2026.08.05

イギリス留学って何?~ニューカッスル大学 臨床実習編~

こんにちは、香川大学医学部学生広報部です!医学部には様々な留学プログラムがあります!今回はイギリス留学の体験記として、2026年4月から6週間、イギリスのニューカッスル大学で臨床実習(クリニカル・エレクティブ)を経験した医学科6年の三谷 征さんにインタビューしてきました!神経内科と感染症科の2科をまわり、英語での初診取りから高度隔離ユニットの見学まで、日本ではなかなか得られない経験を積んで帰ってきた三谷さん。準備の苦労から現地でのリアルな日々まで、等身大の言葉で語ってもらいました。

インタビューに応じる三谷さん

三谷 征
所属:医学科6年
出身:香川県高松市
部活動:バスケットボール部(元キャプテン)
学食の好きなメニュー:鶏天まぜそば

今回参加したイギリス留学について教えて下さい

臨床実習(クリニカル・エレクティブ)の形式で、4月の第1週から5月の第3週まで、計6週間です。その間に2クール、2つの診療科をまわりました。1クール目が神経内科、2クール目が感染症科でした。香川大学からは私を含めて4人が参加しています。

何故、留学先としてニューカッスル大学を選んだのですか?

正直に言うと、大学名で選んだというより「イギリスに行きたい」という気持ちが先にありました。
イギリスは応募のハードルが高いぶん、そこを狙って準備しておけば、結果的に他の候補にも手が届きます。逆に、最初から条件のゆるい国を目標にしてしまうと、あとからイギリスに切り替えることはできません。だったら一番高いところを狙おう、と。書類の準備はかなり面倒でしたが、それだけの価値があると思って出願しました。

留学を決めたきっかけとタイミングを教えて下さい

「イギリスに行きたい」と思っていたのは1年生の頃からです。英語そのものに興味を持ち始めたのは、ブルネイ留学に行く前あたりでした。
ただ、本格的に動き出したのは4年生になってから。IELTSを本気で取りに行こうと決めて勉強を始めたのは、出願の2〜3か月前、夏頃のことです。今振り返ると、正直これでは遅かったと思っています。

出願や準備で大変だったことは何ですか?

まずIELTSです。香川では受験できず、大阪まで何度も足を運ばなければなりませんでした。前年に受けたぶんも含めると、合計4回受験しています。
もう一つは費用面です。ちょうどポンドが対円で一番高い時期に重なってしまい、1年前と比べて30円ほど上がっていました。留学費用そのものが高いところに為替が追い打ちをかけた形です。親にもきちんと説明して、理解してもらったうえで送り出してもらいました。

医学科の実習スケジュールと留学準備をどう両立させましたか?

これが一番大変でした。臨床実習をこなしながら英語の勉強もしなければならず、そのバランスの取り方には最後まで苦労しました。
それに加えて、6年生にとって4月・5月は病院見学のシーズンです。その2か月を丸ごと空けることになるので、見学の予定が組めない。6月に詰め込もうとしても、なかなか難しいのが実情でした。
イギリスからだと、日本の就職活動の状況が見えにくくなるという問題もあります。現地で他大学の学生と話す機会があったのですが、「留学中で履歴書が出せない」「海外から書類を送ってほしいと言われた」という話をしていて、同じ悩みを抱えているんだなと感じました。
だからこそ、私は4年生の時期から病院見学には行くようにしていました。留学を考えている人は、見学のスケジュールを前倒しで組んでおくことを強くおすすめします。

事前に準備しておいてよかったことは何ですか?

医療英単語の暗記です。4年生のときに参加したブルネイ留学の前に、安田先生が医療英単語のプリントを配ってくださっていて、それをひと通りやっておきました。これが現地で本当に効きました。
というのも、実習中は基本的に「立っているだけ」の時間が長いんです。そのときに先生が発した単語が一つでも拾えると、「あ、今は痛風の話をしているんだな」と文脈が掴める。逆に単語を知らないと、何の話をしているのかすら分かりません。一緒に行った学生の中には、現地に着いてからノートに単語を書いて覚えようとしている人もいましたが、それでは遅すぎると感じました。時間も限られていますし、単語だけは日本にいるうちに詰め込んでおくべきです。

逆に、もっとやっておけばよかったことはありますか?

リスニングです。これに尽きます。
イギリス英語特有のイントネーションとスピードが本当に手強くて、最初はまったく聞き取れませんでした。IELTSのスコアは6.5だったのですが、リスニングは8点を取るくらいの勢いで対策しておくべきだったと痛感しています。IELTSのリスニング素材はイギリス英語なので、あれを徹底的にやり込んでおけばよかった。
上級医と研修医が交わす議論に、いきなりついていくのは本当に難しいです。逆にスピーキングは、極端に言えば何とかなります。どんなに拙い英語でも、向こうは理解しようと耳を傾けてくれるので。優先順位をつけるなら、間違いなくリスニングが先です。

ニューカッスル大学ではどのような実習を受けましたか?(神経内科)

神経内科は、朝のカンファレンスと外来が中心でした。外来は基本的に聞いているだけでもよいのですが、患者さんと話したり、指導医に質問したりできるので、英語に慣れるという意味でもありがたい環境でした。
一番よかったのは、神経診察と初診取りを任せてもらえたことです。OSCEで練習したあの流れを、実際の患者さんに対して英語でやらせてもらえる。1日に5〜6人は初診を担当していました。先生が横についているわけではなく、基本的には任せきりです。診察して「ここの筋力が落ちています」といった所見を報告すると、先生も「その通りだね」と返してくれる。英語は多少雑でも構わないから、とにかく自分で初診を取ってみる――これは本当に力になりました。日本語でならいくらでもできることを英語でやる、というのが貴重なんです。
イギリスは神経内科の患者さんが多く、中でも多発性硬化症(MS)が非常に多いんです。専門外来があって、時間的多発・空間的多発という典型的な経過をたどる症例や、全身にさまざまな症状が出ている患者さんを数多く見ることができました。指導医の先生はとても丁寧で、1日のスケジュールもきちんと組んでくださいましたし、ほぼマンツーマンで見ていただきました。

感染症科での実習はいかがでしたか?

こちらは受け入れ責任者(スーパーバイザー)が感染症の先生だったので、必修のような扱いでした。もう1科は自由に選べる仕組みです。
感染症科の実習は、とにかく回診でした。それも、朝9時から13時頃まで、4時間かけての回診です。日本の回診だと、「大丈夫ですか」「今日はどうですか」「食べられていますか」で一人1分もかからずに次のベッドへ、という感じですよね。イギリスの感染症科は、外来で治療するのではなく重症の患者さんを入院させて診るスタイルなので、回診がそのまま診療の場になっているんです。一人ひとりの状態を確認し、治療方針を検討していく。「回診が本当に回診をしている」という感覚でした。
実習生としては、4時間ずっと立ちっぱなしなのでしんどい面もあります。ただ、重症の感染症をこれだけまとめて見られる機会はそうそうないので、内容としては非常に濃かったです。時間管理には厳格で、そのぶん学生教育への熱量も高い科でした。

留学で一番印象に残った経験を教えて下さい

ちょうど滞在中、ハンタウイルスが話題になっていた時期でした。その対応にあたる、高度隔離ユニット(バイオハザードユニット)のシミュレーションを見学させてもらったんです。
完全防護服を着たスタッフが、密閉された搬送台で患者さんを運び込み、隔離された治療室へ移す。ベッド全体がテント状の陰圧空間で覆われていて、側面に取り付けられた防護スーツの腕部分から、中に入ることなく処置ができるようになっています。その一連の流れを見せてもらいました。日本の大学病院ではまず見られない設備ですし、イギリスでも数が多いわけではないはずです。これが今回の留学で最も強く印象に残った光景でした。

留学中の1日の過ごし方について教えて下さい

7時頃に起きて、寮の共用キッチンで朝食を済ませ、徒歩15分ほどかけて病院へ向かいます。9時から病棟でのカンファレンス。午前は外来見学か、病棟で研修医に帯同していました。腰椎穿刺や髄液検査にも同席させてもらえます。
昼は院内のカフェでランチ休憩。会計はすべてキャッシュレスでした。午後は外来か、シアタールームのような大きな講堂で開かれる症例カンファレンスに出ます。終わるのは早い日で14時、遅い日で16〜17時。午前で終わる日もありました。
夕方は歩いて寮へ帰り、途中で街に寄って買い物をすることもあります。夜はキャンパス内のジムで筋トレをするか、大学の図書館で就職活動の準備や勉強をしていました。図書館は4階建てでとてもきれいで、24時間開放されているんです。学生証をかざせば入れて、飲み物の持ち込みも可、ブース席も各階にあります。深夜1時から5時まで勉強していることもありました。

英語でのコミュニケーションで苦労したことはありますか?

とにかくスピードとイントネーションです。こちらが留学生だと分かると多少は配慮してくれるのですが、それでも難しい。聞き取るのも大変ですし、あの速度の会話に自分の意見を差し込むのはまず無理でした。
しかも今回は、同じ科をまわる現地の学生がいなかったんです。カジュアルな雑談をする相手が一人もいない。カンファレンスでも、学生が自分から発言する場面はほとんどなく、「学生さん、これ分かる?」と指名されて初めて話せる、という環境でした。話を振られない限り会話が生まれない――「コミュニケーションを取る場所そのものがない」というのが、イギリスでの一番の難しさだったと思います。

それをどう乗り越えましたか?

神経内科の外来で見つけた方法があります。患者さん一人の診察が終わるたびに、指導医が「何か質問は?」と聞いてくれるんです。そこで毎回必ず一つ質問を返すことを自分に課しました。
内容は何でもいい。極端な話、30分間ずっとパーキンソン病の話をしていて答えが分かりきっていても、「この患者さんはパーキンソン病ですよね?」と聞くんです。質問のレベルとしては大したことがなくても、先生は必ずもう一度要約して説明し直してくれる。すると、自分が聞き取れていなかった部分の復習になると同時に、英語でやりとりをしたという実感も残ります。流されてしまうこともありますが、この習慣は本当に大きかったです。

現地の医療現場を見て、日本との違いを感じた点を教えて下さい

まずNHS(国民保健サービス)の存在が大きいです。全国民が無料で医療を受けられる制度なので、そのぶん社会保険料は非常に高い。医師の側に「利益を上げる」「たくさんさばく」という発想がほとんどありません。
その裏返しとして、患者さんの無断キャンセルが非常に多いんです。予約していても普通に来ない。2人に1人が来院しなかった日もありました。無料である以上、避けがたい問題なのだろうと思います。
外来のペースもまったく違いました。日本だと大学病院でも、午前中に10人から15人は診ますよね。イギリスの神経内科は1日かけて5〜6人。一人あたり30分以上かけていました。そのぶん患者さんの話をじっくり聞きますし、医療の話だけでなく日常の話もします。そして全員の診察が終わったあと、先生が一人で10分ほど、音声入力アプリに向かってその日のサマリーを吹き込むんです。それを後から我々学生も聞けるので、「さっきのやりとりはこういう意味だったのか」と復習できる。これは本当に役に立ちました。
働く側から見ても、「早く終わらせなければ」という焦りがない。みんなコーヒーを飲みながら、ゆったりと診療している。そこは日本と大きく違うところだと感じました。

現地の生活・住居面はどうでしたか?

住環境そのものには満足していました。個室はビジネスホテルの一室くらいの広さがあって、扉を開けるとリビングと共用キッチンがあり、そこに5部屋ほどがつながっている造りです。清掃サービスも入るので水回りもきれいでした。男女混合フロアでしたが、個室は独立しているので特に問題はありません。
ただ、寮の割り当てには課題を感じました。留学生・スタッフ向けの寮に入ることになり、現地の学生が住む寮とは離れた場所だったんです。街や病院までは徒歩15分以上かかりますし、何より現地学生と自然に知り合う機会がほとんどなくなってしまいました。事前にかなり交渉したのですが、「そこしか入れません」という回答でした。前年までは選べたようで、実際に去年行った先輩たちはバラバラの寮に入っていたと聞いています。ここは年度によって変わる部分なので、これから行く後輩には、応募の段階で寮の条件を必ず確認してほしいと思います。街の中心部の寮に入れていたら、現地学生との交流という点でまったく違う留学になっていたはずです。

生活面で気づいたことはありますか?

イギリスは完全にキャッシュレスでした。現金は一度も使いませんでした。日本円を持っていって必要なら両替しようと思っていたのですが、その必要すらなかったです。ただ、友人同士で立て替えをする場面が多いなら、現金があったほうが精算は楽かもしれません。私たちは日本に帰ってからまとめて清算しました。
物価は高く、ポンド高も重なって費用の負担は大きかったです。

休日の過ごし方や、印象に残っている観光体験を教えて下さい

ハリー・ポッターのロケ地巡りには行きました。ダラム大聖堂の回廊は映画の撮影にも使われた場所で、イギリスにはこうしたロケ地がたくさんあるので、好きな人にはたまらないと思います。
あとはサッカーです。ニューカッスル・ユナイテッドが強い時期でしたし、プレミアリーグの試合を観に行きました。ブライトン戦では三笘薫選手のプレーも観ることができて、しかもその次の試合から欠場になったので、ぎりぎり間に合った形でした。
平日はジムで筋トレをして、図書館で就職活動の準備をする、という生活が中心でしたね。

カルチャーショックを感じた出来事はありましたか?

意外と少なかったです。物価の高さくらいでしょうか。
むしろ、イギリスの人は日本人と似ているところが多いと感じました。挨拶や礼儀を大切にしますし、相手との距離の取り方も丁寧です。初対面からいきなり打ち解けるというよりは、時間をかけて少しずつ関係を築いていく。そのペース感が日本に近いなと思いました。

現地で仲良くなった人はいましたか?

正直に言うと、友人づくりには苦労しました。実習中は現地の学生がおらず、寮も留学生向けだったので、出会いの機会自体が少なかったんです。
その中で唯一つながれたのが、ジムで知り合った学生です。一緒にバスケをしたり筋トレをしたりして、インスタグラムも交換しました。実習以外の場所で自分から動いてつくれた関係だったので、いい刺激になりました。
指導医の先生方とは、業務的なやりとりが中心でしたが、おすすめの観光地やパブを教えてくださる方もいました。感染症科の教授がバーに連れて行ってくださったこともあります。

留学を通じて、自分の中で一番変わったと思うことは何ですか?

人のサポートなしで動けるようになったことだと思います。
これまでに参加した留学プログラムでは、現地に友人がたくさんできて、周りが向こうから積極的に関わってきてくれる環境でした。用意されたスケジュールに乗っていれば、それだけで濃い時間が過ごせたんです。
今回はまったく逆でした。誰も声をかけてくれない。実習が終わったあとの時間をどう使うか、休日に何をするか、すべて自分で決めて自分で動かないと、ただ無駄に過ぎていってしまう。一人で実習に行き、一人で勉強し、一人で生活する。自分から声をかけに行き、自分でスケジュールを組み立てるということを、6週間ずっとやり続けました。
友人がたくさんできたかと言われれば、そうではありません。でも、ジムで話しかけてみたり、いろいろ試行錯誤した時期ではあった。その意味では、少し大人になれたのかなと思います。

今回の留学の経験を今後にどう活かしたいですか?

まず初期研修先を選ぶうえでは、この留学経験は間違いなく武器になります。他大学では留学に行く学生が珍しくないので、香川大学の学生としては差別化できる要素の一つになると思います。
もう少し先の話をすると、専門医を取ったあとに大学院留学をしたり、海外で働いたりという道も選択肢としてあります。今回の経験で、そのために何が必要なのかが具体的に見えたのが大きい。英語力はもちろんですが、それだけでは足りません。専門知識も要るし、何より自分からどんどん入っていく積極性がないと、欧米の医療現場ではやっていけないと痛感しました。
次に行くならもっと準備が必要だ、と分かった。それを学生のうちに知れたのは大きいです。もし学生時代に一度も行かずに、医師になってから初めて海外に出ていたら、大人になってからつまずくことになる。それはかなり勇気の要ることですよね。6年生の段階でつまずけたこと自体が収穫だったと思っています。

未来の後輩に向けて一言お願いします。

段階を踏むことをおすすめします。
まず低学年のうちに、ブルネイ留学に行ってみてください。あそこはとてもフレンドリーな環境なので、「海外で挑戦する」という感覚を掴むには最適です。まずはそこがファーストステップ。そこで英語に興味を持てたら、次はIELTSに挑戦してみてください。就職活動でも使えますし、英語力そのものを上げることにも意味があります。そのうえで、ぜひイギリスに挑戦してほしい。
ただ一つだけ言っておくと、イギリスは何かを与えてもらえる場所ではありません。「自分でどうにかするんだ」という気持ちを持って行けば、間違いなく実りのある時間になります。過度に期待せず、覚悟を持って臨んでほしいですね。
準備として特に大事なのは、繰り返しになりますが医療英単語の暗記と、IELTSリスニングの徹底的なトレーニング(目標は8点レベル)。この2つです。

最後に、今回の留学を一言で表すと?

「新しい経験」でしょうか。
これまでの留学は、良くも悪くも用意されたプランに乗るものでした。今回は全部自分で組み立てるところから始まった。しんどさの種類がまったく違いましたし、だからこそ一番新しい経験ができたと思っています。

編集後記:三谷君とは一緒に2年前にブルネイに行った仲ですが、メンバーの中で一番英語力が高かった彼でも聞き取れない会話があるというのは、イギリス英語のハードルの高さを知りました。自分も留学には興味があるので、英語力を磨かなければならないなと感じました。お忙しい中、インタビューを受けて頂きありがとうございました。(インタビュワー:医学科4年 荻田)

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