事業の概要
若手医師の研究能力,研究データマネジメント能力を向上させることを目的に当院の臨床研究支援センター にリアルワールドデータ(RWD)研究支援部門(活用・研究管理・統計支援の3つのチームから成る) を設置します。
RWD研究支援部門には研究支援者として、大学院生・医学生をRAやSA として雇用し、若手医師が行う研究への参画を図ります。その知識・経験を元にしてRA・SAがやがて質の高い自身の研究を行えるようになり、研究能力の底上げにつながるよう目指します。これらの取り組みを通して将来も、医師の研究時間を維持した状態で、研究業績の質と量を向上させる好循環を図ります。
これらを当院の特色と位置づけ、産業界にもRWD研究に基づく優れた情報提供ができるよう推進していきます。
人材養成
香川大学ではこれまでに全学共通教育の中でデータサイエンスの基礎教育がなされ、これに加えて医学部では医薬品に関する臨床研究手法の講義を行ってきました。今回雇用するRA,SAには、更に「研究倫理」、「セキュリティ」、「個人情報保護」および「臨床研究支援」についての教育を行い、臨床研究支援に従事してもらいます。研究の過程でOn the job training教育を行うことで具体的な手法を学びます。臨床経験が乏しいSA(医学生)が、臨床研究におけるデータ処理を自立的に行うことができるように、教育支援者(北谷)が、電子カルテのデータ入力を教育し、SAがRWDの解釈をし、適切なデータ処理ができるようにします。また、学生の段階から国内外の研究機関、産業界との連携方法を経験し、幅広いネットワークを構築できることは貴重な体験となります。これらより養成されるRA,SAは将来、RWD研究を主導することが期待されます。
RWDを共有する取り組み
香川大学は現在、オープン・サイエンスの理念のもと、研究データマネジメントポリシーを策定し終わり、Data availability statmentの掲載や、レポジトリにて公開する方向を目指し、体制の整備中です。
本事業では、臨床研究データ管理環境の構築・運用を想定しています。研究実施中に、研究に必要なデータは、倫理委員会に申請済みの取得内容に基づき、収集され、適切に管理されなければなりません。そのために必要な機微情報除去やそれらを前提とした同意取得などについて妥当な運用方法を準備し、適切なデータマネジメントプラン(DMP)を作成、実施できるように支援します。
本事業で構築する環境においては、インターネット接続を制限された、医学部内のVLAN内にあるストレージとアクセス端末からのみアクセス可能とします。本学と共同研究をしている外部の大学、医療機関、企業等は、アクセス権を取得することで、この環境にアクセスし、データを共有できます。これにより、多施設共同研究を行う際に、即時的なデータ共有が実現し作業の効率化が期待できます。
活動状況
医学部学生スタッフ(SA、RA)と共に以下の臨床研究支援を開始しました。
①医療機器不具合のシグナル検出
②間質性肺疾患のアウトカムバリデーション
③小児鼠経ヘルニア手術における予防的抗菌薬の必要性に関する検討
④母指CM関節症における鎮痛剤の使用により手術治療を回避できるか
⑤SGLT-2阻害薬の腎保護効果への有効性はARB/ACE阻害薬の有無にかかわらず発現するか
⑥前立腺癌患者がアパルタミド内服して皮膚炎出現前後の好酸球増加の関係性
⑦メニエール病患者の予後(聴力、めまい発作回数)と食塩の関連性について
⑧好酸球中耳炎に関する調査
問い合わせ先
香川大学医学部附属病院臨床研究支援センター
電話番号 :087-898-5111(代表)
事務担当者:鉄村 孝江
教育支援者:北谷 裕里
教 員 :横井 英人(教授)、矢野 浩史(助教)