私たちは、臨床遺伝ゲノム診療科という遺伝を専門とする診療科でゲノム医療に携わっています。遺伝性疾患の患者や家族に対して、家族歴聴取をはじめ、リスク評価や遺伝学的検査、診断、フォローアップなど心理社会的支援を行っています。また、遺伝性疾患の原因追及や教育効果の検証などの研究、教養教育や医学科生に対する講義など教育活動も行っています。さらに、診療や研究を行うことだけでは、患者しか救えないと考え、特に私は、全国の遺伝カウンセラーのなかでも、市民啓発やキャリア教育に対する学校での講演会などにも注力しています。
2. なぜこの仕事を選びましたか?(偶然ですか?なりたかったですか?)
大学で理学部生物学を学び、分子生物学を中心とした基礎研究を行っていましたが、研究を進めるなかで、より人とかかわりたいと思うようになりました。その際、医療の分野で「遺伝カウンセラー」というお仕事を知りました。大学で学んだ生物学の知識を生かして人ともかかわれる職業として、その後、大学院の遺伝カウンセラーコースに進学し、「認定遺伝カウンセラー」の資格を取得しました。大学院修了後も遺伝カウンセラーのやりがいを強く感じ、今に至ります。
3. 仕事中にぶち当たった壁はありますか?どのように克服しましたか?
あらゆる活動をするなかで、うまくいかないことも多いです。そんな時に、周りの先生方やスタッフ、仲間の存在は非常にありがたいです。最近の私は、何事も積極的に挑戦する時期で、毎日が初めて続きです。日々、試行錯誤の繰り返しであり、失敗することもありますが、周りの方々の支えにより、また前を向いて進めます。
4. この仕事の好きなところ・面白いところは何ですか?
遺伝カウンセリングでは、様々な方々の人生に触れることができます。価値観や文化的背景などを踏まえてクライエント(相談者)と一緒に考え、納得のいく選択を導き、その人自身の物語の1ページを共に刻むことができます。遺伝性疾患の患者やご家族の相談では、厳しい局面も少なくないですが、その分、誰かを必要とするときに寄り添える人材であり続けたいと思わされます。
5. モチベーションを持続している秘訣(いま輝いている秘訣)は何ですか?
仲間の存在が大きな力です。周りの先生方やスタッフが前向きで、リスク管理をしつつ、チャレンジ精神旺盛であるからこそ、心理的安全性の保たれた環境で私も全力で物事に取り組めています。また、今や、香川県を中心に全国、世界中の方々とやり取りをする機会が増えています。色々な人に触れ、仲間とともに多角的な視点を持てる機会は相乗効果があり、非常に好奇心が掻き立てられます。
6. 仕事で大切にしていることは何ですか?
当院では、特に、遺伝カウンセラーや看護師が診療前後に家系図聴取や状況確認、問診を行うことで業務を医療従事者間でシェアしています。多職種連携することで、患者の社会背景を踏まえ、心理的安全性が担保された診療につながります。ゲノム医療は前例が少なく、遺伝カウンセラーは、他の医療従事者とともに、患者の満足度や適切な医学的管理向上を目指して、これからの未来を担っていく存在でもあると思っています。
7. この道(仕事)を目指す人にかけたい言葉は何ですか?
自分自身の生きる「道標」に出会ってほしいと思います。少しでも「素敵だな」と思える人に出会うことは、今後のやりたいことや自分が興味を持つもの、自分の強みや弱み、可能性を広げるヒントになります。医療従事者や研究者はそのほかの世界を知る機会が少ないです。異分野の方と交流と言っても、容易ではないですが、一歩踏み出すことで様々な出会いがあり、考え方や生き方が大きく変わるかもしれません。また、あなた自身の行動そのものが誰かに影響を与えるかもしれません。模索している中でも、全力で取り組んでいると、道は開けると思います。今を動かし、未来を一緒に創りましょう。
8. 香川大学医学部の良いところを教えてください
事務、教員、医療従事者等の連携があり、スタッフがあたたかく、皆が快適に過ごせる環境づくりへのサポート体制が充実しています。また、それぞれお互いの良いところを活かして可能性を広げる環境を提供してくれるところにも魅力を感じています。個人を尊重し、協調性とともに、独自性を伸ばせる職場では、クリエイティブなアイデアが湧きやすいと実感します。
9. これからの香川大学に求めることを教えてください
今後、ゲノム医療の発展とともに、ますます「遺伝情報」を活用することで病気の予防など「健康管理」につなげることが可能となってきます。そのため、異分野多職種のサポートが不可欠で、かつ、新しい分野を切り開く豊富な人材も必要であると考えます。全国にいる香川大学にゆかりのある方やコミュニティなどを活用した人材育成や支援を今後期待しています。
<インタビューを終えて>
遺伝医療の最前線で活躍される姿勢に深く感銘を受けました。挑戦を恐れず、多職種と協力しながら患者に寄り添う姿勢が素晴らしいですね。未来の医療に向けた熱い想いが伝わる、非常に意義深いお話でした。
この場所で輝く ~現場の声とメッセージ~
2025.2.21
香川大学医学部附属病院 臨床遺伝ゲノム診療科
特命助教 十川 麗美先生
特命助教 十川 麗美先生