2024.11.29

星川先生の研究 希少糖の可能性

こんにちは!医学部学生広報部です! 今回は星川先生の行われている研究について伺ってきました。 それでは星川先生、よろしくお願いします!

名前:星川広史
所属:香川大学医学部耳鼻咽喉科•頭頸部外科 教授
出身:香川県高松市
高校:高松高校
大学:香川医科大学(現 香川大学医学部)

医学部卒業後、現在の研究に至るまでの経緯を教えてください

星川先生(以下敬称略)
「卒業後、医局に入るまでについては前回お話しましたので、その後の話をしますね。
2002年頃、香川大学にPETという特殊な検査ができる機器が導入されました。

現在教授をしている放射線の西山先生が同級生で、当時PETの担当でしたので、お願いをして一緒に頭頸部癌に関するPET検査の臨床研究を始めました。同じ頃、基礎的な研究も何かできないかと思っていたのですが、ちょうど知的クラスター創成事業の一つとして香川大学は希少糖の研究が当たっていました。希少糖がどうも癌に効果があるのではないかということが明らかにありつつあったので、頭頸部癌にも効果があるのではないかと調べ始めました。偶然ですが、臨床研究も基礎研究も糖の代謝に関わる研究をすることになりました。」

代謝と癌の関わりについて教えてください

星川
「がん細胞は正常の細胞に比べて増殖がはやく、様々な代謝が正常の細胞と異なります。特にがん細胞は正常の細胞に比べてグルコースの代謝が非常に亢進しているのです。

どのようにがん細胞と正常の細胞で代謝が異なるのか説明しますね。
正常の細胞はグルコースを取り込み、酸素を利用してミトコンドリアでエネルギー(ATP)を生成します。一方、がん細胞は酸素をあまり使わず、わずかなATPしか作りません。(ワールブルグ効果)そのため、がん細胞は大量のグルコースを取り込んでエネルギーを得ています。つまり糖の代謝が盛んなのです。」

PET検査とはどのような検査ですか

星川
「先ほど説明した特殊ながん細胞の代謝を利用して、何か診断できないかとして使われているのがPET検査になります。
PETとは、Positron Emission Tomography=陽電子放出断層撮影の略であり、核種から放出(Emission)された陽電子(Positoron)が近くの電子にぶつかった時に出るガンマ線を検出して画像化する検査になります。

つまり、陽電子を放出する核種をグルコースに引っ付けて、体内に投与して画像化することにより、グルコースがたくさん存在する場所が分かるようになります。この部分におそらく何か癌があるだろう、と推測するのがこの検査になります。」

PET検査では癌の位置が分かるのでしょうか

星川
「当初のPET検査は、癌の診断が主な目的でした。
しかし、今度はPET検査で治療効果を判定できないかと調べてみることになりました。
通常はCTやMRIといった画像検査で、治療した後に癌が小さくなったとか消えてしまったっていうのを判断します。ただし、形は残っていても実はがん細胞は死んでしまっているということも起こり得るのです。
これはCTやMRIでは分からないので、PET検査によってがん細胞が生きているかどうかを判定するのです。実際に確認すると、画像上は形が残っているように見えても、実際は治っていることをPET検査で調べることができるようになりました。」

PET検査の利点は何ですか

星川
「治療効果の目安として、一定の数値(カットライン)を設定することにより、治り具合を知ることができます。例えば、PET検査により放射線治療の治療効果が高い確率で分かるようになったので、治療効果が高そうな例には手術をせずに様子を見る、つまり不要な手術をしなくて良くなるといった利点があります。」

治療効果の判定に関する研究はどのように進んだのでしょうか

星川
「治療効果を予想する、つまりこの癌だったら治療が十分にきくな、あるいはこれなら治りにくいな、みたいな治療効果が事前に予想できないかと考えました。

腫瘍のボリューム、というものをPET検査で数値化できるようになりました。
ブドウ糖代謝を評価するFDG-PETと核酸の代謝を評価するPET検査の二つを用いて、治療効果を判定、治療効果の予想を試みました。
すると、ブドウ糖であれ核酸であれ、その治療前のボリュームが1定以上大きいと、やはり治療効果が悪くなる。一定以上より小さいと治りやすい、という目安になることが分かりました。

そのため、手術や放射線治療の前にPET検査でボリュームを測定することで「良い確率で治るんじゃないかな」とか「追加で治療すべきじゃないかな」といったことがある程度分かるようになりました。」

がん治療の研究はどのように進んでいますか

星川
「癌ではブドウ糖の代謝が亢進しているので、ブドウ糖の代謝を抑制すれば癌が抑えられるのではないかと以前から考えられており、たくさん研究が行われてきました。

研究で着目されているものの1つに2-デオキシグルコースがあります。
2-デオキシグルコースというお薬はグルコースと同じように細胞の中に取り込まれます。そして、元々のグルコースが取り込まれるのを邪魔する効果があります。つまり、癌の増殖を抑えることができるのです。

もう一つはメトホルミンという糖尿病のお薬も癌を抑える働きがあるのではないかと言われて、昔から研究が行われてきました。しかし、今も継続的に研究がされているのですが、実際に患者さんに臨床研究をやってみると決定的な効果があるというような結果が出ていません。
ここで、希少糖です。香川大学は大学全体で希少糖の研究を進めています。」

希少糖とはなんですか?

星川
「希少糖は、自然にはあまり存在しないのでそのように呼ばれています。
糖にもいろいろあります。1番有名なのはグルコースですね。他にもガラクトースとか、本当に様々ありますが、自然界にあまりない希少糖と呼ばれる糖が4,50種類ほどあると言われています。

自然界にあまりないために研究をするのが難しかったのですが、香川大学農学部の先生が、たまたま大学の敷地内から見つけた微生物が、フルクトースをアルロースという希少糖に変える酵素を持っていることを見つけました。先生はあらゆる希少糖をグルコースから作ることができるという設計図を作り、それを元にいろいろな希少糖を量産することができるようになりました。そのため、香川大学では希少糖の研究が発展しました。」

希少糖の効果について教えてください

星川
「いろいろな作用がありますが、機能性表示食品という風に実際に販売されているのがレアシュガースイートですね。アルロースという希少糖が入っているのですが、このアルロースは生活習慣病、内臓脂肪を抑える、血糖値を抑えるといった機能がありまして、ブドウ糖の代替で使用することで健康に良いということで商品化もされています。」

医療分野での希少糖の可能性について教えてください

星川
「希少糖の中でも、D-アロースが癌に効きそうであると分かっています。
最初は肝臓の癌にアロースを振りかけると効果があることを生理学の先生が見つけ、そのメカニズムも明らかになりました。

耳鼻咽喉科では、頭頸部の扁平上皮癌の細胞に振りかけると効果がありそうだということが分かりました。調べていくと、D-アロースにより癌の抑制遺伝子からできるタンパク質が増えて、これが抗がん作用のメカニズムの1つではないかと考えられています。また、D-アロースの投与と放射線治療を併用してみると、効果が増強されることも分かりました。さらに、ネズミさんを用いての生体モデルでも効果があることを世界で初めて実証しました。」

今後の希少糖研究の展望を教えてください

今後の希少糖研究の展望を教えてください。」
星川
「希少糖の効果は口から、つまり薬として飲んでも効果があるかもしれないと分かっています。みかんの半分くらいの量のお砂糖を摂取すると、癌を抑える効果があるかもしれないと言われています。

ですが、実際に薬として使うためには実際に人に対して効果があるかどうかを検証する必要があります。そのためには、医薬品として用いるだけの質が高く安全であることが担保できるような製剤化をする必要があります。今、製薬メーカーとタイアップして製剤化を行っています。

さらに泌尿器科の先生が人に投与する前の安全試験、非臨床試験ができることになりました。そのため、これからは安全試験から始まって、うまくいくと人に投与するという臨床試験に進んでいき、薬に承認されて使えるようになるかもしれません。ですが、順調に行っても10年とかそれ以上かかると思われます。これからも糖代謝に関する研究を進めていきます」

いかがでしたでしょうか?
香川大学が力を入れて取り組んでいる希少糖の研究は、生活習慣病やがん治療に新たな可能性を見出しています
以上で、星川先生へのインタビューは終了です。星川先生、ありがとうございました!!

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