ごあいさつ

中村祐 教授
中村祐 教授

 皆さま、こんにちは。この度、ゲーム症外来を開設することになりました。これは、一つに社会で喫緊の課題となりつつあるからです。学生時代、私は、コンピューターに嵌っていました。有志を募って、大阪大学医学部パーソナルコンピュータユーザーズクラブ(Osaka university Medical school Personal Computer User’s Club, OMPUC) を結成し、主務をしておりました。SharpのMZ80から始まり、PC-8001,PC-8801を使っていました。当時は、新言語の黎明期で、私が書ける言語は、Basic, Fortran, Pascal, 8bitアセンブラ、Lisp、Prolog, C言語(当時はC++ではありません)でした。また、ある総合病院産婦人科の研究発表を手伝っていました。私の得意分野はデータベースで、当時はエクセルがなかったのでdBaseIIというデータベースソフトを用いて、約1万件の出産情報の解析を行いました。その時作成したのが、次の二つのブルースライドです。出産までの時間(昭和50年と58年の比較)をグラフにしたものです。また、クラブ活動では、血管内を旅するRPGの作成を目指しましたが、描画速度が遅く、残念ながら断念した経緯があります。当時(1980年代後半)は、コンピューター言語の発達が著しく、この世界で生きていくのは難しいと感じ、その対極である精神科医を目指したわけです。

 コロナ禍と同時に、5Gへの変革が現在起きています。この二つの要因により、インターネット環境が急変しています。4Gから5Gへの通信速度の変革により、全てのインターネット通信速度の劇的な上昇が見込まれます。これにより、オンラインゲームがより魅力的になりそうです。また、最近のオンラインゲームは、SNSと密接に関係し、より魅力的なものに進化しています。これらの要因から、オンラインゲームは、今までになかったレベルで、人を惹きつけ、「ゲーム症」を引き起こすと考えます。また、令和2年8月には、香川県ネット・ゲーム依存回復プログラム作成ワーキンググループから委嘱され、香川県ネット・ゲーム依存回復プログラム(i Swing)の作成にかかわりました。そこで、私達は、ゲーム症外来を立ち上げ、将来に寄与したいと考えています。

 私は2005年7月から精神神経医学講座教授に就任させて頂きました。当教室は、認知症から児童・思春期(摂食障害を含む、2014年4月より子どもと家族・こころの診療部を当科で運営することとなりました)、睡眠障害、緩和ケアなど、全ての精神科の領域をカバーして教育・診療を行っています。また、2020年12月には、臨床心理学科教授(兼任)を拝命し、公認心理師の育成にも参加いたします。香川県において、精神科医療の全ての分野の診療を行うとともに、合併症のある場合にも積極的に対応しており、今後もゲーム症を含めて、香川県における精神科医療全般を担っていく所存です。