1.普段どのような仕事をしていますか?
私たちは、研究者の先生方が研究に用いる実験動物の飼育管理に携わっています。現在、香川大学の動物実験施設で飼育されている動物種は、マウス、ラット、スナネズミ、ウサギ、イヌと多岐にわたります。主な業務は、動物たちの日常的な飼育・健康管理(飼育ケージの洗浄・交換、水が飲めていない動物や不慮のケガを負っている動物の確認など)、施設内の清掃・消毒、飼育器材の準備などです。目立つ仕事ではありませんが、先生方の動物実験を陰で支える「縁の下の力持ち」としての役割を果たしたいと考えています。また、2023年度からはマウスの受精卵を扱う胚操作業務の受託を開始し、上記の日常業務の合間に、先生方から依頼を受けた胚操作業務を進めています。さらに、空いた時間を見つけて、動物実験施設の先生の実験や、前職で行っていた自分の研究の続きを行うこともあります。
2.この仕事の好きなところ・面白いところは何ですか?
常に「誰かのためになるところ」でしょうか。私たちは研究者の先生方の実験動物を預かっている立場ですので、常に「先生方のために、動物たちのために」という目線で業務を行っています。具体的には、動物たちが快適に過ごせるように飼育室の温度・湿度管理を行い、ケージ交換等の飼育管理、健康管理を徹底しています。私は動物が好きなので、日々、動物と接することができるのは単純に楽しいです。また、依頼業務の一環として、生まれたばかりの仔マウス(あるいは帝王切開後の仔マウス)を別の母マウスに育児をお願いすることがあります。適切な環境を整えてあげることで、マウスは他の親の仔であっても自分の仔と同じように育児をしてくれます。そういう実験動物の素晴らしいところを間近で観察できるのも、この仕事の魅力の一つです。
3.今後の展望は何ですか?何を目指していますか?
2023年度から始動した胚操作業務は、立ち上げから主要メンバーとして関わっており、特に思い入れのある業務です。香川大学に採用されるまで、マウスの受精卵を扱う経験がなかったため、慣れるまでは大変苦労しました。現在は、マウスの系統保存(凍結胚・凍結精子の作製・保管)やクリーニング(体外受精や帝王切開)が主な依頼業務となっておりますが、今後はゲノム編集動物作製も業務として対応できるように、技術を磨いている最中です。
4.モチベーションを持続している秘訣(いま輝いている秘訣)は何ですか?
モチベーションを常に維持できているかというと、難しいときもあります。胚操作業務でうまくいかないときなどは特に、鬱々とした気持ちになります。そんなときは、鬱々としながらも日常の飼育管理業務をこなしながら、自分が直面している問題を分析することに時間を費やします。「なぜうまくいかなかったのか」「次はどのような工夫ができるのか」をひたすらに考えていると、いつの間にか自然と「次こそは成功させる!」という強い気持ちが湧き上がってきます。一言でいうと、「諦めが悪い」タイプかもしれません(笑)。
5.仕事で大切にしていることは何ですか?
コミュニケーションを大切にしています。同じエリアを担当している同僚とは常に情報共有をしています。具体的には、施設全体のミーティングとは別に、小規模なミーティングを定期的に実施し、活発な意見交換を行っています。小規模のミーティングでは、仕事の愚痴が出ることももちろんありますが、日常業務の些細な出来事を発端とした具体的なアイデアが出やすく、とても貴重な場であると感じています。また、利用者の先生方が円滑に実験を進められるように、動物の状態が悪いときや死亡した際には、迅速かつ正確な情報を連絡ができるような体制作りも心がけています。
国立大学としては規模が大きすぎず、学内でのコミュニケーションが取りやすいと感じます。香川大学医学部で働き始めてまだ4年足らずですが、瀬戸内海の美しい景色や観光地が近く、リフレッシュしやすい環境は大変ありがたいです。
7.これからの香川大学に求めることを教えてください
今後、地方国立大学として生き残っていくためには、さらなる研究力の向上や産学連携の推進などが不可欠だと考えます。そのためにも、基礎医学・臨床医学の研究環境整備(研究費の確保、共有設備の充実)が重要になります。香川大学医学部50周年事業を契機に、医学部を中心とした研究活動が益々活発になることを願っています。共有施設である動物実験施設の運営を担う技術職員の一人として、少しでも貢献できるよう、日々自己研鑽に励んでいきたいと思います。
<インタビューを終えて>
仕事の本質が「誰かのため」にあることを大切にされている点が印象的でした。特に、動物たちの健康管理や飼育環境の整備を通じて、研究者の先生方の実験を支える役割に対する誇りを感じました。また、日々のコミュニケーションを大事にし、チーム内での情報共有を通じて業務の改善を目指す姿勢も素晴らしいと思いました。やりがいを感じながら、技術を磨き続ける姿勢が伝わってきました。
この場所で輝く ~現場の声とメッセージ~
2025.4.14
香川大学 研究基盤センター
動物実験施設 技術職員 伊藤 益美 さん
動物実験施設 技術職員 伊藤 益美 さん