文字サイズ

香川大学医学部開講50周年記念特定基金

この場所で輝く ~現場の声とメッセージ~
2025.4.4
香川大学医学部
老年看護学 助教 桑原 唯先生

1.簡単な生い立ちなどを教えてください。(どこで生まれた、どんな学生だった、など)
奈良で自然の中で育ち、中・高校は一貫校で奈良公園の近くだったので6年間鹿と共に通学していました。看護学生として京都で過ごした後、奈良へ戻り看護師として病院や地域で働いていました。その後、大学院に進学し修士課程修了後は大阪で教員をしていましたが、香川大学の博士後期課程に進学し、その後香川大学へ来ることになりました。
 
2.普段どのような仕事をしていますか?
前期は授業や委員会の補助業務、4年生の統合実習の指導をしています。最近はチェンマイ大学の短期交換留学生を迎える準備や滞在期間のお世話をさせてもらったりしています。後期は3年生と一緒に毎日施設や病院へ実習に行っています。私が所属する老年看護学講座の看護実習には2つの科目があります。1つは老年生活援助実習です。介護保険施設にて地域で暮らす高齢者さんの生活を理解できるように指導しています。2つ目の老年看護学実習では病院で疾患を持つ高齢患者さんの入院生活や退院後、地域に戻って生活できる支援の理解ができるよう指導しています。また、三木町地域包括支援センターと連携して学生と一緒に認知症カフェを開催することもあります。


3.なぜこの仕事を選びましたか?
看護学生の頃、卒後5年たったら大学院への進学を教員から勧められていました。しかし、「勉強」は嫌いだったので就職後すっかり忘れていました。しかし、本当に5年経った頃に恩師から連絡がきました。数年のらりくらりと逃げたのですが、 その時働いていた訪問入浴介護での看護師の役割に疑問が多く「それなら研究してみては?」と再度恩師のすすめもあり修士課程に進学しました。修士課程修了後、なんとなく気づいたら教員になっていました。
 
4.この仕事に惹かれた理由は何ですか?
小さいころから、“なぜ?”を考えることが好きでした。また、興味のあること、自分の理解できないことは納得いくまで調べる、追求するというのが中高生の時の校風でした。そのため、看護師として働くなかで、“なぜ?”がたくさんあってそれを追求できるというのがこの仕事に惹かれた理由だと思います。また、学生たちから常に新しい学びがあるところもこの仕事の魅力だと感じています。  
 
5.仕事中にぶち当たった壁はありますか?どのように克服しましたか?
学生時代から英語が苦手で、入試でも英語のせいで志望校に行けなかったといっても良いくらいです。しかし、最近、国際交流に携わらせていただく機会が多く、日々英語の勉強をしています。逃げていてもやらなくてはいけないときは来ると切り替えて、苦手を克服中です。国際学会でも研究発表をしました。
 
 
6.今後の展望は何ですか?何を目指していますか?
趣味が手芸やお菓子づくりなのでそれを活かした視点から地域で暮らす高齢者と学生が協同してできる地域活性化を考えていきたいと思っています。幅広い年代が交流をもつことで、今後おこりうる災害などの危機的状況に対して効果的な対策がとれることは、先の災害からの教訓としてわかっています。小さなことですが、認知症カフェに参加した学生が帰り道困っていた高齢者に声をかけお手伝いができたことを後で報告してくれました。少しの関わりの中でも高齢者への理解が進むことで、困っている高齢者を助けることができるという例であったと考えます。
 
7.モチベーションを持続している秘訣(いま輝いている秘訣)は何ですか?
香川県を仕事でもプライベートでも満喫していることです。仕事では常に新しい挑戦があり、また、他分野の先生方とお話する機会が増えたこと、また、プライベートでは、香川でお知り合いになった方々が香川を盛り上げようと様々なことに取り組まれていることも刺激になっています。
 
8.この道(仕事)を目指す人にかけたい言葉は何ですか?
とにかく何事もチャンスがあれば恐れず挑戦することが大切だと思います。もし、研究や進学のお誘いが来たらとりあえず一度やってみてください。何か得られるものは必ずあります。
 
9. 香川大学医学部の良いところを教えてください
付属病院に実習指導で行くと実習環境の良さに驚きました。看護師さんはもちろんお医者さんも学生が直接声をかけても丁寧に指導していただけます。関西ではあまりなかったことでしたので驚きました。医学部の風土が多職種であろうとも協同して成長しようというものなのだと感じています。
 
10.これからの香川大学に求めることを教えてください
今後、高齢者がさらに増加しますが人口は減少します。その中で、医療は高度化し、制度は複雑化します。また、近年増加する自然災害、また海外からの移住者に対応する看護師を育成するには、他分野との連携が不可欠だと考えます。そのためにも他分野の先生方と連携できる機会が増えればうれしいです。
 

<インタビューを終えて>
一度就職した後、数年を経て大学院に進学されたことは、強い意志と学びへの情熱を示す選択だったと感じます。幼い頃から「なぜ?」と疑問を持ち、考えることを大切にされてきたその姿勢が、この決断の根底にあるのではないでしょうか。また、学生からも学びを得ることを大切にし、今なお探究を続ける姿勢には深く感銘を受けます。さらに、英語の苦手意識を克服しながら国際交流に挑戦する姿や、地域とのつながりを活かした取り組みも印象的でした。こうした挑戦を重ねる姿勢は、今後の教育や地域貢献にも大きくつながっていくと感じます。