Acinetobacter sp. DL-28 L-ribose isomerase (4Q0P)

 

L-Ribose, a pentose, is not known to exist in nature. Although organisms typically do not have a metabolic pathway that uses L-ribose as a carbon source, prokaryotes use various sugars as carbon sources for survival. Acinetobacter sp. DL-28 has been shown to express the novel enzyme, L-ribose isomerase (AcL-RbI), which catalyzes reversible isomerization between L-ribose and L-ribulose. AcL-RbI showed the highest activity to L-ribose, followed by D-lyxose with 47 % activity, and had no significant amino acid sequence similarity to structure-known proteins, except for weak homology with the D-lyxose isomerases from Escherichia coli O157:H7 (18 %) and Bacillus subtilis strain (19 %). Thus, AcL-RbI is expected to have the unique three-dimensional structure to recognize L-ribose as its ideal substrate. The X-ray structures of AcL-RbI in complexes with substrates were determined. AcL-RbI had a cupin-type beta-barrel structure, and the catalytic site was found between two large beta-sheets with a bound metal ion. The catalytic site structures clearly showed that AcL-RbI adopted a cis-enediol intermediate mechanism for the isomerization reaction using two glutamate residues (Glu113 and Glu204) as acid/base catalysts. In its crystal form, AcL-RbI formed a unique homo-tetramer with many substrate sub-binding sites, which likely facilitated capture of the substrate.

 

FEBS J. (2014) 281, 3150-3164.

fig6A1

 

Aspergillus oryzae Aspartic proteinase (1IAD, 1IZE)

 

黄麹菌Aspergillus oryzaeアスパラギン酸プロテアーゼおよびその阻害剤(ペプスタチンA)複合体の1.9Å分解能X線結晶解析を行い,疎水性アミノ酸に加えて正電荷をもつアミノ酸(アルギニン・リシン)のC末端側でも加水分解するという黄麹菌酵素特有の基質特異性について新たな知見を得た。


J. Mol. Biol. (2003) 326, 1503-1511.

Clostridium botulinum hemagglutinin (HA) subcomponent in ) in complexes with sialylated oligosaccharides (4EN6, 4EN8)

 

ボツリヌス菌が産生する神経毒素は,非毒素成分および3つのヘマグルチニン成分(HA33HA17HA70)とともにプロジェニター毒素複合体を形成している。ヘマグルチニン成分は,上皮細胞上の糖鎖に結合することにより毒素の侵入を助けている。ヘマグリチニン成分の1つであるHA70の糖鎖認識機構について新たな知見を得るために,タイプC毒素のHA70(HA70/C)とシアル化糖鎖との複合体のX線結晶解析および糖鎖マイクロアレイによる結合アッセイを行った。その結果,HA70/Cは,α2-3-α2-6-シアル化糖鎖の両方を認識し結合することができるが,その親和性は,α2-3-シアル化糖鎖の方が,α2-6-シアル化糖鎖よりも高いことがわかった。

FEBS Lett. (2012) 586, 2404-2410.

fig2_a

Endolysin (Psm) encoded by episomal phage phiSM101 of enterotoxigenic Clostridium perfringens (4KRT)

 

 グラム陽性菌は,およそ250Åの厚さの細胞壁を持ち,細胞の形態を保っている。細胞壁は,N-アセチルグルコサミンとN-アセチルムラミン酸が交互にb(1→4)結合したグリカン鎖を812アミノ酸のペプチド鎖が架橋した網目構造のペプチドグリカンからなる。エンドライシンは,細菌に感染したファージ由来の遺伝子にコードされており,細胞壁ペプチドグリカンを加水分解し,溶菌化を導く酵素群である。エンドライシンは,細菌の外側からも作用し,特異的に宿主細菌を死滅させることから,新たな抗生物質として注目されている。本研究では,ガス壊疽や食中毒の原因となるウェルシュ菌(Clostridium perfringens, C. perfringens)ファージ由来のエンドライシン(Psm)について,全長タンパク質(Psm)および触媒ドメイン(Psmcat)のX線結晶解析を行った。Psmは,N末側にGH25ファミリー(リゾチーム)に属する触媒ドメインと,C末側に細胞壁結合ドメイン(cell wall binding domain, CBD)を持つ。CBDは,2つの細菌性SH3SH3_3pfam08239)ドメインが近似的2回対称に配置された新奇な構造をとっていた。通常,SH3ドメインはペプチドを認識する。このことから,PsmCBDは,ペプチドグリカン中のペプチド鎖を特異的に認識して,触媒ドメインがグリカン鎖を加水分解するのを助けているという機構が考えられる。

Molecular Microbiology (2014) 92, 326–337.

fig1_A

Human galectin-8 in a protease-resistant mutant form (3VKM)

 

 ガレクチン8は,2つの異なる糖鎖認識ドメインをN末側(N-CRD),C末側(C-CRD)に持つタンデムリピートタイプのガレクチンで,細胞−マトリックス相互作用や細胞接着に関与している。N-CRDa2-3シアル化糖鎖に強い親和性を持ち,C-CRDN-CRDより糖鎖親和性が低い。これまでに多くのガレクチンのX線結晶解析が報告されているが,それらはすべて1つのCRDを対象としたもので,2つのCRDを含むX線構造はまだない。これは2つのCRDをつなぐリンカー部分のプロテアーゼ感受性が高いためである。今回,2つのCRDを持つプロテアーゼ耐性変異型ガレクチン8G8Null)と糖鎖との複合体のX線解析に成功した。また,疑似2量体を形成したガレクチン8N-CRDG8N)についてもX線結晶解析を行った。これらの結果より,2つのCRDの糖鎖認識の違いを明らかにし,さらにガレクチン8CRDおよび分子の集合状態についての新たな知見を得た。

 

FEBS J. (2012) 279, 3937-3951.

G8Null_SiaLac_Lac_1

Human galectin-9 C-terminal domain (3NV3)

 

 ガレクチンとは,細胞表面上の糖鎖を認識し結合する動物レクチンタンパク質で,近年,生体内で様々な興味深い機能を持つことが明らかとなり,注目されている。これまでにヒトガレクチンは14種類発見されており,その構造からプロトタイプ,キメラタイプ,タンデムリピートタイプに分けられる。ガレクチン9は,タンデムリピートタイプに属し,免疫応答において,好酸球遊走因子や活性化T細胞のアポトーシスを誘導因子等として働いていることが報告されている。ガレクチン9は,枝分かれ糖鎖(分枝糖鎖)およびシアル化糖鎖に対して親和性が高い。ガレクチン9の糖鎖認識機構と,それが持つ機能との関係について新たな知見を得るため,ガレクチン9・糖鎖複合体の立体構造をX線結晶解析により決定した。

 

 J. Biol. Chem. (2010) 285, 36969-36976.

fig2a

Human and mouse Iba1 (2D58, 1WY9)

 哺乳類の中枢神経系は主に神経細胞と3種類のグリア細胞(アストロサイト,オリゴデンドロサイト,ミクログリア)から構成されている。ミクログリアは,神経変性疾患・神経損傷時等に活性化され,神経の機能維持・生存・損傷修復に働く。ミクログリア特異的カルシウム結合タンパク質Iba1Ionized calcium binding adaptor molecule 1)は活性化ミクログリアで発現上昇する新規タンパク質で,Iba1PLCγを介してRacシグナル伝達系で機能することが現在までに明らかになっている。また同時にIba1F-アクチンが集積することが観察され,Iba1F-アクチンに対する結合能・架橋能が示され細胞骨格再構成にIba1が関与している可能性が示された。本研究ではIba1の有するF-アクチン結合能・架橋能をはじめ,ミクログリア活性化における機能の理解を得るため,ヒトおよびマウス由来のIba1H-Iba1およびM-Iba1)のX線結晶構造解析を行った。


J. Mol. Biol. (2006) 364, 449-457.

Pseudomonas cichorii Tagatose epimerase (2OU4)


 土壌菌Pseudomonas cichorii 由来D-タガトース3-エピメラーゼは(P. cichorii D-TE)は種々のケトヘキソースの3位をエピマー化することができる酵素である。本酵素は,自然界に極微量にしか存在しない糖,希少糖の生産に関与する酵素として注目され,天然に大量に存在するD-フルクトースから希少糖D-プシコースを生産するプロセスが既に開発されている。本研究では,希少糖生産酵素の基質認識の構造・機能解析を行うことを目的にP. cichorii D-TE X線結晶解析を行った。

 

J. Mol. Biol. (2007) 374, 443-453.

Pseudomonas stutzeri Rhamnose Isomerase (2HCV, 2I56, 2I57)


 ラムノースイソメラーゼ(L-rhamnose isomeraseL-RhI)はL-ラムノース から L-ラムヌロースへの異性化を可逆的に触媒する酵素であり,数種の微生物においてその存在が確認されている。土壌菌Pseudomonas stutzeri由来L-RhI(P. stutzeri L-RhI)L-ラムノース と L-ラムヌロース間の異性化だけではなく,D-プシコースやD-アロースをはじめ,天然には微量にしか存在しない糖,「希少糖」の異性化反応をも触媒することから希少糖生産酵素として実用化されている。酵素の3次元構造情報は,より効率的な希少糖の生産を目指した変異酵素の分子設計,蛋白質工学的アプローチによる改変にとって極めて有用である。われわれは,P. stutzeri L-RhIX線結晶解析を行い,L-ラムノース とD-アロースが結合した複合体の構造も決定し,基質特異性に関わる機構を解明した。


J. Mol. Biol. (2007) 365, 1505-1516.

Sporobolomyces salmonicolor Aldehyde reductase 2 (1ZZE, 1Y1P)


 赤色酵母Sporobolomyces salmonicolor由来立体選択的アルデヒド還元酵素は,NADPHを補酵素とし,ケト基を立体選択的に還元し(S)体を生成する。 SeMet置換体を用いたSAD法により,ARIIの構造を2.0Å分解能で決定した。大きなβ-シート構造が酵素の中核を形成し,その上下をαヘリックスが覆うように位置していた。酵素・NADPH複合体のX線結晶解析も行った。


J. Mol. Biol. (2005) 352, 551-558.

Sulfolobus tokodaii Cytochrome P450 (1UEB)


 シトクロムP450は,様々な化合物を基質とし,一原子酸素添加反応を触媒するヘムタンパク質である。好熱好酸性古細菌S.tokodaii由来のシトクロムP450のX線結晶解析を行った。その結果,ヘム第6配位上方にある,F-G-へリックスの構造が,構造既知のシトクロムP450と大きく異なっており,この領域が,基質の特異性および親和性と密接に関係があると考えられた。


J. Inorg. Biochem. (2004) 98, 1194-1199.

Sulfolobus tokodaii Molybdenum cofacto biosynthesis protein C, ST0472 (2OHD)


 モリブデン補酵素は,炭素,窒素,硫黄代謝に関わる多くの酵素に要求される因子である。モリブデン補酵素合成系は原核生物から真核生物にわたり進化的に保存されている。この生合成系に関与するタンパク質としていくつかのモリブデン補酵素生合成タンパク質が同定されており,Sulfolobus tokodaii由来の本タンパク質はEscherichia coli由来モリブデン補酵素合成タンパク質CMoaC)と一次構造上48%の相同性を示している。結晶構造解析より,E. coli MoaCと同様,3つのホモダイマーからなるヘキサマーを形成していることが明らかとなった。

 

Acta Crystallogr. Sect F. (2008) 64, 589-592.

Sulfolobus tokodaii Selenium-binding protein, ST0059 (2ECE)


 Selenium Binding Protein 56kDa. (SBP56),1989,Bansalらによって同定されたタンパク質で,これと高い相同性を示すタンパク質がバクテリアから植物,動物に至るまで広く見出されており,基本的な生命現象に関わっている可能性がある。これまでに,真核生物のものについては,Se化合物の運搬,解毒作用,ゴルジ体内タンパク輸送に関与している可能性が示唆されているが,原核生物についての報告は極めて少ない。ヒトSBP5639%の1次構造ホモロジーを持つ超好熱性古細菌Sulfolobus tokodaii 由来のタンパク質(ST0059)のX線結晶解析に成功した。解析した構造から,高等動物SBP563次元構造モデリングが可能となり,今後のSBP56機能解明の研究に大きく貢献できると考えられる。

Thermoactinomyces vulgaris R-47 alpha-Amylase 1 (1JT1 etc.)


 好熱性放線菌(Thermoactinomyces vulgaris R-47)は、2つのα-アミラーゼ(TVA1, TVA2)を持つ。これらは、デンプンに加えて、通常のα-アミラーゼがほとんど加水分解できない環状オリゴ糖であるシクロデキストリン(CD)や,α-1,4、α-1,4、α-1,6が規則正しく繰り返す多糖であるプルランも分解できるという興味深い基質特異性を持つ。TVA1は,菌体外酵素であり,比較的高分子量の基質に対してよく働き,それに対してTVA2は,CDの加水分解能力に優れており,α-アミラーゼというよりはシクロデキストリン加水分解酵素として位置づけられる。TVA1TVA2およびその基質複合体の3次元構造をX線結晶解析により決定し,これらの基質認識・加水分解機構について報告してきた。

 

J. Mol. Biol. (2004) 335, 811-822.

Thermoactinomyces vulgaris R-47 alpha-Amylase 2 (1JT2 etc.)



 上を参照。詳しくは

J. Biol. Chem. (2004) 279, 31033-31040.