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香川大学医学部開講50周年記念特定基金

この場所で輝く ~現場の声とメッセージ~
2025.4.23
香川大学医学部
消化器外科 医院 福家 拓郎先生

1.簡単な生い立ちなどを教えてください。(どこで生まれた、どんな学生だった、など)
香川県の丸亀市出身です。4人男兄弟の次男として小中高と地元の丸亀で過ごし、両親や高校の担任の先生の薦めもあり、香川大学医学部医学科に進学を決めました。学生時代は柔道部に所属し、人数不足で当時廃部寸前だった部活に入部したことを先輩方が大変喜んで下さったことを今でも覚えています。 学生時代の臨床実習での消化器外科の先生たちとの出会いや、その仕事ぶりに壮絶なインパクトを受け、今でも鮮明に当時の記憶が蘇ってきます。

2.普段どのような仕事をしていますか?
消化器臓器を対象とした疾患に対して主に手術加療を施す診療を提供することが主な仕事です。他院より外来に紹介いただいた患者様の不安に寄り添い、最善の手術治療を提供することが求められます。技術の向上や知識習得のための修練は言うまでもなく必須で、また患者様個人に寄り添った治療計画のための術前後の綿密なカンファレンスや、手術計画の作成が重要になります。術後は全身管理や合併症に対する対応を行い、退院後の外来定期フォローも非常に重要な業務です。 時に手術時間が12時間を超えるような大手術も経験し、術後ヘトヘトになる事もありますが、大学病院ならではの魅力でもあると思います。また大学機関としての情報発信の場である学会参加や学生を含めた後輩の指導にも力を入れており、毎日が非常に充実しています。
 
3.この仕事に惹かれた理由は何ですか?
私にとって消化器外科医の最大の魅力は、”一般的外科医(なんでもできる外科医)”のイメージに一番近いところです。多くの消化器臓器を対象とした悪性・良性疾患に対する大手術は勿論、時には致命的ともなり得る救急疾患、腹部ヘルニア手術や胆石症、痔核といった多くのcommon diseaseから外来診療まで幅広く対応が求められます。習得すべき手術手技や全身管理に必要な知識は膨大で、日々の修練も欠かすことができず、毎日とても繁忙なのが現状です。
一方でそのやりがいはまた格別で、なんといっても術後の患者様が「ありがとうございました。」と笑顔で食事ができるようになれるあの瞬間だけは、何物にも代えられない、全ての消化器外科医に共通する”外科医でよかった”と感じられる瞬間です。
また消化器外科医は決して一人では医業をこなすことはできません。手術一つにしても誰かの助けがないと成り立ちません。逆に言うとチームでの助け合いが必須で、”みんなで力を合わせて患者様に向き合うチーム力”が求められます。特に香川大学消化器外科は素晴らしいチーム力と個性豊かな先生が集まるとても魅力的な診療科です。素敵な先生と出会えた事に感謝し、今後も香川の外科医療を盛り上げられたらと思います。

4.仕事の失敗談はありますか?
学生時代、消化器外科の臨床実習に参加している際の出来事です。
回診時に教授に患者様のショートプレゼンテーションをベッドサイドで行う機会があったのですが、自信がなかったのか、小さい声でプレゼンテーションを行ってしまい、患者様から”君!大きい声で!頑張れ!” と励まされた事がありました。悪性疾患に対する治療で頑張っている患者様に励まされる始末で、情けない気持ちと患者様からしたら正しく伝えてほしいと言う気持ちもあったのだと思い、大変失礼な事をしてしまったと反省したのを今でも思いだします。当時の患者様には感謝してもしきれません。
 
5.今後の展望は何ですか?何を目指していますか?
消化器外科領域のみならず、患者様個人に対する適切な手術治療の選択と低侵襲手術が求められる時代です。ロボット手術などの最先端の治療等に関しても一般認知され始めており、患者様から求められる期待はとても大きいものがあります。 先代の先生達より引き継いだ技術を継承し、同世代と切磋琢磨しながら、患者様に寄り添った手術治療を提供できるよう引き続き精進していきたいと思います。
 
6.モチベーションを持続している秘訣(いま輝いている秘訣)は何ですか?
同期入局の先生が多いことがモチベーションの秘訣かもしれません。
現在香川大学消化器外科には私と同じ同期入局の先生が私を含め、6名いらっしゃいます。
当然過去に事例のない程の入局者数でした。
研修初期の頃は”誰々が何の手術を執刀した”などの些細なことが気になり、焦る気持ちや互いを意識しながら切磋琢磨し、時に飲み明かした日々を思い出します。そんな6名の先生も今では立派に香川の消化器外科医療を盛り上げてくださっています。 いつになっても同期は自分の成長の刺激にもなりますし、なにより心の助けや支えにもなります。
今後、専門的に進む道が異なるかもしれませんが、これ程多くの同期に巡り合えたことに感謝し、更なる高みを目指していけたらと思います。
6. 香川大学医学部の良いところを教えてください
まずは立地です。一見田舎臭いと思われがちかもしれませんが、街から少し離れている分、緑が多く、少し高台にあるので、特に病棟や校舎からの高松の街の景色、三木側から四国山地へ広がる景色と、どちらも大変素敵です。
臨床の面では大学病院ですので、最先端の外科治療を学ぶことが可能です。昨今では低侵襲手術(ロボット支援下手術、内視鏡下手術)や患者さんに応じた個別治療の重要性が叫ばれており、時代のニーズに応じた治療を提供できる点も魅力な点ではないでしょうか。 また研究や学会面でも多くの支援をいただいており、充実した研究生活も期待できると実感しています。
 
7.これからの香川大学に求めることを教えてください
香川大学医学部が開講して50年という節目の年を迎えており、歴史としてもある程度の重厚感とうどんで言うところの”コシ”が強くなってきたのではないでしょうか。消化器外科領域を取り巻く環境も近年大変めまぐるしいものがあります。素晴らしい先代の方達が築き上げたこの栄光を継承しつつ、この香川の地から世界で活躍できる外科医の育成・支援、最先端治療を学び続けることができる環境を是非期待したいと思います。
 
<インタビューを終えて>
インタビューを通じて、真面目で誠実な人柄と、仕事に対する強い使命感がひしひしと伝わってきました。学生時代の経験を大切にしながら、日々の診療・手術に真摯に向き合い、患者に寄り添う姿勢は非常に印象的です。また、技術習得への飽くなき努力や、チーム医療への理解、そして後進の指導にも情熱を注ぐ様子から、医師としてだけでなく人間としても信頼される存在であることが感じられました。今後のさらなる活躍を心から応援したいと思います。