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手術支援技術・検査

PET検査:各種トレーサで検査可能

PETとは

PET(ペット)とは、positron emission tomographyの略で、日本語では陽電子放射断層撮影法という特殊な核医学検査法です。PETは全身の癌の早期発見に用いられ、最近ではPETを用いた腫瘍ドック検査も広く知られています(ちなみに当大学医学部附属病院でもPETを用いたドック(PET検診)を行っています)。当教室が用いる装置も原則的には同じですが、目的が癌の発見ではなく、主に①脳腫瘍の診断、②脳血管障害の診断に役立てています。

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脳腫瘍の診断

脳腫瘍の診断では、現在FDG(フルオロデオキグルコース)以外に、メチオニン、酢酸、FLT(フルオロチミジン)を利用しています。これらの核種を併用することにより、脳腫瘍のブドウ糖代謝以外にも腫瘍のアミノ酸代謝や核酸代謝を評価することが可能であり、脳腫瘍の術前に悪性度を評価したり、腫瘍の伸展を確認することができます。特に神経膠腫(グリオーマ)においてメチオニン、FLTともに、腫瘍の悪性度と核種の集積状態に正の相関関係があり、また腫瘍の増殖能を指標であるKi-67 indexとFLTの集積が強く相関することが明らかとなっております。

また、これらの各種を使用することで、治療後の再発と放射線壊死の鑑別も可能となっています。FDGは比較的半減期が長く、近年デリバリーサービスにより色々な施設で行うことが可能となっていますが、メチオニンやFLTといった新しい核種は施設のサイクロトロンで合成するために限られた施設でした行うことができません。現在、香川県はじめ中国四国地区の大学や病院様より数多くの患者様を紹介していただき、多くの脳腫瘍患者様も検査を行っています。

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現在、悪性脳腫瘍の患者様に、FDG、メチオニン、FLTを併用したPET検査を行い、術前に悪性度の診断が可能であるか否か、腫瘍の増殖能との相関関係があるか否かの検討を行っています。その結果神経膠腫においてメチオニン、FLTともに腫瘍の悪性度とそれぞれの核種の集積状態に相関関係があり、また腫瘍の増殖能を指標であるKi-67 indexとFLTの集積が強く関連することが明らかとなりました。

脳血液灌流・酸素代謝の評価

PET検査は、脳梗塞などの脳血管障害の患者様においても治療の方法を決めるのに大変役立ちます。PET検査により、脳血流量、脳酸素代謝率、脳酸素摂取率などの脳循環代謝の指標を測定することが可能です。例えば、脳血流量が低下し、脳酸素摂取率が上昇している脳の領域は、将来的に脳梗塞を起こす危険性が高いと考えることができます。このような場合、脳の血流を増やすバイパス手術が有効であるとされています。また、脳卒中急性期~亜急性期の病態でも、安全・可能な範囲でPET検査での脳循環代謝評価を行っており、脳損傷の病態把握や治療方針の決定、治療効果の判定などに利用しております。脳循環代謝を測定するためのPET検査も用いる標識ガス(15Oガス)の半減期が2分と極端に短いために当院のようなサイクロトロンを有する施設でしか行えません。 スライド4.JPG

アルツハイマーの早期診断の可能性

また、近年問題となっているアルツハイマー病の早期診断にFDG-PET検査が役立つことが知られています。初期のアルツハイマー病の患者様において頭頂葉でブドウ糖の取り込みが低下していることが重要な所見と考えられています。ただし、現在のところアルツハイマー病に対するPET検査は保険適応がありませんが、希望される方は腫瘍ドックの時に頭部の撮影を行い、その診断を行うことは可能です。

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ニューロナビゲーションシステム

脳神経外科の手術は、顕微鏡を使い、非常に緻密で繊細な技術が要求されます。また、少しでも違う場所を切除しただけで、術後に新たな神経症状が起こる場合もあります。そこで、脳の中を正確に手術するために考え出されたのが、術中ナビゲーションシステムです。ナビゲーション手術は、脳のどこを手術しているか、病変はどこまであるのかなどの情報を顕微鏡の視野内に表示することができる上、術前に撮影したCTやMRI画像上に今手術操作をしている部位を表示することも可能です。カーナビを想像していただければ理解しやすいかと思います。このナビゲーション手術は、主に脳腫瘍の手術に使われます。特に脳の深いところにある腫瘍や、境界がわかりにくい腫瘍、病変と重要な正常組織が隣接している場合には、非常に有用です。これにより、必要最小限の脳の切開が可能となり、また大事な部位の温存が以前にもまして可能となりました。しかし、誰でも簡単に手術ができるようになったわけではなく、術者のもてる知識と培った経験があってこそその威力発揮するものです。

当院では1999年から術中ナビゲーションシステムを導入し、現在までに脳腫瘍手術(神経膠腫に対する手術、髄膜腫、下垂体腺腫(経蝶形骨洞手術を含む)、聴神経鞘腫、頭蓋底腫瘍など)を主体にほぼ全例に使用しております。

手術する部位にもよりますが、多くの場合、手術前日に専用の皮膚マーカーを前額(おでこ)部と耳周囲に取り付け、その状態で術前MRI画像をとります。その画像をナビゲーションシステムの装置へ転送し、ワークステーション操作によりコンピューター内に患者様の頭部および腫瘍の位置を表した3D画像を構築します。実際に手術の際には、ナビゲーションシステムと位置感知カメラ、手術用顕微鏡など接続しリンクさせて、顕微鏡視野内に腫瘍を表示させたり、コンピューターに顕微鏡で見えている部位を表示させたりすることにより、現在手術操作している部位とその周囲の危険な構造物などを把握できるようにしています。

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術中神経モニタリング

脳腫瘍の摘出手術の場合、できるだけ神経機能を温存しかつ可能な限り腫瘍の減量をはかることが重要となります。しかし、どこまで摘出すると脳機能が障害されるかは、実際に手術が終わってみないと分からないというのが以前の状態でした。近年では、少しでも神経障害を防ぐために、術中ナビゲーションシステムに加え、術中神経モニタリング、術中電気刺激マッピング、覚醒下手術などを併用することが通例となっております。

画像による解剖学的情報と共に機能的な情報として、体性感覚誘発電位(SEP)、皮質、聴覚刺激誘発電位、皮質下電気刺激による運動機能マッピングや言語機能マッピングなどの術中モニタリングを行い、極力神経機能を温存させる手術を行っています。また、腫瘍が言語野(言葉を理解したり話したりするための中枢)に存在する場合、手術中に患者様を一時的に覚醒させ、種々の言語機能を検査しながら、腫瘍摘出を行う覚醒下手術も行っております。

術中MRI検査

日本でも多くの施設で導入されていますが、四国地域では第一号、中四国地域では福山の大田記念病院、岡山の岡山大学に次いで3番目に導入されました。その名の通り、手術中に全身麻酔のままMRI検査を行い画像診断が可能となります。

脳腫瘍の手術においては、基本的にナビゲーションシステムを参考にしながら、腫瘍部分を摘出除去していきます。しかしながら、手術の進行に伴って摘出腔周囲の構造物や脳それ自体が重力に従って位置が変わってしまいます("brain shift"といいます)。つまり、手術前のMRI画像やCT画像で作成したナビゲーションマップと実際の脳の状態が変わってしまい、手術が進めば進むほどズレた「地図」をもとに手術操作を行うことになってしまいかねません。多くの脳外科医はこの点に十分配慮して手術を行っております。そこで手術がある程度進んだ段階でMRIを撮影すれば、リアルタイムな「新しい地図」を得ることができ、より患部周辺の正確な位置情報把握や腫瘍摘出程度の判断が可能となり、より正確・安全な手術を行うことができるようになります。

術中MRIを行うためには単にMRI装置を手術室に設置すればよいだけではありません。MRIは強力な磁場を発生させるため、磁場干渉しない手術器具や麻酔機械、また全身麻酔のかかった患者様を術や滅菌状態のまま安全にMRI装置へ誘導する最短の動線なども準備する必要があります。

当院では2016年の新手術棟施工時にMRI併設手術室(MRI:HITACHI APERTO Lucent 0.4T)を初めて導入し、以来、特に脳腫瘍の手術の際に術中MRIを行っております。

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