科研費研究の成果
【科学研究費助成事業 基盤研究(C) 25K06872, 2025年度~2028年度】
「日本型多文化心理支援評価モデルの開発」
研究開始時の研究の概要
わが国は外国人労働者の受け入れを推進しており,増加する在留外国人の心理社会的適応の課題に対応すべく,公認心理師による多文化心理支援への社会的要請が高まっている。しかし,現時点ではその教育・訓練・実践の基盤となる心理支援の評価モデルが確立されていない。
そこで本研究では,これまでの多文化コンピテンス関連研究(若手研究20K14206) の成果を発展させ,次の3点の特色をもつ多文化心理支援評価モデルを開発する。①米国の先進的な「文化的謙虚さ(多文化に触れる際の自己省察,敬意や開かれた態度)」の理論を活用,②日本固有の文化的・社会的特性を考慮したモデルを構築,③養成課程と臨床現場の両方で実用できるモデルを精緻化。
これにより,日本の多文化共生社会における心理支援の質の向上を目指す。また,本研究の成果は,人種や民族以外のさまざまな多様性の文脈に応用可能であり,国内外の心理支援における新しいモデルの構築に寄与することが期待される。
【科学研究費助成事業 若手研究 20K14206, 2020年度~2024年度】
「心理職養成における多文化カウンセリング能力訓練プログラムの開発」
研究開始時の研究の概要
1990年代以降,わが国は外国人労働力の受け入れを推進しており,平成31年4月の改正入管法の施行により今後その数がますます増加することが見込まれる。外国人労働者やその家族は心理社会的適応上のさまざまなリスクを抱え心理学的支援のニーズが高い。多文化に対応した心理学的支援を行うには,専門職に多文化カウンセリング能力(以下Multicultural Counseling Competences: MCC)が求められるが,その職能を高める訓練体制は確立されていない。
そこで本研究では,心理専門職を志望する大学生・大学院生を対象に,MCCの効果的な訓練プログラムを開発することを目的とする。
研究成果の概要
尺度作成では,これまでの先行研究で実務経験のある心理職に最適化されたMCCの測定が主だったという課題に対応して,養成課程にある学生の実態を具体的に把握できるよう,以下の方針で尺度項目を選定した。(a) 生活場面に存在する自他の文化の特徴やバイアス,文化的障壁に気づく態度を測定する,(b)地域で暮らす外国人家族,とりわけ日本の公立学校に通う外国人児童生徒を取り巻く状況に関する知識を測定する,(c) 生活場面での文化的障壁に対処するスキルを測定する。
訓練プログラムの開発では,地域に暮らす外国人と接触する実習プログラムの代替として,動画コンテンツや参加者同士のグループワークを中心としたプロトタイプを作成し,地域の支援活動のスタッフや外国人当事者,地域の外国人支援の活動や心理職養成の経験豊富な公認心理師・臨床心理士との協議を経て改変した。その結果,多文化接触への積極的態度を高める「気づき編」と地域の外国人とのコミュニケーションで重要なやさしい日本語の運用能力を中心とする「知識編」の2部構成の訓練プログラムを開発した。これまでのMCC訓練プログラムでは,実施直後に参加学生の効力感が低下するという報告があることから,学生の効力感を高める内容やファシリテーションを盛り込むよう工夫した。
成果の公表
- 谷渕 真也・村川 幸穗 (2025). 学生用多文化カウンセリング能力測定尺度の開発 日本コミュニティ心理学会第28回大会 (2025/9/19-21, 九州大学) LINK
- 谷渕 真也・村川 幸穗 (2024). 多文化カウンセリング能力訓練プログラムによる初学者の態度変化 日本コミュニティ心理学会第27回大会 (2024/10/12-13, 立正大学) LINK
- 高嶋 喜満人・谷渕 真也 (2023). 外国人生徒の進路決定の体験プロセスと教会コミュニティの心理的機能の検討 日本コミュニティ心理学会第26回大会 (2023/12/16-17, 香川大学) LINK
- 村川 幸穗・竹森 元彦・谷渕 真也 (2023). 「世界青年の船」事業の船上での異文化体験過程に関する質的検討 (その2) 日本コミュニティ心理学会第26回大会 (2023/12/16-17, 香川大学) LINK
- 村川 幸穗・竹森 元彦・谷渕 真也 (2021). 「世界青年の船」事業の船上での異文化体験過程に関する質的検討 日本コミュニティ心理学会第24回大会 (2021/9/18-19, オンライン)
開発したプログラムの内容
制作中