がんゲノム
がんゲノム医療は、がん遺伝子パネル検査を用いてがん細胞の遺伝子の変化を調べ、個々の患者さんのがんの治療に役立つ情報を得ることを目的としています。
当院は、2019年9月19日付けで厚生労働大臣より「がんゲノム医療拠点病院」に指定され、「がん遺伝子パネル検査」を実施しています。
「がん遺伝子パネル検査」でがん細胞の遺伝子の変化を調べることで、どのような薬剤が効きやすいかということを予測できることがあります。この結果を参考にして、治療効果が期待できる薬剤や、参加できる可能性がある臨床試験・治験の有無を含め最適な治療法を検討します。
また、これらの結果をもとに、将来的に採取したがん細胞の遺伝子情報を解析し、そこからがんの原因となる遺伝子異常を発見すると、それに適応する薬を投与する、というPrecision Medicine(プレシジョン・メディシン「精密医療」)につなげることを目的としています。
遺伝性腫瘍の可能性が判明することで出現する遺伝に関する悩みや、精神的な負担に対して、「遺伝カウンセリング」も行っています。
遺伝子パネル検査件数 がん種別(2020年6月)
| がん種 | n | |
|---|---|---|
| 頭頚部 | 下咽頭がん | 1 |
| 唾液腺がん | 4 | |
| 嗅神経芽細胞腫 | 1 | |
| 消化器 | 胃がん | 1 |
| 小腸がん | 2 | |
| 大腸がん | 6 | |
| 胆道がん | 1 | |
| 膵がん | 3 | |
| 泌尿器 | 腎がん | 1 |
| 膀胱がん | 1 | |
| がん種 | n | |
|---|---|---|
| 婦人科 | 子宮頸がん | 3 |
| 卵巣がん | 1 | |
| 腹膜がん | 1 | |
| 脳 | 膠芽腫 | 1 |
| 皮膚 | 悪性黒色腫 | 1 |
| 有棘細胞がん | 2 | |
| メルケル細胞がん | 1 | |
| その他 | 神経内分泌腫瘍 | 3 |
| 原発不明がん | 1 | |
外来化学療法室
ベッド20床に対して化学療法専門医が従属勤務し、がん化学療法認定看護師を含む3~4名の看護師が専任体制でケアにあたっています。高度で安全な治療を提供できる環境整備、異常の早期発見、副作用の観察や症状緩和、精神的苦痛の軽減、在宅セルフケアの維持・向上を目標に看護を行っています。又、漢方薬による支持療法も積極的に取り入れています。
緩和ケアチーム
当院の緩和ケアチームは、2005年に活動を開始した歴史あるチームです。2017年からは、がん治療医に緩和ケア担当医が加わる形で、一つの医局で多くの時間をともに過ごしています。また、医師の隣では緩和ケアチームの多職種メンバーが業務を行っており、日々の臨床の中で感じる困難感や充実感などを、何気ない会話の中で共有しています。実はこのような体制は、全国的にも非常に珍しいものです。毎年のようにがん治療が大きく発展しており、だからこそ意思決定支援を含めた緩和ケアは重要性を増しています。近年、緩和ケアと臨床腫瘍学の統合が叫ばれるようになりました。両方の知識と技術と心意気をおのずと把握し、向上させられる恵まれたこの環境で、地域の医療施設と連携しながら最高の緩和ケアを患者さんとそのご家族にお届けできるよう、緩和ケアチームのスタッフ一同研鑽を積んでいます。
がん患者さんのつらさは非常に多様です。そのつらさを早期にキャッチし、時には主治医の診察に同席して、診察中の患者さんやご家族の様子を把握した上で緩和ケア外来に紹介してもらうこともあります。このフットワークの軽さが、当院緩和ケアチームの特徴とも言えます。
さらにここ数年は、学生・研修医教育に特に力を入れています。医療者自身、患者さんと向き合う中でつらさを感じることも多いです。緩和ケアの知識を持ち、‘being(そこにいること)’がどれだけ大きな力を持っているか実感することが、患者さんやご家族のみならず、医療者である自分自身の慰みにもなります。そのことを学生や若い医療者たちにしっかり伝えていくことが、大学にいる私達の使命だと考えています。

緩和ケアチームのメンバー

ACP*:Advanced Care Planningのポーズ!!
*ACPとは、患者さん本人と家族が医療者や介護提供者などと一緒に、現在の病気だけでなく、意思決定能力が低下又は困難となった場合に備えて、あらかじめ、終末期を含めた今後の医療や介護について話し合うことや、本人に代わって意思決定をする人を決めておくプロセスを意味しています。
漢方薬応用による“がんサポーティブケア”
当科では、症状改善に難渋する治療関連症状に対して積極的に漢方薬を応用しています。
がんサポーティブケアとは、「がん患者が治療を受ける際の種々の副作用を軽減し、さらに心身・社会的・スピリチュアルな問題に早期に対応して、各治療がその効果を最大限に発揮できるようにするための全ての医療行為」のことを意味します。近年の薬物療法の進歩と普及に伴い、辛い副作用の中で薬物療法に関連した悩みの割合が、2003年の19.2%から2013年には42.7%と顕著に増加しています。そこで、現代医学的に対応しても難渋する治療関連症状に対して、漢方薬を応用することが期待されています。主な役割としては、①全身状態の改善・維持(がん治療の前後、治療関連の副作用軽減・予防など)、②現代医学的に不十分な症候に対する補完や、③現代医学的に対処困難な症候に対する代替などが挙げられます。当科では、漢方薬を積極的にがんサポーティブケア(支持療法)に応用することで、治療完遂の向上や合併症の抑制を通して、治療成績の向上とQOLの改善を行います。

生薬を基にエキス製剤化した医療用漢方製剤を保険診療にて処方・併用しています。
漢方応用によるがん支持療法例

支持療法で使用される主な漢方薬
左右にスクロールしてください。
| 対象疾患 | 主な抗がん剤 | 主な治療毒性 | 主な副作用症状 | 漢方薬 |
|---|---|---|---|---|
|
フルオロウラシル系: 5FU、S-1、Capecitabine アルキル化剤: シクロフォスファミド |
粘膜障害、骨髄抑制 | 口内炎・下痢、貧血、倦怠感 | 半夏瀉心湯 補剤 |
| プラチナ系: シスプラチン |
腎障害、消化器症状、骨髄抑制 | 腎障害、悪心/嘔吐、食欲低下 | 柴苓湯/五苓散/真武湯 六君子湯/補剤 |
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| プラチナ系: オキサリプラチン |
末梢神経障害 | しびれ | 牛車腎気丸 人参養栄湯 |
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| イリノテカン | 腸管粘膜障害、白血球減少 | 下痢、倦怠感、食欲低下 | 半夏瀉心湯 補中益気湯 |
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| タキサン系: パクリタキセル、ドセタキセル |
末梢神経障害、骨髄抑制、関節痛/筋肉痛 | しびれ、貧血、倦怠感、筋肉痛/関節痛 | 牛車腎気丸 十全大補湯/補剤 芍薬甘草湯 |
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| その他 | 味覚障害、しゃっくり、口渇/咳、浮腫 | 補剤、柴胡剤 呉茱萸湯/芍薬甘草湯 麦門冬湯 利水剤 |
地域連携
薬物療法を導入した後は、当院外来もしくは地域の連携医療機関で治療を継続していきます。可能な限りのご家族と一緒に来院されることをお勧めいたします。
薬物療法を導入した後は、当院外来もしくは地域の連携医療機関で治療を継続していきます。可能な限り今までの生活が続けられるように心がけています。また、各分野の専門医、がん専門看護師、がん化学療法認定看護師、がん専門薬剤師と協働し、安全で快適な外来化学療法の実施に努めております。
また、院内外のがん患者及びその家族並びに医療機関等に対し、それぞれの年齢特性に応じたライフイベントによる社会的問題が、治療に及ぼす影響についての情報収集や情報提供を行います。がん患者の療養上の相談や就学・就労など個別の社会的事情に関して、専門分野と連携することで、患者や家族が安心して適切な医療や支援を受けられる環境の整備を行い、地域の病院との連携を含めた医療や支援も行っています。

