医学部長挨拶

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医学部長  西山 成

香川大学医学部は医学科・看護学科・臨床心理学科の3つの異なる学科を有する特色を持ち、これまで地域医療を支える医療人や国際的な学術リーダーを広く輩出して参りました。私はこのような香川大学医学部の歴史を引き継ぎつつ、今後、求められる未来の医学・医療人を育成し、戦略的な創発研究の展開を図り、地域医療活動を推進し続けて参ります。

【教育推進ビジョン】:未来で生き残れる高度医学・医療人の育成
人生100年時代を迎えた現代では、疾患やその治療のみならず、心理的な側面も含めた健康の理解や援助についての学問が進みましたが、新型コロナウィルス感染症のパンデミックにより、我々は医学・医療の限界を目の当たりにしました。しかしその一方で、この未曾有の状況では多くの情報がリアルタイムに共有され、ワクチンなどの有効な治療法が短期間に開発されるなど、New Normalな活動が展開されました。このように、目まぐるしい社会変容が続くこれからのウィズ・ポストコロナ時代においては、柔軟な思考力を持ち、自ら考え行動できる教育研究者や医療人が求められてくるものと考えます。
これに対して香川大学は教養課程におけるDRI教育の実施により、Design thinking:イノベーションを創出する「デザイン思考」、Risk management:レジリエンスやセキュリティ等に資する「リスクマネジメント」、Informatics:デジタル社会を生きるための「インフォマティクス」の3つの能力を身につけた新たな価値を創造できる人材を育成します。続いて医学部専門課程では、高度な専門知識に加え、「奉仕の心とリーダーシップ」の2つを兼ね備える、高い倫理観と豊かな人間性を持つ将来の医療人を養成して参ります。さらに、これまで実施してきた国際化とダイバーシティーに関連する活動をより強化し、多様な価値観を理解し、尊重する自由寛大な創造意欲を持つ未来人の育成に努めます。このような人材育成は、必ずや「AIにも勝る」高度な教育研究者や医療人の養成につながり、地域を支える医療のみならず、人類の発展にも大きく寄与するものであると考えます。

【研究推進ビジョン】: ヘルスサイエンス領域における戦略的な創発研究の展開
香川大学大学院医学系研究科では医学科、看護学科、臨床心理学科の3つの学科の学術領域を融合させた独自性を持つ研究を推進して参ります。医学部キャンパスをヘルスサイエンス領域におけるイノベーション・コモンズとしての拠点として再開発することにより、本学創造工学部や農学部、あるいは産業総合研究所四国センターと異次元のコラボレーションを展開し、ヘルスサイエンス領域の新学術分野の創生を地域との共創につなげるのみならず、国際化を戦略的に強化して参ります。さらに、このような研究強化を通じ、世界レベルの創発研究を先導できる研究者の育成に推進して参る所存です。

【社会貢献推進ビジョン】:医学部附属病院と同化した地域医療活動の推進
香川大学医学部附属病院は香川県の中心的な医療拠点としての役割を果たし、地域医療に貢献しております。日々進化する医療技術に対応して高度な医療サービスを提供するだけではなく、緊急時においても迅速かつ適切な医療支援を行うことをミッションとし、日々の診療活動を続けております。一方、医学部教員の多くは附属病院で日常診療業務を行っておりますが、有事の際には医学部が独自に附属病院の医療活動をサポートすることが求められます。例えば、新型コロナウィルス感染症のパンデミックの際には行政と協力し、PCR検査体制の構築、ならびに軽症感染者専用のホテルの立ち上げなどを主導して参りました。医学部附属病院を中心とした日常の診療に加え、今後想定される南海トラフ地震などの未曾有の災害時においても、香川大学医学部は附属病院と一体となって地域医療活動のサポートを推進して参ります。

以上、香川大学医学部は、高度未来医学・医療人の育成、戦略的な創発研究の展開、地域医療活動の推進に尽力して参ります。引き続き、ご支援、ご鞭撻を賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。

香川大学医学部長  西山 成