専門外来別の診療曜日
香川大学医学部附属病院整形外科 外来診察表
腫瘍
整形外科では、頚部より下の四肢や体幹に発生した骨軟部腫瘍の診療を行っています。骨軟部腫瘍とは、骨および軟部組織(筋肉、脂肪、神経、血管など)にできる腫瘍のことを言います。骨軟部腫瘍は、原発性のものと転移性のものに分類され、原発性骨軟部腫瘍は、細胞の性質により良性と悪性に分類されます。悪性のものは肉腫と呼ばれ、進行すると致命的となります。転移性腫瘍は、他の臓器にできた癌が骨などに転移したものを言います。骨軟部肉腫は内臓などに発生する他の癌に比べて非常に希少な疾患であり、尚且つ数多くの種類が存在します。骨軟部腫瘍の診療に関しては、整形外科の中でも特に高い専門知識を要するため、非専門施設で診断がつかずに長期間経過している場合や、不適切な治療が行われている場合があります。当科では正しい手順で迅速に診断および治療が行える診療体系を構築しています。
悪性骨腫瘍
若年者に多い骨肉腫、ユーイング肉腫や成人以降に発生しやすい軟骨肉腫などがあります。病気の種類や進行度により、手術、化学療法、放射線治療などを組み合わせた集学的治療を行います。手術では、腫瘍を確実に切除し病気を根治する事を最優先に考えますが、可能な限り切断はせずに患肢の温存を目指します。また、骨の切除によって生じる機能損失に対しても、できる限りの機能再建を目指します。骨腫瘍切除後の再建方法として、腫瘍用の人工関節を用いた再建や放射線処理自家骨移植による再建などを行っています。放射線処理自家骨移植は、摘出した骨腫瘍に放射線を照射し腫瘍細胞を殺傷後、骨を戻して再建する方法です。発生部位などの条件により使用できない場合もありますが、自身の骨を温存できるメリットがあります。
大腿骨に発生した骨肉腫に対する腫瘍用人工関節による再建。
橈骨に発生した骨肉腫に対する放射線処理自家骨による再建。
良性骨腫瘍、腫瘍類似疾患
痛みや機能障害の原因となっているもの、骨折の危険性があるものなどに対しては手術治療を行います。骨より隆起している腫瘍に対して切除術を行ったり、骨の中にできている腫瘍に対して病巣を掻き出す掻爬術を行ったりします。
大腿骨に発生した骨軟骨腫に対する切除術。
中手骨に発生した内軟骨腫に対する病巣掻爬、人工骨充填術。
悪性軟部腫瘍
悪性軟部腫瘍は成人以降に発生することが多く、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、未分化多型肉腫などの様々な種類があります。MRIなどの画像検査で悪性軟部腫瘍が疑われる場合は、迅速に生検を行い、診断を確定します。治療は、局所に対しては手術が第一選択となります。悪性骨腫瘍の場合と同様に、腫瘍を確実に切除し病気を根治する事を最優先に考えますが、できる限り切断はせずに患肢の温存を目指します。腫瘍切除により組織の欠損が生じる場合には、皮弁による再建を行っています。また、進行度によっては化学療法や放射線療法による集学的治療を行っており、転移が生じている場合でも近年承認された抗がん剤などを使用し積極的な治療を行っています。
大腿部に発生した悪性軟部腫瘍(滑膜肉腫)
良性軟部腫瘍、腫瘍類似疾患
軟部腫瘍は良性・悪性を合わせると100種類以上あり、MRIなどの画像検査だけでは診断が難しい場合があります。必要であれば生検により確定診断を行います。痛みやしびれ、機能障害などの原因となっている場合は手術を行います。手術は機能面や整容面の損失ができる限り生じないように留意し行っています。
上腕部に発生した良性軟部腫瘍(筋肉内脂肪腫)
転移性骨腫瘍
癌の骨転移による疼痛、病的骨折、脊髄麻痺などの症状により、生活の質(QOL)が著しく低下することがあります。近年の癌治療法の進歩により、骨転移が生じても長期間の生存が期待できる患者さんが多数いらっしゃいます。そのため、全身の状態を考慮し、可能であればQOLの維持・向上のために人工関節や髄内釘などを用いた手術を行っています。
骨粗鬆症
- 骨粗鬆症
- 骨代謝疾患
- 対象疾患
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- 骨代謝性疾患
- 骨粗鬆症、骨軟化症、副甲状腺機能亢進症、腎性骨異栄養症、骨Paget病など
- 骨系統疾患
- 骨形成不全症、軟骨無形成症、脊椎骨端異形成症、大理石骨病など
- 主な検査
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- 画像検査(単純X線、骨密度検査、骨シンチグラム、MRI)
- 血液検査(内分泌検査、骨代謝マーカー)
- 運動機能検査(重心動揺計、筋力測定、生活体力測定)
- 栄養調査、QOL調査など
- 主な治療
- 生活指導、運動療法、薬物療法、低周波振動板運動療法
全国的にも専門性が高く、当科で特に力を入れている分野の一つで、骨粗鬆症を中心とする骨代謝疾患の専門外来を開設しています。骨粗鬆症の診断には通常レントゲンだけでなく骨密度測定、一般血液検査、骨代謝マーカー、栄養調査、生活体力測定を用いて総合的に判断します。骨密度測定も末端の一カ所だけでなく腰椎、大腿骨頸部、前腕骨、全身などの複数の部位を測定しています。骨粗鬆症が心配な方、骨粗鬆症健診などで異常を指摘された方の精密検査を行います。骨粗鬆症の合併症で骨折をすでに起こした方の治療だけでなく骨折のない方の生活指導、予防治療にも力を入れています。その他、上記にあげた骨代謝疾患や骨系統疾患の診断、治療についてもお気軽にご相談ください。
股関節
- 対象疾患
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- 成人 : 変形性股関節症、特発性大腿骨頭壊死、関節リウマチ、股関節唇損傷、FAI(Femoroacetabular impingement,大腿骨寛骨臼インピンジメント)、ほか
- 小児 : 先天性股関節脱臼、大腿骨頭すべり症、ペルテス病、単純性股関節炎、ほか
- 主な検査
- 各種画像検査(単純X線写真、CT、MRI、シンチグラム、関節造影検査)、骨密度検査
- 主な治療
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- 保存療法(生活指導、運動療法、装具療法等)
- 手術療法(関節温存手術、人工関節置換術(THA)、股関節鏡視下手術)
股関節は体の中心にある最も大きな関節で、歩行などの日常生活の動作で重要な役割を果たしています。股関節が悪くなると、股関節の痛みに加え、歩行に支障を生じることになります。特に高齢者の方では著しい歩行障害を来します。
上記のような疾患に対し、外来では股関節疾患の診断と保存療法の指導を、入院では手術治療を行っています。
【変形性股関節症】もっとも多い疾患
股関節の軟骨が磨り減り、関節が壊れていく病気です。日本人の女性は、生まれつき股関節の低形成である臼蓋形成不全を有することが比較的多く、これが変形性股関節症の主な原因となります。下のレントゲン写真のように徐々に股関節の破壊、亜脱臼が進み、著しい股関節痛と歩行障害を生じることがあります。
【Femoroacetabular impingement(FAI):大腿骨寛骨臼インピンジメント】
【股関節唇損傷】
最近、股関節におけるスポーツ損傷として、股関節唇損傷が注目されるようになってきています。股関節唇は股関節の安定性や軟骨への力学的ストレスの分散に重要な組織ですが、これが損傷すると痛みや可動域制限を引き起こします。また長期的には変形性股関節症へと進行することもあります。
またFAIとは、骨盤や大腿骨の骨形態異常から股関節運動において骨どうしの異常な衝突(インピンジメント)が引き起こされ、それにより股関節唇や軟骨の損傷が引き起こされる病態で、一次性変形性股関節症の一因と位置づけられています。
当院ではこれらに対して鏡視下関節唇修復術や、骨軟骨形成術を行い治療しています。
I 保存療法
- 生活指導 (痛みをコントロールしながら活動的な日常の生活ができる工夫について指導)
- 運動療法 (筋力強化、ストレッチング)
- 装具 (サポーター、杖、補高靴など)
- 薬物療法
II 手術療法
当院では患者様の年齢や活動性、生活様式、骨形態や骨質などに合わせて、手術方法や、人工股関節置換術においてはその使用機種などを決定しています。
- 関節温存手術:自分の関節を残したまま治療する方法です。骨盤・大腿骨の骨切り術や筋解離術があります(入院期間2~3ヵ月)。
- 人工股関節置換術:傷んだ股関節を人工の関節に置き換える手術です。(入院期間2~3週間)。
- 股関節鏡視下手術:直径約5mmの内視鏡を用いて、小さな手術創で行う手術です。股関節唇損傷やFAIなどに適応があります(入院期間1週間~2ヶ月)。
関節温存手術;寛骨臼回転骨切り術(RAO)
人工股関節置換術(THA)
当院の手術療法の特徴
- 早期退院を目指します:人工股関節置換の手術を受ける場合、退院までのスケジュール(クリニカルパス)に沿って術前・術後管理を行います。早期リハビリテーションを導入し、手術の翌朝よりで立位練習を開始し、2-3週間で自宅退院が可能です。
- 輸血をしない手術を目指します:手術中の自己血回収システムを使用しています。人工股関節置換術では、手術前に貧血のない患者様は基本的には同種血輸血(献血による他人からの輸血)は不要です。出血が多くなると予想される骨切り術などにおいては、手術前に自分の血液を貯めて(貯血式自己血輸血)、手術の際の同種血輸血を回避するよう努めています。
- 体の負担の少ない手術を目指します:極力小さい皮膚切開で、筋肉や靭帯組織へのダメージを最小限にできる最小襲手術(MIS:Minimum Invasive Surgery)を行っています。
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仰臥位前方アプローチの人工股関節置換術:術後の痛みが少なく筋力回復が早い、また重大な合併症である脱臼のリスクも大幅に軽減できる手術方法です。香川県内でこの方法を取り入れている施設は非常に少ないものの、当院では2011年より導入し十分な臨床実績があります。
※股関節の解剖と、手術進入路(アプローチ)
- 前方アプローチは、大腿筋膜張筋と縫工筋の間から、筋肉を全く切らずに、左右に避けて股関節に到達する進入法です。極めて低侵襲に行え、また術後脱臼のリスクも低い手術方法ですが、例えば変形が極めて高度な場合など、適応が難しいこともあります。
- 後方アプローチは、大臀筋を切って、また深部の短外旋筋群を切離して行う、人工股関節手術においては最もポピュラーな進入法です。前方アプローチより侵襲がやや大きくなりますが、こちらは高度な変形など難症例にも十分対応できます。
- 股関節鏡視下手術:股関節鏡を用いた診断治療が行える限られた施設の一つです。数ヵ所の小切開(1~2㎝程度)で行う内視鏡手術で、傷が小さく痛みも少なく、また筋肉などへのダメージも少ないことから、術後の機能回復が早いといった特徴があります。股関節唇修復術や骨軟骨形成術、滑膜切除術などが適応となります。
- 骨切り術:関節温存手術を行える限られた施設の一つです。大腿骨内反骨切り術、大腿骨外反骨切り術、寛骨臼回転骨切り術(RAO)、Chiari(キアリ)骨盤骨切り術、筋解離術などの手術を行っています。
- 冷凍骨バンク:冷凍骨バンクを有し同種骨移植が行えることで、大きな骨欠損のある人工股関節のゆるみに対する再置換術にも十分対応できます。
診療時間
股関節外科外来(水・金曜:岩田憲医師、月・水曜:高田成基医師)を受診してください。
(不在のことがありますので事前にお電話で予約を取られることをおすすめします。
連絡先:整形外科外来直通:087-891-2268)
膝関節・足関節
膝痛や膝関節の不安定感などでお困りの方はいませんか?
椅子からの立ち上がりや歩行時の痛みでお困りの方はいらっしゃいませんか?お薬や関節注射やリハビリなどの治療でも痛みがひかない方はいらっしゃいませんか?スポーツの際膝関節の不安定感でお困りの方はいませんか?膝痛のために日常生活が困難であったり、まだまだ旅行やスポーツを楽しみたい方などは、お気軽に相談ください。当科では膝関節・スポーツ専門医が診察し、最良の治療を提供させていただきます。診察は真柴(ましば)、千頭(ちかみ)の2名が担当させて頂き、診察日は月・金曜日の午前となっております。以下に代表的な疾患である高齢者の変形性膝関節症と、スポーツ外傷の膝前十字靱帯損傷の治療について説明します。
変形性膝関節症
加齢や使いすぎによって膝関節の軟骨がすり減り、関節炎や変形を生じて、痛みなどが起こる病気です。
正常の膝関節では関節の表面は軟骨で覆われています。弾力性に富んだ組織からなる軟骨は、関節の動きを滑らかにしたりしています。
治療方法
変形性膝関節症の治療方法には、大きく分けて保存療法と手術療法の2つがあります。保存療法には薬物療法(内服や湿布や関節内注射)、装具療法、理学療法(電気治療や温熱治療)があり、これらを組み合わせて行われます。ただし保存療法はあくまでも対症療法(その場限りで痛みをとる)でしかないので膝の痛みが取れない場合が多くあります。手術療法は保存療法で効果が得られない場合、もしくは確実な原因治療を希望される場合が適応となります。手術は主に人工関節置換術が行われていますが、その利点は動作時痛がほぼ無くなり下肢の変形も矯正されることです。また現在は術後のリハビリテーションも早期から行われており、手術の翌日から膝を動かす訓練や立位・歩行訓練を開始し、約2~3週間の入院で、自宅に退院できる予定です。
人工膝関節全置換術(TKA)
変形した関節の表面を削り金属と人工軟骨(強化プラスチック)でできた人工関節で置き換える手術です。膝全体を換えるのではなく、表面だけを金属に置き換えます。イメージ的には歯のかぶせ物に似ています。そうすることにより骨同士が直接ぶつかることがなくなり、動作時の痛みを取り除くことができます。またどんな関節の変形も矯正され、スムーズに曲げ伸ばしができるようになり日常生活が大きく改善されます。機能改善という意味では、整形外科を代表する手術といっても過言ではありません。
変形性膝関節症で膝全体が痛んでいる方や関節リウマチの方には人工膝関節全置換術を行っております。当科は2007年より四国の医療機関では先駆けてMIS(エム・アイ・エス)手技(最少侵襲手術)を導入しており、現在では標準的手技となっています。これは手術の傷が従来の約半分の7~10cmほどで、膝関節周囲の筋肉をほとんど切開しないために体への負担が少なく手術後のリハビリが早く行えるという利点があります。また手術は全身麻酔で行いますが、それと同時に手術する脚の神経ブロックを行うことにより、手術後の痛みが大きく軽減されます。
人工膝単顆置換術(UKA)
変形性膝関節症が内側の関節だけまたは外側の関節だけが痛んでいるような方、または膝骨壊死の方は通常の半分のサイズの人工関節置換術(人工膝単顆置換術)を行っております。当科では積極的にこの人工関節を行っており、年間では約100例以上行っており全国でもトップクラスの手術件数を誇っております。この手術もMIS手技を導入し手術の傷は5~7cmほどで手術時間も1時間程です。手術後のリハビリも早く手術の翌日より立位訓練を始め、約2週間で自宅退院が可能です。この手術は膝関節の靱帯をすべて残すことができますので、術後の膝関節の機能は曲がりも含めて人工膝関節全置換術(TKA)よりも良好です。全置換術(TKA)か単顆置換術(UKA)どちらの手術が適しているかは、年齢や疾患の状態により判断します。
膝前十字靱帯損傷
膝前十字靭帯は膝関節の前後方向・回旋の動きに最も重要な靱帯で、これが損傷していると階段の下りやスポーツなどで膝の不安定感が出現し日常生活に支障を来します。またそのままスポーツや重労働を継続すると2次的な半月板損傷や軟骨損傷を引き起こす場合が多く、また将来関節症変化を惹起する危険性があるため手術をお勧めします。
前十字靱帯は血行に乏しく、ギプス固定や手術で縫合しても治癒する事がほとんどないために、新しく靱帯を作る(再建術)手術を行います。手術は基本的に関節鏡視下で行います。まず膝内側から膝を曲げるための筋肉の腱の一部を採取し、それを多重折りにし前後に人工靭帯を結びつけ再建靱帯を作成します。次に膝の骨にトンネル(骨孔)をつくり再建靱帯を通し金具で固定します。また半月板や軟骨が損傷している場合は、同時に処置を行います。
最近の基礎研究により前十字靱帯は2本の線維束から成り立っており、各々違う働きをしていることがわかっております。そのため当科では2003年より正常の膝に近い2本の線維束を再建(解剖学的二重束再建術)しており、良好な術後成績を残しております。
手術後のリハビリは翌日から松葉杖での歩行訓練や膝を動かす練習を開始します。その後膝装具を装着し徐々に体重をかけながらの歩行訓練を行い、約1カ月で杖なし歩行が可能となり、約6カ月~1年でスポーツ復帰を予定しております。
- 対象疾患
- 代表的膝関節疾患(変形性膝関節症、慢性関節リウマチなど)及び外傷(十字靱帯損傷や半月板損傷など)、足関節疾患(主に靱帯損傷)
- 主な検査
- 各種画像検査(単純X線写真、CT、MRI)、筋力計測(CYBEX)、関節不安定性定量検査(KT-2000)、骨密度検査
- 主な治療
- 関節鏡視下手術、人工関節置換術、骨切り術など
「膝に水がたまったり、歩き始めや階段昇降で痛みが出る」-外来で変形性膝関節症の方がく言われる症状です。多くの施設では関節内注射や薬・湿布、リハビリを中心とした治療を行うのが一般的ですが、このような治療を続けても効果が無い場合・一度しっかりした検査をして病状を知りたい場合などはお気軽にご相談下さい。我々膝関節グループでは十分な診察と検査の結果に基づき、その人それぞれに一番適した治療(手術を含む)を行っています。
「ジャンプして着地した時に膝に痛みが走り、その後腫れてきた」-スポーツで特に多い前十字靱帯損傷や半月板損傷の方が受傷した時のことをよく言われます。共にレントゲンで診断できる病態ではないため、一般の施設では見逃されることが多く後々スポーツ時の痛みや膝のぐらつきが残ります。このような場合は是非専門的診察を受ける事をお勧めします。我々膝関節グループでは十分な診察と検査の結果に基づき、必要に応じて近年進歩の一途をたどる内視鏡下手術を中心とした最小侵襲での治療を行っています。
膝関節は人体最大の荷重関節であるため痛みや違和感などを生じることが多く、上に記した以外でも多くの疾患や病態があります。例えば膝のひっかかり感やスポーツの後の痛み、膝の外れそうな感じ、膝が伸びきらない・曲げきれない等々の症状でお困りの場合、一度外来を受診し相談して下さい。
手外科
- 対象疾患
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- 上肢の骨折(上腕骨、肘関節、前腕骨、手関節、指骨)
- 上肢の外傷(挫滅創、圧挫創、切断肢・指)
- 関節の拘縮(外傷後、デュプイトレン拘縮)
- 腱損傷(屈筋腱損傷、伸筋腱損傷、マレット指)
- 腱鞘炎(ばね指、デュケルバン腱鞘炎)、テニス肘
- リウマチによる関節障害、腱損傷
- 神経の障害(肘部管症候群、手根管症候群、神経損傷、麻痺手の機能再建)
- 外傷後の機能再建
- マイクロサージャリー(組織移植、外傷・腫瘍切除後の皮膚欠損の治療など)
- 主な検査
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- 各種画像検査(単純X線撮影、CT、MRI、関節造影、腱鞘造影)
- 神経機能検査(筋電図、神経伝導速度測定、知覚評価)
はじめに
私たち手外科グループは、肘関節から指先までの上肢の疾患・外傷、外傷後の機能再建、神経障害などの疾患を広く扱っています。また顕微鏡を用いた神経、血管縫合、組織移植などマイクロサージャリーも行っています。特に、大学病院という性格上、悪性骨軟部腫瘍切除後の再建として、マイクロサージャリーの手技が必要になることがあります。現在、日本手外科学会認定の手外科専門医2名および手外科専門医を目指す整形外科専門医1名で専門的な診療にあたっております。一方、血管柄付き同種骨移植の基礎的な研究も行っており、国際学会などでも発表しています。特徴あるものとして、以下のような治療を行っています。
内視鏡を用いた手根管症候群の治療
当院では手根管症候群の治療を内視鏡を用いて行っています。手関節部および手掌部の2箇所に小さな創を作り、内視鏡を用いて神経を圧迫している靭帯(屈筋支帯)を切離します。従来の方法よりも創が小さく目立たない、手を着いた時の創部の痛みや違和感が少ないなどの利点があります。
機能再建の治療
外傷や、悪性骨軟部腫瘍切除後などで、機能障害・組織欠損を来した場合、骨、筋、腱などの組織を移植する機能再建術を行います。必要に応じてマイクロサージャリーのテクニックを用います。
指や肘など、上肢関節の拘縮の手術
外傷などにより悪くなった指の動きを、腱の癒着を剥がしたり、関節の袋を切開したりしてできるだけ元の動きに近づけるような手術を行っています。また、再拘縮を起こさないように、術後は経験を積んだハンドセラピストの監視下に十分なリハビリテーションを行っていきます。
マイクロサージャリー
手術用顕微鏡を用い、外傷などによる神経・血管の修復、切断肢・指の再接着などを行っています。
屈筋腱・伸筋腱縫合後の早期運動療法
指を曲げたり伸ばしたりする腱が損傷された場合、手術の翌日より指を動かすリハビリテーションを開始します。これにより腱と周りの組織との間の癒着を防止でき、従来のギプス固定を用いた方法よりも良好な指の曲げ伸ばしが可能になります。このような治療には手外科医とハンドセラピストの連携が非常に重要で、治療方針について十分に話し合って決定していきます。また早期運動については手外科医の指示のもと、ハンドセラピストによる下図のようなスプリント作成も大切になります。
関節リウマチによる腱の損傷に対しても同様の方法を用いています。
小児整形
- 対象疾患
- 内反足、踵足、尖足、外反偏平足、股関節脱臼、大腿骨頭すべり症、ペルテス病、X脚、O脚、歩容異常、脚長不等、多合指(趾)症、強剛母指、斜頸、手足の変形など
- 主な治療
- ギプスや装具による保存療法、生活指導、手術療法
新生児から学童期における様々な四肢の疾患を対象に治療を行っています。
小児の骨格は大人の骨格を小さくしただけのものではありません。小児特有の疾患があり、また先天的な要因に加え、成長や発達も関連してきます。小児の疾患は一般の整形外科医 にとってあまりなじみのない病気であったりします。子供さんの発育の異常、歩行異常、関節の変形、外傷などでお悩みの方はご相談下さい。
先天性内反足
生下時より足部の変形を認めます。まず、ギプスを用いて少しずつ矯正を行うと、右写真のように変形が改善します。しかし改善が不十分である場合、変形の残存、再発があれば手術加療が必要になることもあります。
X脚
プレートとスクリューで骨端線抑制術を行い、膝内側の骨端線の成長を抑制することで、徐々にアライメントが矯正されます。
関節リウマチ
- 対象疾患
- 関節リウマチその他の膠原病の骨関節合併症
- 主な検査
- 画像検査(単純X線、骨密度検査、骨シンチグラム、MRI)
- 血液検査(内分泌検査、骨代謝マーカー)
- 主な治療
- 生活指導、運動療法、薬物療法、手術療法(人工関節置換術、滑膜切除術、足趾形成術、足、手関節固定術など)
関節リウマチは関節に栄養をおくる滑膜の病気で自分の関節を滑膜が壊してしまう自己免疫性疾患です。この病気を治すことは現在の医療技術ではできませんが、多くの場合関節が壊れないようにコントロールすることは可能です。関節リウマチの治療ではまず関節が壊れる前に十分に炎症を封じ込めることが重要です。すでに破壊が進んでしまい日常生活に不便が生じた関節には整形外科医が専門的に治療を行います。当科では関節リウマチの薬物治療、運動療法、生活指導はもちろん手術的治療まで行っています。
関節の腫れ、痛みで困っている方、関節リウマチかもしれないと言われた方、関節リウマチで治療していて特定の関節に不具合が生じてお困りの方はお気軽にご相談下さい。
肩関節
- 対象疾患
- 肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)、肩腱板断裂、外傷性肩不安定症(肩関節脱臼)、変形性肩関節症など
- 主な検査
- 単純レントゲン、CT、MRI、超音波エコー
- 主な治療
- 保存療法(薬物療法、運動療法、装具療法など)、手術療法(鏡視下腱板縫合術、鏡視下Bankart修復術、人工関節置換術など)
はじめに
肩関節は、人体において最大の可動範囲(もっともよく動く)を有する関節で、日常生活の動作において重要な役割を果たします。よって、肩関節が痛くなり動きが悪くなると、日常生活の様々な動作が障害されます。たとえば、お風呂で後頭部がうまく洗えない、服の着脱がつらい、洗濯物が干しづらい、エプロンの背中のひもがくくれない、ズボンのお尻側が引き上げられず履きにくい、トイレの後始末がしづらいなど、その症状は様々です。
代表的な疾患として上記のような疾患があげられますが、当院の治療としては、外来では保存療法を、入院では手術療法を行っています。以下に代表疾患の解説を述べますのでご参照ください。
肩関節周囲炎
一般に四十肩、五十肩と呼ばれる疾患です。とくに原因無く肩が痛くなり、動かしにくくなる疾患です。最初に痛みが強まってくる時期があり、数か月ののちに痛みが落ち着いてきたころから肩の動かしにくさが出てきます。最終的には痛みはほとんどなくなりますが肩の動かしにくさが残ることがあります。痛みが強い時期では、肩が痛くて夜眠れない、といった症状も出現します。治療としては、保存療法が基本となります。疼痛が強い時期は内服薬やシップ、注射で痛みを抑えます。肩の動かしにくさがあれば、痛みが落ち着いたのちに運動療法で可動範囲を再獲得します。保存療法は数か月から2年程度と長期間を要することがほとんどです。一部の方は、保存療法を行っても肩の可動範囲の改善が芳しくない場合があります。日常生活に支障をきたす可動範囲のせまさが残った場合には手術療法で可動域再獲得を目指す場合があります。
よく似たような症状が出る疾患としては石灰性腱板炎、腱板断裂などが挙げられます。石灰性腱板炎は特に原因無く急激に、激烈な痛みが出現します。外来に来られる患者さんは、痛くないほうの手で痛いほうの腕を支えながら来られる方がほとんどです。それほどの痛みです。ほとんどの方が注射と内服薬の使用で数日のうちに痛みが改善します。
肩腱板断裂
肩を動かすために必要は筋肉には重要なものが4つある(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)とされています。この4つの筋肉はそれぞれ腱(いわゆる“スジ”)を有しており、その腱は腕の骨の付け根(上腕骨頭)に付着しています。その腱が断裂するのが肩腱板断裂です。加齢によりすこしずつ擦り切れる場合と、けがによって引きちぎられる場合があります。腱が断裂すると、肩の痛み、動かしにくさ、肩を挙げた時のだるさ、肩を上げ下ろしするときの引っかかるような痛みなどが症状として出てきます。肩関節周囲炎と症状が似ているので、見逃されることも少なくない疾患です。単純レントゲン撮影やMRI、超音波検査などで診断します。治療法については、まず保存療法を試み、症状が改善しなければ手術療法を検討します。外来で内服薬や注射、運動療法を行い疼痛や肩の動かしにくさの改善を図ります。3~4か月ほど外来で保存療法を試みても効果があまり出ていないようであれば、手術療法を検討します。手術は、肩関節用の内視鏡を用いて行います。傷口は、内視鏡を挿入する穴と、器具を挿入する穴(いろいろな方向から操作する必要があるので数か所必要です。)全部で4~6か所程度、それぞれ1㎝弱の大きさで、手術が可能です。糸付きのスクリューを上腕骨頭に挿入し、断裂した腱に糸をかけ、ふたたび上腕骨頭にくっつくように括り付けます。術後のリハビリは、手術と同じくらい大切ですが、長期間を要します。術後1か月程度は固定が必要であり、肩を自由に動かせるまでに3か月程度、また重労働、スポーツ復帰には半年程度必要です。
図1)正常腱板(左図)と腱板断裂(右図)の模式図
腱板は上腕骨頭に付着しているが、断裂することで付着が骨頭からはがれ、肩甲骨関節窩の方に向かって切れ端が引き込まれる。
図2)手術の模式図(鏡視下腱板縫合術)
上腕骨頭に挿入するアンカーには図のように糸がついており、その糸を腱の切れ端にかけ矢印の方に引っ張る。
断裂部をふたたび腱で覆い、引っ張った糸は別のアンカー(右図青色)で上腕骨に固定する。
外傷性肩前方不安定症(肩関節脱臼)
人体に数ある関節のなかで、もっとも脱臼が多いのが肩関節です。脱臼とは、腕の骨の付け根(上腕骨頭)が、その受け皿(肩甲骨関節窩)から外れてしまうことを意味します。激痛をともないますのですぐにもとの状態に戻す(整復)が必要となります。整復がおくれたら神経障害を起こす可能性もあるので注意が必要です。ひとたび整復されると痛みはおさまります。しかし脱臼した際に上腕骨頭、関節窩のどちらかもしくは両方が損傷していることがほとんどです。その損傷の状態は単純レントゲンやCT、MRIで確認します。治療法は、まずは保存療法を行います。3週間ほどは三角巾固定を行い、その後痛みに合わせて動かすようにします。場合によっては運動療法を行います。しかし、1度脱臼すると、2回3回と繰り返す、つまり脱臼しやすくなることが少なくないです(反復性脱臼といいます)。この場合は、手術療法を検討します。手術は肩関節用の内視鏡を用いて行います。傷口は、内視鏡を挿入する穴と、器具を挿入する穴(いろいろな方向から操作する必要があるので数か所必要です。)全部で2~4か所程度、それぞれ1㎝弱の大きさで、手術が可能です。糸付きのスクリューを関節窩の縁に挿入し、関節窩周辺にある、上腕骨頭を支えてくれる土手のような組織(関節唇)を再び関節窩に括り付けます。術後のリハビリは、手術と同じくらい大切ですが、長期間を要します。術後2~3週程度は固定が必要であり、肩を自由に動かせるまでに3か月程度、また重労働、スポーツ復帰には半年程度必要です。
図3)正常な状態の肩関節(左図)と脱臼時の肩関節(右図)の模式図
上腕骨頭は関節窩に付着する関節唇を損傷しながら乗り越え、関節窩から外れた状態(脱臼)に至る。
図4)脱臼の手術(鏡視下Bankart縫合術)
手術時の関節鏡で、脱臼時の損傷で関節窩からはがれた関節唇を確認できる。
糸付きのアンカーを関節窩に挿入し、はがれた関節唇を周囲の組織(関節包、関節包靱帯)と一緒に再び関節窩に縫着する。
変形性肩関節症
肩関節の骨(上腕骨頭、肩甲骨関節窩)が変形を来す疾患です。加齢にともなうもの、過去の骨折によるもの、腱板断裂に伴うものなど、原因は様々です。関節の骨が変形すると、肩の動きが悪くなったり、動かすときに痛みが出たりするようになります。治療法はまず保存療法を行います。内服薬や注射を使用して関節の痛みを抑えます。それでも痛みがひどい、また肩の動きが悪いという場合には、手術療法を検討します。手術は、人工関節置換術を行います。傷口は、肩の前方、もしくは上方、外方(さまざまな方法があります。ケースによって使い分けます)に8~10cm程度の切開が加えられます。変形し傷んだ骨を切除し、金属、強化プラスチックでできたインプラントに置き換えます。肩を動かすのに必要な筋肉(腱板と呼ばれます。棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つです)の状態によって、使用するインプラントのデザインが異なります。術後のリハビリは、手術と同じくらい大切です。術後1~2か月程度のリハビリで肩が動かせるようになります。
(Tornier Japan / Wright Medical Group N.V.の許可を得て改変掲載。)
図5)人工肩関節の上腕骨側のデザイン
腱板の状態が良ければ左図のインプラントを、腱板の状態が悪ければ右図のインプラントを使用し、肩関節の置換を行う。
いずれも、傷んだ上腕骨頭を切除し金属、強化プラスチックを使用したインプラントに置き換えられている。
(Tornier Japan / Wright Medical Group N.V.の許可を得て改変掲載。)
図6)インプラント挿入後の画像(左は単純レントゲン像、右図はイラスト)
腱板の状態が良ければ左図のような完成図となり、腱板の状態悪ければ右図のような完成図となる。
おわりに
肩が痛い、肩が動かしにくい、肩がだるい、上記疾患ではないかと気になっている等、肩周辺に悩みを抱えておられる方は、月曜午前に専門外来を行っておりますので一度当外来を受診頂き、ご相談ください。
脊椎脊髄外科
脊椎脊髄外科では脊椎脊髄疾患の診療しております。
火曜日、木曜日の午前中に外来を行っております。外来では
- 詳細な問診と、詳細な神経学的診察を行い、画像検査を駆使して適切に診断すること。
- 手術が必要な方には、附属病院で手術加療を行うための検査や説明を行うこと。
- 保存療法(手術を行わない治療)が必要な方には投薬(薬をだすこと)や、各種神経ブロック(仙骨硬膜外ブロック、神経根ブロック)、理学療法や物理療法などの種々の方法を駆使し治療をおこなうこと。ただし、継続した保存療法は必要に応じて関連する病院で行うこともあります
- 手術を受けていただいた患者さんの定期的な診察
を行っています。
外来では画像検査だけで治療方針を決定しているわけではありません。
患者さんが何について困っているか、そしてそれが何に起因するのかを明らかにします。治療については我々の持てる限りのことを行いますが、あくまで診断が重要となります。診断如何によっては我々の行う治療よりも、他の診療科の先生に加療いただいた方が良い場合もあるからです。
痛みの部位を正確にお伝えいただき、症状が、いつからあるかといった経過を担当医にお伝えいただければと思います。これは患者さんにしかわからない部分であるからです。
また診察においては、深部反射(ハンマーを用いて診察します)、筋力(徒手的に行います。出せる限りの力を出してください)、知覚(触覚;触った感覚、痛覚;痛みの感覚、振動覚などを検査します。意識を集中して違いを担当医にお伝えください)を検査します。このことで、画像の検査と合致しているか、あるいは矛盾しているかについて調べています。慣れないことばかりであろうかとは思いますが、正確な診断を得るために御理解ご協力をお願いいたします。
診療を行っている主な疾患について御紹介します
1.頚髄症(頚椎症性脊髄症、頚椎後縦靭帯骨化症)
箸を使ったりボタンをかけたりが困難になっているとか、階段を降る時に膝が崩れる感じがしたり、平地を歩いていてもつっぱるような感じがしたりして歩きにくい方、手指や下肢の痺れを自覚する方。頚椎で脊髄の通り道が狭いため起こっている可能性があります。基本的には手術が必要な疾患です。
術前のMRI 第3第4頚椎、第4第5頚椎間で脊髄が圧迫されています。
術前CTミエログラフィ
頚椎椎弓形成術後CT 片開きで良好な拡大が得られています。
術前X線像
術後X線像
術後MRI 脊髄が圧迫から解放されています。
2.頚椎症性神経根症
上肢に放散する痛みがあったり、力が入りにくかったりする方の場合、頚椎の神経根が圧迫されている可能性があります。投薬や、神経根ブロックなどの保存療法(手術をしない治療法)が無効であれば、手術が必要になることもあります。
神経根ブロック 透視装置を用いて神経根周囲に専用の針を挿入し、造影剤で神経を確認したのちに局所麻酔でブロックします。
保存療法で効果が得られない場合、頚椎前方固定術や後方除圧(必要に応じて固定術)が必要になることもあります。
3.胸髄症
階段を降る時に膝が崩れる感じがしたり、平地を歩いていてもつっぱるような感じがしたりして歩きにくい方、下肢の痺れを自覚する方。胸椎で脊髄の通り道が狭いため起こっている可能性があります。基本的には手術が必要な疾患です。
4.腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア
いわゆる坐骨神経痛のような痛みを自覚する方、歩行していると下肢の痺れや痛みを自覚して歩くことができなくなる方、下肢の筋力低下がある方、排尿する際の勢いが弱くなったり、失禁したりするような症状の方。腰の神経の通り道が狭いため起こっている可能性があります。
術前脊髄造影検査 第4第5腰椎間で狭窄がある。
術後X線写真 後方から固定術を行った。
5.脊髄腫瘍
脊髄神経に発生した腫瘍です。麻痺がおこっている場合は摘出する手術が必要となりますし、麻痺がない場合でも確定診断を得るためには手術加療が必要になることがあります
術前MR 第2腰椎の高位で硬膜管の中に腫瘍が存在する。
顕微鏡下に硬膜を切開し腫瘍を露出したところ
腫瘍を摘出した後
腫瘍を摘出する際に椎間関節を切除する必要がある場合などは脊柱再建が必要になることもあります。
術前X線像
術後X線像
術後MRI 脊髄が圧迫から解放されています。
第2第3頚椎の脊柱管から右椎間孔に発生した腫瘍に対して後方固定術を併用して摘出した。
6.化膿性脊椎炎
発熱とともに腰痛を自覚する方。内科などを受診して、発熱が落ち着いたにもかかわらず、頑固に腰痛が続く方。脊椎に細菌が感染して炎症を起こしていることがあります。治療の方針は起炎菌(炎症を起こしている菌)を明らかにすること、起炎菌に効果のある抗菌薬を投与すること、病巣を掻爬することです。特に早期の加療が重要な疾患です。
我々の施設では、できるだけ早期に、局所麻酔下の経皮的病巣掻爬を行って参りました。近年は内視鏡(関節鏡を含む)を併用して、椎体終板の掻爬を行っています。
掻爬後椎間板腔にチューブを留置しドレナージを行っているところ
左から術前、術後2週、術後3カ月、術後6カ月。経時的に炎症を起こしている部分が縮小している。
骨破壊が進行した状態で受診なさることもあります。
第2第3腰椎間で感染が起こり、同部位で著しい破壊が起きている。硬膜外には膿瘍もある。
このような場合には、起炎菌を明らかにしたのちに、後方から固定術を行い安定化させます。
さらに二期的にお腹側から展開して前方固定術を行うこともあります。
腸骨から採骨して骨移植を行った。
骨癒合が得られたら、後方固定に用いたインストゥルメントは抜去します。
7.脊椎圧迫骨折
骨粗鬆症のある方の場合、軽微な外力(尻もちをつくなど、立った状態からの転倒など)で脊椎が骨折することがあります。ひどいときには自分でも気が付くことのないまま骨折を起こしていることもあります。脊椎圧迫骨折は初期治療が極めて重要です。骨折した形態にもよりますが、初期に適切な治療をしないと、(1)さらに潰れることがあります:椎体圧壊(2)神経が圧迫されることがあります:遅発性神経麻痺(3)骨がつかないことがあります:椎体偽関節。
8.脊椎外傷
脊椎の脱臼や骨折により脊柱を再建する必要がある場合、手術が必要になります。また外傷により脊髄神経の圧迫がある場合除圧が必要になることもあります。残念ながら、骨は再生しますが、一度損傷を受けた神経は完全には回復しません。当院では救命センターに搬送された外傷患者に対しての手術加療も行っています。
屈曲して軸圧が加わって、第5頚椎が破裂骨折を来し、脊髄損傷を起こした。
前方除圧固定術を行ったところ。
第7頚椎の脱臼骨折
後方から脊柱再建を行った。
9.脊柱変形
側弯症や成人脊柱変形などがあります。側弯症には特発性側弯症と何らかの疾患を背景に側弯を来す症候性側弯があります。思春期特発性側弯症の患者さんに対しては必要に応じて装具療法など保存療法を行います。一般的には成長期に弯曲が進行することが知られていますが、胸椎の弯曲が40°以上では成長期以後も進行することが知られています。また装具療法で効果が得られない場合、手術加療を行います。
また特発性側弯がある患者さんで変形が進行してきたばあいや、加齢に伴う変性によって側弯が進行してきた場合でも、手術の適応になることがあります。
仙骨の中心軸から55mm体幹が右にシフトしている
胸椎から骨盤まで固定し矯正している
最後に患者さんに御願いします。
- お薬手帳をお持ちの方は必ず御持参ください。
- 痛みの問診票を記入いただいております。痛みの部位は診断にあたって非常に重要です。担当医に正確に病状を伝えていただくことでより正しい診断が可能になりますので、詳細に記載くださいますようお願いします。
(文責 小松原悟史)