関連があるかもしれない。

2.Discussion points

  1. これまで、多くの研究が明らかにしてきたBMIと死亡率の関係について、新たな分析方法で検証して喫煙という因子の影響が残っていることをエビデンスとして提示した研究で、常識となりつつあった関係をさらに深堀したという意味で興味深い。
  2. 遺伝情報を有する大規模なコホートを扱っているが、参加が任意であれば、どうしても参加者の年齢や人種に偏りが出てしまい、情報バイアスは避けられない。それが、操作変数を扱って分析しても影響を受けるのであれば、メンデルランダム化研究を実施する意義が弱まるのではないか。
  3. サブグループ解析や感度分析など、1つの結果を出して終わりではなく、その結果に影響を与えそうな分析を丁寧にすることが重要であること教えてくれる論文。これを別の論文とすることはサラミ論文となる可能性があり、同じ目的の研究は1つにまとめ、付録として結果を図表で示すことが重要。

令和4年7月20日実施

日付:July 20,2022 担当:Yokomizo.A
主題:Past and Recent abuse is associated with early cessation of breast feeding: results from a large
prospective cohort in Norway
(幼少期および最近1年以内の虐待と早期母乳中止との関連:ノルウェーにおける大規模コホート調査から)
著者:Marie Flem Sorbo, Mirjam Lukasse, Anne-Lise Brantseter, et al.
出典:BMJ Open

1.Abstract

1)目的

 母乳育児はあらゆる面で乳児にも母親にも健康的な利点があるが、母親の虐待経験がそれに与える影響についてはほとんど明らかになっていない。そこで、本研究の目的は、幼少期および最近1年以内の心理的・性的・身体的虐待が早期の母乳中止と関連するか、さらに虐待の加害者が知り合いか、そうでないかで早期の母乳中止を評価することとした。

2)デザイン

前向きコホート研究

3)セッティング

ノルウェーで行われたNorwegian Mother and Child Cohort Study

4)対象者

 1999年~2006年までの間に登録された53,934人の母親
データ収集・解析方法:妊娠18週、30週、産後6ヶ月に母乳育児に関するアンケートを実施。妊娠30週目に行った虐待に関する質問のうち最低1つに回答したものを解析対象とし、生後4ヶ月未満の母乳中止を従属変数、虐待の有無を独立変数とし、二項ロジスティック回帰を行った。

5)結果

 ほぼすべての母親が母乳育児を開始したが、生後4か月前に12.1%が母乳育児を中止し、38.9%が混合栄養だった。 全体として、19%の女性が成人期の虐待を、18%が児童虐待を受けていた。生後4ヵ月未満で母乳保育を中止するリスクが最も高かったのは、成人期に虐待(心理的、性的、身体的)を受けた女性で、調整後のORは、虐待がなかった場合と比較して1.47倍となっていた。(95%CI 1.23~1.76)であった。過去1年以内の虐待と既知の加害者からの虐待は、それぞれ40%と30%のリスク上昇をもたらした。 幼少期に虐待を受けた女性の授乳中止のORは、児童虐待を受けなかった場合と比較して1.41倍(95%CI 1.32~1.50)であった。

6)結論

幼少期および最近1年以内の虐待は 母乳育児の早期中止と強く関連している。
虐待を受けた母親は、特別な支援と母乳育児支援の対象となる重要なグループである。

7)強み・弱み

 本研究の主な強みは、前向き研究であること、ノルウェーのすべての地域から、すべての年齢層および社会経済層を含む女性を大規模に抽出していること、虐待の種類、過去または最近の虐待かどうか、潜在的交絡因子などの虐待経験に関する詳細な情報を提供していることである。また、他の変数による交絡を慎重に検討したが、交絡の残存を除外できない。

2.Discussion points

  1. ノルウェー国内の妊娠・出産に関連する大規模データを用いているものの、分析に使用できたのが約4割と低いことは研究の限界である一方で、使用されなかったデータを削除したことの影響がなかったことが詳細に検討されている。
  2. 母乳栄養推奨に賛否の考えがある中で、本研究において母乳栄養を推奨する意義を背景の中でもっと丁寧に説明することで、研究の意義がさらに高まるのではないか。
  3. MobaとNMBRからの調査項目について、紙面の都合もあったと思うが、引用だけでなくもう少し丁寧な記載があれば分かりやすい。

令和4年6月15日実施

日付:June 15, 2022 担当者:Kai D
主題:The Effects of Gender and Family, Friend, and Media Influences on Eating Behaviors and
Body Image During Adolescence
(青年期における食行動やボディイメージに対するジェンダー,家族,友人,メディアの影響力の効果)
著者:Rheanna N. Ata, Alison Bryant Ludden, Megan M. Lally
出典:Journal of Youth and Adolescence

1.Abstract

1)目的

 これまでのボディイメージに関する研究をさらに発展させ,青年期にある男女のボディイメージや食に関する態度や行動に対して,ジェンダー,自己肯定感,社会的サポート,からかい,家族や友人,メディアの影響がどの程度関係しているのかを明らかにすること.

2)デザイン

横断研究

3)セッティング

 米国にある3つの学校

4)対象者

 13~19歳の8年生から12年生までの生徒.学校は1つが公立で,2つは教区学校.教区 学校のうち1つは共学で,もう1つは男子校か女子校.参加者は177人

5)データ収集・解析方法

 アンケート調査によりデータ収集した.
t検定により,各項目の性差を検討した.
線形回帰モデルにより,ボディイメージや食行動に影響を与える要因を明らかにした.

6)結果

 青年期にある子どもは現在の体格に満足しておらず,男子は上半身を大きくすることに関心があり,女子は全体的な体のサイズを小さくしたいと望んでいた.
自己肯定感や社会的サポートの低さ,体重に関連したからかい,また体重減少に対する過度な圧力は青年の否定的なボディイメージ,食行動に関連していた.
女子は男子よりも食行動に関するリスクが高く,このリスクは心理社会的要因と関連があった.一方男子は食行動に対する危険因子として,家族の支援の低さと,筋肉質に対する過度なプレッシャーだけが影響していた.

7)結論

家族や友人からの外見に関するプレッシャーを減らすことは,青年期にある子のボディイ メージを強化し,自己肯定感の低さがもたらす否定的な食行動や否定的な体格に関する認知を弱めるだろう.

2.Discussion points

【緒言】
  • 使用する交絡因子について,なぜそれに着目したのかや青年期の子どもに与える影響等についての記載が詳しく記載されている. 本研究に関連する研究は多くされており,これまでの先行研究から明らかとなった交絡因子を洗い出し,本研究のオリジナリティを明示する必要があったと推察できるが, 緒言は必要最小限の記載に留めた方がよいだろう.
【方法】
  • 対象者の選定方法に関する記載が不足している.母集団と標本の関係が不明であり,一般化できるかどうか判断が困難である.
  • 対象者の在籍する学校も異なり,また幅広い年齢の子を対象としていることに関して,サンプル数を確保したかったという思惑を感じるが,これは妥当であったのか.分析時の方法(回帰モデル)からサンプル数を見積もったと思われるが,有効回答率が低かったのだろうと推察できる.これに関しては,使用する尺度が多いことから,質問項目が多く,回答率が低迷したのではないか.交絡因子を調整するためには多くの質問項目が必要であったのかもしれないが,回答率が低いことで,回答者の偏り等,また別のバイアスが生じるリスクもあるため,サンプル数を確保することと,質問項目を多くすることのバランスをとることが重要だろう。
【結果】
  • 対象者の属性について結果を一般化できるよう記載すべき.方法にて若干の記載があるが,十分ではないように思われる.
  • 線形回帰モデルを使用したことは妥当であったのか.多くの尺度を使用しているが,これを間隔・比率尺度として使用することには違和感がある。線形回帰モデルを使用することで,その因子の影響の大きさを比較できるので,どの変数が一番影響していたかという視点ではわかりやすいが,心理的な尺度をどこまで信頼してよいのか,標準化して回帰モデルに組み込むことの妥当性に疑問が生じる。
【考察】
  • 多くの研究の限界を記載し自ら弱点を明らかにしているが.サンプル数が少ないこと,民族に偏りがあったことなど,その問題を検討するため,今回のサンプルサイズの根拠や,民族の割合等を示すとよかったのではないか.

令和4年4月20日実施

日付:April 20, 2022  担当者:Haga C. 
主題:The relationship of ethics education to moral sensitivity and moral reasoning skills of nursing
students
看護学生に対する倫理教育と道徳的感受性および道徳的推論スキルの関連
著者:Park M., Kjervik D., Crandell J., et al.
出典:Nursing Ethics, 19 (4), 568-580, 2012.

1.Abstract

1) 背景・目的

本研究は,2つの関係について記述することである。1つは大学の授業と学生の道徳的感受性や推論の関係について,もう1つは倫理教育に関するカリキュラムデザインと学生の道徳的感受性や推論の関係である。

2) デザイン

観察研究

3) セッティング

韓国の8つの看護系大学

4) 対象者

看護系大学の1年生(506人)と4年生(440人)

5) データ収集・解析方法

韓国版道徳感受性質問紙(KMSQ)と韓国版問題確定試験(KDIT)を使用して調査を行った。

6) 結果

患者中心のケアにおける道徳的感受性スコアと対立の得点は,新入生より4年生が高かった。また,倫理教育の時間が長くなればなるほど,4年生の原則的志向得点が高くなった。

7) 結論

韓国における看護学教育は学生の道徳的感受性の発達に影響を持つ可能性がある。看護学教育カリキュラムに倫理的内容を計画することは,学生の道徳的感受性と推論の改善に必要である。

2.Discussion points

  1. 看護学における倫理教育の概要と本研究の必要性について
    看護学教育において倫理教育をどのように実施すべきか,先行研究を分かりやすくレビューしていて,具体的な教育方法について考える示唆を得られた。ただし,倫理教育に必要な基礎知識がないと道徳的感受性と道徳的推論に着目する必然性や意義などが理解しにくいように思う。道徳と倫理の違いなど,本論文で扱われる主要概念の前提について,触れておくと丁寧なのではないか。
  2. 方法について
    ・有名なツールをもとに韓国版を作成したためか,質問項目についての説明が省略されている。
    ・学生を対象とする研究における倫理的配慮について,倫理審査委員会は通したとあるが詳細な記載がなく,
    80%を超える回答率は明らかに高いため,強制力が働かなかったか,配慮できていたのか,疑問が残る。
  3. 研究結果の一般化可能性について
    ・横断研究で,カリキュラムの影響を示そうとした興味深い研究。多様な大学・カリキュラムを含む,大きなサンプルであったために可能な方法だったと推察されるが,この8大学が韓国の看護学生の代表値を示すのに妥当であるという根拠を示す必要があるのではないか。

令和3年2月16日実施

日付:February16,2022 担当者:Akemi Y
主題:Parenting in poor health: Examining associations between parental health, prescription drug use, and child
maltreatment
(不健康状態での子育て:親の健康状態や処方薬使用は不適切な養育と関連するか)
著者:Jenifer Price Wolf ,at el
出典:Social Science & Medicine 277: 1-10,2021

1.Abstract

目的

親の「主観的健康度」および「処方薬の使用」と不適切な養育(子ども虐待)との関連を検討する

研究デザイン

横断研究

セッティング

カリフォルニア州にある30か所の中規模都市

対象者

Maladaptive Parenting ,Activity Spaces, Alcohol, and the Substance Use Environment Studyに参加する10歳以下の子を養育中の18歳以上保護者681人

データ収集・解析方法

 クレジット会社や雑誌の定期購読など子育て中の親が利用しそうな情報源やオンライン広告への掲載によりリクルートした。調査は2回行い、1回目は2014年~2015年にオンラインと電話、2回目は2016年~2017年にオンラインのみで実施した。
調査項目として、従属変数は、StrausのCTS-PC(親子間葛藤尺度)を用いて、身体的虐待、監督的ネグレクト、身体的ネグレクト、心理的攻撃、体罰の5項目を測定し数値化した。独立変数はSRH(主観的健康度)と過去1年間の処方薬内服の種類、回数とした。二項回帰モデルおよびロジスティック回帰モデルを用いてそれらの関連を検討した。共変量として年齢や人種などの属性のほか、ストレス状態やACEs経験、周囲のサポートを加えた。

結果

 主観的健康度の低い親は、身体的虐待、体罰、心理的虐待、監督的ネグレクトを行う頻度が高かった。処方薬を多く服用している親は、身体的ネグレクトを行う頻度が高かった。探索的な分析から、心臓病薬や頭痛薬の服用者は身体的ネグレクトの頻度が低く、呼吸器関連の薬や潰瘍薬の服用者は身体的虐待の頻度が低いことが示唆された。一方、関節炎やホルモン剤の服用者で身体的虐待の頻度が高く、抗うつ剤の服用者で身体的ネグレクトが3倍高かった。睡眠薬の服用者は服用しない人に比べて身体的ネグレクトのリスクが3倍高いが、身体的虐待はほぼ見られなかった。

結論

 体調不良や内服は珍しいことではなく、子育てに悪影響を及ぼすさまざまなリスク要因としてはほとんど認識されていない。本研究により、主観的健康度の低い親は否定的な子育てをするリスクが高く、それらにターゲットを絞った介入支援が必要であることが示唆された。

2.Discussion points

  1. 本研究の目的について
    緒言において、子ども虐待に関連する要因の先行研究を丁寧にレビューしているものの、本研究の必要性や新規性が今一つ分かりにくい。ドラッグやアルコール、貧困、低学歴といった社会的リスク要因を持つ親だけではなく、身体不調のある親も虐待リスクがあることを明らかにする点に本研究の意義があることは伝わるが、そうであれば虐待予防対策における支援対象の範囲があまりに広くなりすぎること(=誰でもそのリスクがある)を提案することで、全ての親を虐待予備軍として扱う風潮をつくりだす危険性も懸念される。
  2. サンプルバイアスについて
    対象者が10歳未満の子どもを持つ18歳以上の保護者であるが、分析対象者の平均年齢が40歳前後と高く、回答者の特徴として高学歴、高収入が多いことから、そもそも虐待のリスクが低い集団に偏っていた可能性も否めない。インターネット調査からの回収率が42%、53%と低いことも影響していると考えられるが、分析対象者を681人とした経緯をもう少し丁寧に説明してほしかった。

令和3年12月15日実施

日付:December 15, 2021 担当者:Kai D
主題:Parental perceptions of overweight and underweight in children and adolescents
(青年期・子どもの過体重や低体重に対する親の認識)
著者:Petur B Juliuson, Mathieu Rolants, Trond Markestad, et al.
出典:ACTA PEDIATRICA

1.Abstract

目的

BMIや腹囲、上腕三頭筋皮下脂肪といった客観的な指標に基づいて子どもの過体重と低体重に対する親の認識を比較すること。また、潜在的な親の認識に影響を与える決定要因の効果を明らかにすること。

デザイン

観察研究のなかの横断研究

セッティング

ノルウェーで行われたBergen Growth Study

対象者

2-19歳の子どもとその親3770組

データ収集・解析方法

2-19歳の3770人の子どもの体格に対する親の認識において、身体計測値、社会的人口統計的特性、また自記式の親の身長・体重を説明変数としたロジスティック回帰分析を行う。

結果

過体重や肥満の子どもの70%、また低体重の子どもの40.8%は彼らの親から標準的な体格であると認識されていた。2-5歳の過体重児において91.2%が標準であると捉えられていた。BMIで考えると、小学生や青年期にある子ども、また女児は過体重として認識される確率が高い一方で、青年期にある子どもや女児は低体重として捉えられることが少ない。過体重の親は子どものことを低体、と認識しやすいが、親の教育レベルや親が低体重であることの(認識に対する)影響はなかった。

結論

子どものことを過体重や低体重というように適切に認識する親の能力は一般的に乏しい。これらの知見は、子どもの体格に関する問題を認識する親の能力が不確実なものであるため、継続的なフォローにおいて測定された身体計測値に基づく客観的な指標の必要性を強く示している。

2.Discussion Point

  1. 本研究の意義について
    子どもの体格についてなぜ、研究のテーマにしたのか、先行研究がないことのみを理由にしているように読み取れるため、意義が伝わってこない。先行研究がないことは、新規性を意味することにはなるだろうが、必ずしも必要性を示すことにはならない。その研究をする必要性や臨床にどのように還元できるのかを記載した方がよいだろう。
  2. 変数の扱い方について
  3. 1)サンプルサイズが大きいことは様々な統計処理が可能になるという点で強みと言える。しかし本研究では対象者の年齢を基に大きく3つにカテゴリ分けしており、その根拠があいまいな印象を受ける。子どもの体格は思春期の前後で大きく変動するためそれを考慮した体格の分け方を工夫する必要があったのではないか。
    2)対象者を抽出したコホート研究についての詳細は先行研究を示すことで省略しているが、その先行研究が英語ではない著者の母国語で記載されている。引用することで詳述を避けることは問題ないが、誰でも読めるものではないなら、概要について方法のセクションで記載すべきだろう。また子どもの体格に対する親の認識は背景となる文化や人柄、気質等に強く影響を受けると考えられる。そのため、研究のセッティングとなる国名は本文中に記載すべきではないだろうか。
  4. 結果について
    1)まず初めに親の認識について記述統計的に記載したのち、その認識に影響を与える要因について解析を行うという流れはとてもズムーズであり、わかりやすい。しかし、タイトルからは予想できない結果の記載が多くあり、この研究で伝えたいことがぶれてしまっている。
    2)結果の記述のなかに図表の説明をもう少し加えることで、理解が深まるのではないか。

令和3年11月17日実施

日付:November 17, 2021  担当者:Haga C.
主題: Measuring Changes in Social Communication Behaviors: Preliminary Development of the Brief Observation of Social Communication Change (BOSCC)
(社会的コミュニケーション行為における変化の測定:社会的コミュニケーション変化の簡便な観察ツール(BOSCC)の予備的開発研究)
著者:Grzadzinski R., Carr T., Colombi C., et al.
出典:J Autism Dev Disord

1.Abstract

背景・目的

社会的コミュニケーション変化の簡便な観察ツール(BOSCC)の心理測定的性質と妥当性検証の試みとして,社会的コミュニケーション行動のための療育評価を測定することについて記述することを目的とした。

デザイン

観察研究(一見介入に見えるが,通常の療育の効果を新しい尺度で測定している)

セッティング

ミシガン大学の自閉症およびコミュニケーション障害センター(UMACC)と自閉症脳開発センター

対象者

最小限の言語スキルをもつ自閉スペクトラム症候群(ASD)のある56人の子ども

データ収集・解析方法

ASDのある56人の子どもを観察した177のビデオをもとにBOSCCのコーディング・スキームを適用した。BOSCCは高い検者間信頼性と再検査信頼性をもち,言語およびコミュニケーションスキルの測定に収束的妥当性を示すツールである。

結果

BOSCCのコアの総計はADOSやCSSが同じ期間に示せなかった変化を,有意な変化として示すことができた。

結論

本研究は社会的コミュニケーション行動を新しいアウトカムとし,臨床研究や縦断的研究に適用するための,測定開発に向けた最初のstepである。

2.Discussion Points

  1. 緒言について
    新たなツールの必要性については十分に記述されているとおもわれるが,なぜBOSCCがこれまでのツールのデメリットを克服できるものと期待できるのか説明が十分でない印象を受ける。問題点を詳細に記述するのであれば,それに対応してどのようにして開発されたのか説明するとよいのではないか。
  2. 外的妥当性(基準関連妥当性)を論じるのであれば,その基準として用いるツールが信頼できる必要があるだろう。緒言では,標準となるツールの不足に焦点が当たっている分,なぜそれらと比較したのかが疑問に思えてしまう。
  3. 方法と結果の論述について
    結果に論述すべき内容が方法に記載されていることが気になる。また,緒言にあった交絡因子の制御はどうしたのか,折角,細かく緒言で触れているのであれば,それらを交絡変数として明記して検討するとよかったのではないか。
  4. 療育の効果の検討について
    本論文では,療育の効果があったことが前提となっているように読み取れる。ADOS-2で効果が認められなかったことが,真の結果で,BOSCCでキャッチした変化が偽ということはないのか,どのように評価し,担保したのかが不明。ゴールドスタンダードがない中で,他の尺度と比較することが妥当かどうか,疑問が残る。

令和3年10月20日実施

日付:October 20, 2021 担当者:Haga C
主題: Late Adiposity Rebound and the Probability of Developing and Reversing Childhood Obesity
(後期アディポシティリバウンドが小児肥満の発生もしくは抑制に寄与する可能性)
著者:Rena C. Moon (公衆衛生修士,医師)
出典:The Journal of Pediatrics

1.Abstract

目的

7歳以降にアディポシティリバウンド(AR)が生じる「後期AR」が学童期の肥満発生もしくは抑制に寄与する可能性を評価すること。

デザイン

「小児期早期縦断研究(Early Childhood Longitudinal Studies)」を用いたコホート研究

セッティング

米国内の公私立幼稚園

対象者

米国を代表するようにサンプリングされた2つの幼稚園コホートECLS-KとECLS-K:2011に属していた各々21,260人と18,174人の小児。

データ収集・解析方法

1998年から1999年に実施された幼稚園児コホート(ECLS-K)と2010年から2011年に実施されたコホート(ECLS-K:2011)からデータを収集した。解析方法には重みづけされた拡張コックスハザードモデル(weighted extended Cox hazard models)を用い,肥満の発症もしくは抑制の可能性を査定した(なお,拡張モデルにおけるカットオフは入園後6か月および12ヵ月とした)。測定はECLS-Kで幼稚園入園から5年生までの間に6回,ECLS-K:2011で幼稚園入園から4年生の間で8回実施した。

結果

幼稚園入園後6か月以内に肥満のある子どものうち,後期ARにあった男児は,そうでなかった男児よりも73%あるいは76%肥満の発症を抑制していた(ハザード比0.27と0.24)。入園後6か月で分析した結果は,男女ともに同様の結果となった。入園後1年間で肥満をもっていなかった子どものうち,後期ARにあった男児はどうでなかった男児よりも52%あるいは54%肥満抑制の確率を高めた(ハザード比1.52と1.54)。入園後12ヵ月の時点で,後期ARの子どもはそうでない子どもの6から8倍肥満を抑制していた。

結論

幼稚園児においてARが後期にあると,有意に肥満の発生の確率を低下させ,肥満抑制の確率を上昇させた。

2.Discussion Points

  1. 研究方法について
    ARという体格の推移から判定する現象について,体格を測定する頻度を半年に1回とする適切性について検討が必要かもしれない。
  2. 人種による差異について
    サブグループが多様であるため,結果が多く,サプリメントとして付加されている図表の方が多くなっていて,誌面の容量が極端に少なく思える。有色人種の方が,白人よりも押しなべて肥満の発生割合が高い印象だが,本研究でのインパクトが少なく,だとしたら付加的な分析としても良かったのではないか。
  3. 結果の記述について
    ところどころで,2つ数字が並んでいるが,何を並べたのか説明が不足している。読者の思い込みで読むことになってしまうため,しつこいようでも,明記した方がよいだろう。
  4. なぜ,後期ARが肥満の抑制につながるのか,その機序についての考察
    考察の第一パラグラフで早期ARの決定因子を述べているが,それが後期ARにどのように影響しているのかについては殆ど触れられていない。早期ARの時期の多様性について,第一パラグラフでかなり冗長に述べている印象。その分,サマリーと機序についての予測があった方がよかったのではないか。
  5. ARの時期の決定について
    筆者も限界として述べているが,ARを検出するためには少なくとも3歳ころからのデータが必要だろう。半年に1回の計測は,強みではあるが,これが細かくなると微細な変動も受け,かえって判定しにくくなる可能性もあっただろう。ARの測定に適切な測定頻度とはどの程度か判断が難しい。

令和3年9月22日実施

日付:September 22, 2021 担当者:Kai D
主題: Integration of an interpretable machine learning algorithm to identity early life risk factors of childhood obesity among preterm infants: a prospective birth cohort
(早産児における小児肥満の早期リスク要因を特定するための解釈可能な機械学習アルゴリズムの統合:前向き出生コホートより)
著者:Yuanqing Fu, Wanglong Gou, Wensheng Hu, et al.
出典:BMC Medicine — Open Access Journal

1.Abstract

目的

早産児における過体重・肥満の早期リスク要因を明らかにし、その明らかにされた早期リスク要因を緩和できる摂食習慣を特定すること。

デザイン

コホート研究

セッティング

1999~2013年に行われたJiaxing Birth Cohort(出生コホート)

対象者

Jiaxing Birth Cohortに登録されている338413組の母子のペアの内、適格基準を満たした2125人の単胎児。

データ収集・解析方法

対象者が診療所に訪れた際に健康調査、身体測定を実施し、ライフスタイル、食習慣について聴取した。「解釈可能な機械学習(an interpretable machine learning)」に基づく分析の枠組みを用いて小児期の過体重・肥満の予測因子を特定した。さらに、ポアソン回帰分析により、特定された主要な予測因子と摂食習慣との関連について調査した。

結果

適格基準を満たした2125人の早産児(女児:863人[40.6%])の内、274人[12.9%]が4~7歳時点で過体重・肥満を発症していた。25の幼少期の変数を25の特徴に要約し、小児の過体重・肥満を予測する因子として、2つの重要な特徴を明らかにした。一つは、修正年齢1年目の乳児BMI Zスコアの軌道の変化でありと、もう一つは登録時の母親のBMIである。小児肥満となる乳児期のBMIの軌道を望ましくない軌道とし、それ以外を望ましい軌道に分類した。固形食品の早期導入(修正年齢3か月以下)と比較すると、修正年齢6か月以降の固形食品の導入は、望ましくない軌道に含まれるリスクが11%低いということを示した(相対危険:0.89、信頼区間95%:0.82~0.97)

結論

人生最初の1年間のBMI Zスコアの軌道の変化は早産児における小児期の過体重・肥満の最も重要な予測因子である。離乳食を修正月齢6か月以降に導入することが、BMIの軌道を逸脱させるリスクを軽減するために推奨される。

2.Discussion Points

  1. 研究の背景について
    1)機械学習の結果に頼らず、なぜその結果になったのか、機械学習がそのように判断した根拠にまで研究をしようとしている姿勢が良い。ブラックボックスといわれる機械学習により導かれた予測モデルについて臨床上、その意味するところを検討していることが重要だろう。
    2)なぜ、2つの目的を掲げなければならなかったのか、その意図が不明。例えば、離乳食の与え方が中国において問題視されている状況があるのかなど、背景に十分、触れられておらず、本研究の意義について理解が十分できない心配がある。
  2. 分析方法について
    3)データ収集の場となった診療所について説明が欲しい。サンプル数から当該地域の全出生児を対象にしたのではないかと推察されるが、中国の保健医療システムを理解できるような概要を記載してほしい。
    4)診療所での調査の実際について(聞き取ったとあるが、誰が面接したのか、計測したのか。など)記載が必要ではないか。また、子どもの成長をみるためのデータ(体重や身長)はその時に測定されたのかが不明。
    5)小児の過体重・肥満を予測する因子を抽出するための解析方法としての機械学習について、引用文献のアブストラクトをそのまま載せている。このような記述方法でよいのか、疑問が残る。
    6)元データと標本数に大きな差があるため、除外基準などについて図示するなどかなり詳しく記述されているが、限界としても触れられているが多くの欠損値があることについて、サンプルバイアスの可能性を気付かせるような方法をとっている。
  3. アウトカム変数の結果の記述について
    7)アウトカム変数となる子どもの体格について、平均値とSDが記載されているが、2.7kg(SD0.5)なら、正常な体重だとおもわれる。単位が省略されていることも気になるが、早産児でも出生体重が標準値に近い理由を考察する必要があるのではないか。
    8)母親の妊娠前のBMIが妊娠10週前後のBMIと類似するということについての先行研究等、文献による裏付けが欲しい。
    9)妊娠中のリスク因子について、どのような機序で小児肥満につながるのか。事実を示すだけでなくその根拠となる文献も引用し、併せて論じてほしい。

令和3年7月22日実施

日付:July 22, 2021 担当者:Shiromizu S
主題: Development of a clinical prediction model for the onset of functional decline in people aged 65–75 years: pooled analysis of four European cohort studies
65~75歳の人々の機能低下に対する臨床予測モデルの開発:4つのヨーロッパコホート研究のプール分析
著者:Nini H. Jonkman., et al.
出典:BMC Geriatrics (2019) 19:179

1.Abstract

目的

65~75歳の高齢者が3年間にADL機能低下が始まる可能性を予測する臨床モデルを開発し、その妥当性を検証すること。

デザイン

コホート研究

セッティング

ActiFE-ULM (ドイツ)、ELSA(英国)、InCHIANTI (イタリア)、LASA(オランダ)におけるデータベース

対象者

ベースライン時65~75歳で、ADLが自立している地域在住高齢者。

デザイン収集・解析方法

機能低下は、基本的なADLの2つの項目と手段的ADLの3つの項目で評価した。これら全ての5つの項目において3年間の追跡でいくつかの機能低下を報告した対象者を、機能低下ありと判定した。多重ロジスティック回帰分析を使用して予測モデルを開発し、その後の “optimism”(予測精度の過大評価バイアス)補正のためのブートストラップ法を使用した。4つのコホート研究のデータを相互に使用して、コホート全体の判別と比較しながら評価するため、内部と外部のクロス検証を適用した。

結果

3年間の追跡で、2,560人の地域在住者(平均69.7歳±3.0歳、女性47.4%)うち572人(22.3%)の機能低下が報告された。最終的な予測モデルには、年齢、握力、歩行速度、5回繰り返し椅子立ち上がり時間(非線形関連)、体格指数、心血管疾患、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、関節炎、うつ病症状の22の予測因子のうち10因子が含まれていた。“optimism”に補正されたモデルは、0.72のC統計で良好な判別を示した。調整された傾きは0.06、切片は1.05であった。内部外部クロス検証は、4つのコホートのモデルの一貫した結果を示した。

結論

65〜75歳の高齢者の3年間のADLの機能的低下の発症は、特定の身体機能測定、年齢、BMI、うつ病症状、慢性疾患によって予測できる。予測モデルは、4つのコホート全体で安定した良好な判別と調整で、外的妥当性を示した。

2.Discussion Points

  1. 研究の背景について
    1)対象を高齢前期に焦点を当てた点について詳しく説明されており、わかりやすい。
    2)追跡期間を先行研究より、かなり短くしているが、高齢前期の対象にふさわしい追跡期間であるか疑問である。65歳から75歳の10年間には幅があり、65歳からの3年間と75歳からの3年では機能の変化が大きく異なることが考えられる。どの年齢に焦点を当てると、前期高齢者の機能を評価できるのか。また、就業できる年齢を考慮する必要があるだろう。
    3)機能をどのように定義し,評価しているかわかりにくい。一般的に身体面や認知面、ADLなどが機能に含まれるが一部の機能に着目したのか、包括的なものか明確でない。おそらく、ADLの一部に着目していると思われるが、機能の中でADLに着目した理由があると意義が伝わるのではないか。
  2. 研究方法について
    1)機能の測定(手段的ADL)を、4か国のコホートに重複した項目のみを選択しており、その妥当性に疑問が残る。4か国で「重複した」から使うではなく,高齢者の機能低下を確率した指標で測定されると、妥当性を高めることができたのではないか。高齢者の機能評価に関して、万国共通の指標が開発されることが期待される。
    2)身体活動レベルを主観的な評価ではなく、歩行速度(筋力)等で評価することで、情報バイアスを考慮することができるだろう。
  3. 結果について
    機能低下の予測変数として、地域は挙げられていないようだが、地域によって、リスクスコアが異なるため、地域性が機能低下のリスクとなったように読み取れる。結局,リスクとなるのはどのような項目だったのか結論が伝わりにくい。
  4. 考察について
    1)著者は,握力の簡単な尺度だけで、機能低下を予測するのに十分であると記述しているがステップワイズ法で握力が有意な関連因子として残ったことを根拠にしているのだとしたら弱いように思われる。4つのコホートデータベースについての説明がほとんどされていないが,サンプルバイアスの問題はなかったのか,疑問が残る。
    2)先行研究と異なり、性別が本研究の予測モデルにおいて有意な予測値ではなかった理由の根拠が乏しい。生物学的に身体的パフォーマンスに性差があるのは当然の事実ではないかと思われるが検討が記述されていない。性別ごとの分析が必要であったのではないか。

令和3年6月16日実施

日付:June16,2021 担当者:Akemi Yokomizo
Role of Genotype in the Cycle of Violence in Maltreated Children
(虐待を受けた子どもの暴力に関する遺伝子型の役割)
Author: Avshalom Caspi ,at el
Source:SCIENCE 297:851-854,2002

1.Abstract

背景・目的

小児期の虐待が、反社会的行動のリスク要因となることは既に知られており,特に虐待を経験した男児は行為障害を含め,そのリスクが高いと言われている。いるが、しかし,同じ虐待を受けたこどもであっても,大きな違いがある。先行研究は、マウスとヒトのモノアミン酸化酵素(MAOA)活性の遺伝的欠陥と攻撃性の関連を明らかにしてきた。本研究では、MAOA遺伝子の活性と子どもの反社会的行動の発現の関連について検討した。

研究デザイン

ニュージーランドDunedin研究の出生コホートデータを用いたNested-case control study

方法

男女1,037人のDunedin研究対象者から得られたMAOA遺伝子の活性の高低と小児期の虐待歴(経験無,可能性有,経験有)、反社会的行動への影響を緩和回帰分析により検討した。反社会的行動に関する指標には、青年期の行動障害(DSM-IV)、暴力犯罪の有罪判決(補導・逮捕歴)、暴力に対する性格傾向、反社会性パーソナリティ障害の症状を包括した複合的スコアを用いた。

結果

3―11歳のうち、8%が重度の虐待、28%が虐待の可能性、64%が虐待歴なしだった。緩和回帰分析により反社会的行動の4つの指標を含む複合反社会的指標のスコアを検討した結果、虐待歴の有無と反社会的行動の複合指標に対するMAOA活性は有意な関連がみられた(P <0.001)。MAOA活性が低い場合、反社会的行動の複合指標が高いほど、虐待の程度も重く相関がみられた。虐待歴があり低MAOA活性の男性が行動障害を発症する可能性として、オッズ比は虐待歴がない男性の2.8倍であった。また、成人になってからの暴力的有罪判決は、虐待歴のある低MAOA活性の男性は、非虐待群の9.8倍となっていた。

結論

小児期に虐待歴のある男性においてMAOA遺伝子の活性が、将来の反社会的行動の発現を緩和する可能性が示唆された。

2.Discussion Point

著名なScience誌に載ったDunedin研究のコホートデータを扱った論文。紙面の都合でかなり文字数が制限されている感があるが,できれば,書かれているとよかったのではないかと思われる内容について,下記のような検討をした。

  1. 研究背景について
    小児期に虐待を受けても後の暴力や犯罪につながらない子どもが多くいることについて、発現に対する環境因子の役割について,先行研究があったのではないかと推察した。遺伝子を知ることがどのような可能性をもつのかに言及することで,遺伝子に着目する意義がより明確になったのではないか。
  2. 研究方法について
    虐待歴の有無とMAOA活性の高い群と低い群の交互作用項から、MAOAがmoderatorになっていることを検討した点が本研究の強みとしている。MAOA活性の高低に関する基準や根拠が示す説明があってもよかったのではないか。
  3. 結果について
    MAOA高活性と低活性別に虐待歴との関連について、Zスコアを用いて、図に示してあるが、読者にもMAOA活性の影響が分かりやすく示されており、インパクトもある。結果の伝え方としてとても工夫されており、参考にしたい。
  4. 考察について
    1) 低活性MAOA遺伝子型で虐待歴ありだったのは全体の12%にすぎず、母集団全体からみるとそれほど多いとは言えないことから,これまで虐待を研究課題とすることが過小評価されてきた可能性がある。しかし虐待によるダメージの大きさを反社会的行動との関連で示すことにより社会的な問題として取り組むべき課題であることを示し公衆衛生上、重要な示唆を与えている。
    2) 研究結果から、今後はさらに男女のサンプル数を増やし追試験を行うことで、将来的に精神医学や薬理学的治療の開発に示唆を与える可能性がある。一方で、看護学領域においては、環境要因の改善支援等につなげるためにも、MAOA低活性でも暴力行動につながらない理由の解明やMAOA活性を高める要因の解明などを検討することができるだろう。

令和3年5月19日実施

日付:May 19, 2021 担当者:Tsuji K
主題:Age at adiposity rebound in childhood is associated with PCOS diagnosis and obesity in adulthood—longitudinal analysis of BMI data from birth to age 46 in cases of PCOS
著者:E. Koivuaho, J. Laru, M Ojaniemi, et al.
出典:International Journal of Obesity 43(2109)1370-1379

1.Abstract

背景・目的

ARという,およそ6歳あたりにBMIの2度目の上昇が生じる現象が,成人期の肥満や代謝異常と関連するとされている。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は代謝機能と強い関連があり,早期の成長パターンがPCOSのリスクとなる可能性が指摘されている。そこで,本研究はARの年齢と成人期のPCOS診断とBMIの関連を検討することを目的とした。

研究デザイン

1966年から46年間追跡したコートを活用したNested-case cohort studyであった。

対象

Population-based 縦断研究に参加している46歳までの女性を対象とした。

方法

PCOSと診断された群と診断されていない対照群において、出生から13歳までの体重と身長のデータ、初潮時の年齢とデータ、31歳と46歳の時の身長と体重を分析した。

結果

PCOSと診断された女性は、低出生体重で、ARの時期が早く、AR以降も高BMIを示していた。ARの時期が早いことと、PCOSの診断は関連していたが、成人期のBMIの値とは無関係であった。
PCOSと診断されARの時期が早い女性は、対照群と比べ、31歳及び46歳時点でのBMIが高いが、ARの年齢と31歳および46歳時の血清テストステロン値は関連していなかった。

結論

ARが早いことは、成人期における高BMIとPCOSに関連していた。
ARが早く、肥満型を維持するような青年期の女性は、PCOSの症状を早期にスクリーニングする必要があるだろう。

2.Discussion Point

  1. 研究背景について
    PCOSを取り上げたことについて,緒言には小児の肥満が増加していることを取り上げ,肥満の合併症としてPCOSに焦点を当てたと記載されているが,それ以外にも,晩婚化・少子化を背景に,不妊症の原因の一つであるPCOSを予防することの意義があるということを伝えたかったのではないかと推測できる。PCOSの発症率は3~5%程度であり,原因は明確に規定されていない疾患であることからも肥満の合併症としてはインパクトが弱い。そのPCOSに焦点を当てる意味を読者に伝えるためにも,その社会的意義を詳細に記述してほしい。
  2. 研究方法について
    1)データ測定の回数は記述されているが、いつの段階でデータを収集し測定したのか、図2を見ると,ほぼ20歳未満で測定した後は31歳と46歳で測定したのみであるように見受けられるが,そもそもなぜ,この31歳と46歳で測定したのか,データ収集間隔がこのようになってしまったことをどのように考え対処したのか,説明が必要だろう。
    2)表1を見れば取り扱った変数が分かるが,いつ、どこで、誰が、どのように収集したのかを記述しておく必要があるだろう。
    3)解析に、SPSSとR studioを2つ利用しているようだが,なぜこのように使い分けたのか理由を説明して欲しい。
    4)出生から46歳までの間のデータを収集しているが、なぜ31歳と46歳にPCOSの診断を確認したのか、説明が必要だろう。
  3. 結果について
    1)表1には対象者の特徴が詳細に記述されているが、これを本文中にも論述することで,より、結果がわかりやすくなるのではないか。
    2)PCOS診断を受けた群とコントロール群のBMIの変化を図2では、4つの見方を表示し、比較をわかりやすく示しており、丁寧な提示がされている。Dの表示は、出生から46歳までの変化を示し、13歳以降のデータは31歳と46歳の2時点であることがわかる。この10年以上の間の推移を予測することは難しく,例えば31歳にPCOSを未発症で,46歳に発症した場合,この間の体格推移に意味があるかもしれない。記述されてはいないが,この間の体格を測定できていないのは,本研究の限界だろう。
    日本では、健康診断などのデータがあり、経年的なデータを分析することが可能である。このような研究を可能にする制度があるため,データを活用するシステムの開発が必要だろう。
  4. 考察について
    この論文ではPCOSの発症とARに関連があることの新規性を記述しているが、先行研究との一致性については論じられていないため、説明が必要だろう。

令和3年4月12日実施

日付:April 12, 2021 担当者:Haga C
主題:The relationship between maternal pre-pregnancy body mass index and exclusive breastfeeding initiation: Findings from an Australian obstetric cohort
著者:C R. Knight-Agarwal, P Rickwood, et al.
出典:Obesity Research & Clinical Practice 15 (2021) 33–36

1.Abstract

背景・目的

オーストラリアの産科を対象としたコホートを用いて母親の妊娠前のBody Mass Index(BMI)の増加が乳児の最初の授乳形態に関連するかを検討すること

研究デザイン

2008年から2013年のデータを用いた後ろ向きコホート研究であった。

対象

12,347人の女性から得られたBMIデータを用いて次のようにカテゴリ化した。それらはBMI 18以下の低体重,19以上24以下の標準体重,25以上29以下の過体重,30以上34以下の肥満クラスⅠ,35以上39以下の肥満クラスⅡ,40以上の肥満クラスⅢであった。乳児への最初の授乳形態はルーティンとして研究対象病院の出生時アウトカムシステムに記録された。6つのBMIカテゴリと授乳形態の関係はロジスティック回帰分析によって検討された。交絡因子として,喫煙状態,出順,出生場所,母親の年齢を調整した。

結果

対象コホートのうち,609人(4.93%)の女性が低体重で,6235人(50.50%)が標準体重,3116人(25.24%)が過体重,1314人(10.64%)が肥満クラスⅠ,596人(4.83%)が肥満クラスⅡ,477人(3.86%)が肥満クラスⅢであった。調整後のモデルにおいて,BMIのクラスが上がるにつれて,完全母乳ではなく,完全人工栄養になる傾向が認められた。BMIが40を超えたクラスⅢの肥満をもつ女性は最初の授乳の際に完全人工栄養である調整オッズ比が2.91倍であった。

結論

過体重あるいは肥満の女性は,最初の授乳の際,完全母乳ではなく,完全人工栄養になる傾向が有意に認められた。これらのハイリスクグループに完全母乳を進めることは,出生後1時間までか,それ以内に指導する必要が示唆された。

2.Discussion Point

  1. 研究方法について
    1)公式の記録とされているデータを扱っていることはわかるが,それを記録している人やタイミング等にバイアスの起因は無いか,詳細な記述があった方が精度を判断できるだろう。
    2)モデルの適合度になぜ2種類の方法を用いたのか,またどのように判断したのかが不明。Influence Analysesは大きなデータを扱うときにメタ分析として使用されるようだが,もう少し説明が欲しい。
  2. 結果について
    1)データが揃っていることが適格基準だったことはわかるが,どのくらいの母親がBMIデータがなかったのか,なぜなかったのか,多胎妊娠の母親はどれくらいいたのか,年齢分布はどうだったのかについて,方法もしくは結果で述べるべきではないか。
    2)対象者の特性について表に示して論述していない。考察につなげるために必要な特性については(全豪の分布と比べるなどして一般化する予定ではなかったのか?)記述しておく必要があるだろう。
  3. 考察について
    1)非妊時の母親の体格,特に肥満が初期の授乳形態に影響があることに着目する意義,その機序について,イントロダクションで記述されてはいるが,ここでも説明が必要だろう。
    2)一方で,非妊時の母親の体格がやせの場合に,それが与える影響について検討しないのは,おそらく世界の先進国において女性のやせがそれほど多くなく,問題とされていないことに由来すると推測される。しかし,日本のように若年女性の痩せが低出生体重児の増加に影響を与えている国においては,気になるところである。
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