慢性期成人看護学

   清水 裕子 教授

病いにある人々の苦しみと生きる強さにまなざしをむける学習

教 育

慢性期成人看護学は、社会や家庭で役割を担う成人の健康を対象とします。特に、慢性疾患によって、長期にわたる治療ならびに生活の制限をうけた人々への支援を教授します。
担当する成人看護学科目は、「成人看護学概論」、「成人慢性期援助論」と「成人慢性期・終末期実習」、「療養継続実習」、「看護実践技術論ー健康情報インタビュー」です。
成人慢性期・終末期実習は、実習前に看護実践能力試験(N-OSCE)で実習課題を明らかにし、慢性的経過を辿るがん・難病の化学療法の看護、呼吸器疾患、消化器疾患などの患者への看護をベット・サイドで教授します。
統合実践看護学では、「看護クリティカルシンキング」では、研究の基礎となる自己理解と他者理解の促進を図り、研究疑問や文献検索を教授し、思考力養成を行います。「看護研究」では、国際看護学、看護教育学を指向する研究テーマも受け入れています。高学年の自由科目では、国立大学で唯一の「スピリチュアルケア論」を開設しています。

研 究

清水教授は、大学院において、成人看護学領域の特論および演習・特別研究、基盤科目では、看護教育学、オムニバスで看護倫理学や国際看護学を担当します。研究は、看護学・心理学・老年学にまたがる学際的分野であり、慢性成人看護学に関するテーマ、看護教育学に関するテーマ、ヒューマンケアに関するテーマ、国際看護学に関するテーマなどを含みます。
上原助教は、修士課程のテーマに続き、スピリチュアルニーズとその教育技法に関する研究を続けています。

社会貢献

1.JICA 草の根技術協力事業地域活性化特別枠

清水教授がプロジェクトマネージャーとして、独立行政法人国際協力機構(JICA)から「カンボジア国カンダルスタン郡の衛生教育改善のための学校保健室体制の構築プロジェクト事業」(3年間)に係る業務を受託し、2017年2月28日~2020年2月28日まで香川大学事業として実施しました。本事業は香川大学が、香川県、JICA、カンボジアNPOウドンハウスと連携し、カンボジア教育青年スポーツ省(教育省)と二国間契約を結んで実施しました。
本事業は、清水教授の「看護教育学」の社会貢献事業として実施しており、カンボジア国教育青年スポーツ省(以下、教育省)省と連携して、カンダール州カンダルスタン郡32小学校に保健室やトイレ建設、手洗い指導などの衛生教育の方法を学校管理者や現場の教員に学んでいただき、衛生教育を改善する取り組みを行いました。現地NGO(楠川富子代表)と同講座から派遣した現地調整員の現地調整と本学から医学、教育、看護関係者が派遣されて行われました。

カンボジアは、ポル・ポトやクメール・ルージュによる170万人ともいわれる大量殺戮(ジェノサイド)、知的資産の破壊などが行われ、ベトナム戦争の影響も受けて、1979 年 12 月 1 日に独立する迄の約 20 年間は、難民貧困が国を覆い、戸籍も文化も知的財産もすべて消失しました。

事業では、カンボジア政府高官とカンダルスタン郡の公立小学校32校の教員に来日研修を実施し、帰国後、香川大学の渡航教員らと現地スタッフとで衛生教育セミナーを実施しました。この事業で、応急手当のできる保健室担当教員のいる日本型学校保健室モデルを完成し、カンボジア標準様式を改編した香川大学設計のトイレや手洗い場モデルを、日本でのクラウドファンディング資金を活用して建設しました。また、日本とカンボジアの学校保健内容を検討し、教師用・児童用「学校保健テキスト」英語版・クメール語版を開発しました。学校保健室モデル、衛生教育モデル、学校保健テキストの版権をカンボジア政府に無償譲渡しました。

この学校保健室体制は、香川大学などの日本型をモデルに 2019 年5月にカンボジア学校保健国家計画に盛り込まれていました。(中央省庁や州に配布されるカンボジア学校保健国家計画冊子には香川大学マークがついています)その後、2021年9月21日のカンボジア教育省大臣通達第52号「公立および私立の高等教育機関の再開についてのガイライン」において、「高等教育機関における衛生教育委員会の設立」を通知し、「学校保健調査委員会と保健室を、モデル同様に設置する」ことが記されました。通達に添付の学校保健室資料では、この基準に沿って、「校長や学長を長とする学校保健委員会」、「保健担当教員の役割と責任」、「学校保健室と器材一覧」「来室者記録」「病院紹介記録」「毎月の材料使用・管理記録」など、香川モデルの内容を紹介しています。この通達によりカンボジアの小学校から大学までの、公立私立を問わず、すべての学校に保健室設置が実現に向かうことになりました。

プロジェクトフェイスブック リンク:
大学HPインターナショナルオフィスリンクページ
2017年03月27日リンク:https://www.kagawa-u.ac.jp/kuio/news/18689/jica/
2017年08月09日リンク:https://www.kagawa-u.ac.jp/kuio/news/20046/20080/
2017年10月26日リンク:https://www.kagawa-u.ac.jp/kuio/news/20046/20074/
2019年02月28日リンク:https://www.kagawa-u.ac.jp/kuio/news/20753/23215/
大学HP;SDGs紹介
https://www.kagawa-u.ac.jp/sdgs_action/sdgs/27929/
文部科学省HP
2021年10月6日 香川大学JICA草の根技術協力事業報告会(香川大学、JICA四国センター共催)が文部科学省HPで紹介されました。
https://www.eduport.mext.go.jp/journal/project/reporting_meeting_kagawauniv_2021/

2022年4月27日 プレスリリース https://www.kagawa-u.ac.jp/files/2516/5336/6246/NewsRelease.pdf
2022年5月6日 上記、NHKニュースで紹介されました。

2.カンボジアにトイレを増設するためのクラウドファンディングを実施しました。

JICA草の根技術協力事業地域特別支援枠の「カンダルスタン郡の衛生教育改善のための学校保健室体制の構築プロジェクト」において、現地カンダルスタン郡小学校の著しいトイレ充足率の低さを改善するべく、徳島大学「おつくる」を活用してクラウドファンディングを実施しました。
2018年9月19日~12月15日まで実施し、1,768,500円のご寄付をいただきました。
2019年3月12日にカンボジア教育青年スポーツ省ナロン大臣の許可を受け、カンダールスタン郡小学校2校(No.1 Ampeuv Prey小学校、No.26 Trapaing Veng小学校)にトイレを建設し、カンボジア政府に譲渡しました。
クラウドファンディングOTSUKURUリンク:https://otsucle.jp/cf/project/kandal-stueng-toilet.html

3校のトイレの4年後の修繕を行いました。PDFファイルver2.pdf

3-1.文部科学省大学の日本型教育の海外展開EDU-portニッポン応援プロジェクト

2018年9月に文部科学省の日本型教育の海外展開事業(EDU-Portニッポン)の応援プロジェクトに採択されました。合同事業体は、香川大学の他、香川県教育委員会保健体育課、香川県看護協会の支援および高松市環境保全センターの協力を受けました。
2018年2月17日~2月25日まで、カンボジア保健省・教育青年スポーツ省からの政府担当者2名の来日研修を実施しました。これはJICA草の根技術協力事業で実施している「学校保健室体制の構築プロジェクト」に関連して、現地でのモデル事業の普及・促進を行うために保健省・教育青年スポーツ省の連携を促進する目的で実施しました。

文部科学省
Home > 海外展開のヒント集 > プロジェクトニュース > カンボジアにおける学校保健の普及を目指して(2018年度EDU-Port応援プロジェクト:国立大学法人香川大学)
https://www.eduport.mext.go.jp/journal/project/cambodia-school-health-spread-2018pr-kagawa-uni/
2018年度採択https://www.eduport.mext.go.jp/case/pilot-projects/project-list/#2018
報告https://www.eduport.mext.go.jp/epsite/wp-content/uploads/2021/03/pilot-poster201903.pdf
2019年度
報告https://www.eduport.mext.go.jp/epsite/wp-content/uploads/2021/03/pilot-poster202003.pdf
メンバーリストhttps://www.eduport.mext.go.jp/about/members/kyoin/
大学HP
2019年02月18日リンク:http://www.med.kagawa-u.ac.jp/topics/international/2h31-2-182-24/
2019年02月28日リンク:https://www.kagawa-u.ac.jp/kuio/news/20753/23215/

3-2.文部科学省日本型教育の海外展開EDU-portニッポン調査研究事業

2021年9月に文部科学省の日本型教育の海外展開推進事業(EDU-Portニッポン)の調査研究事業「香川大学衛生教育および学 校保健室体制モデルの進展 事業【カンボジア】」が採択されました。
合同事業体は、香川大学の他、香川県教育委員会保健体育課の支援を受けました。
2021年度には、カンボジア教育省と健康科学大学看護学科に対するオンライン研修を実施しました。
成果は、2021年度文部科学省「日本型教育の海外展開(EDU-Portニッポン)」 EDU-Portシンポジウムで登壇し、(日本語英語同時通訳)発表「EDU-Portシンポジウム 「新しい日常」における水平的で双方向の学び」しました。
https://www.eduport.mext.go.jp/event/symposium/symposium-fy2021/
https://www.youtube.com/watch?v=aYIn9Y4IK8E
https://www.kagawa-u.ac.jp/research/projects/edu-port/
https://www.facebook.com/profile.php?id=100042755920445
https://www.eduport.mext.go.jp/journal/project/kagawauniv-2022/

2022年9月6日から12日まで香川大学から創造工学部荒川副学部長・教授と教育学部宮本教授がカンボジア教育青年スポーツ省を訪問し、Dr. Chheykim Sotheavy学校保健局長との連携の下で、調査活動を実施しました。プノンペン市ダウンペン地区チャックトムック小学校で宮本教授が健康診断方法を説明し測定して、荒川教授が開発している、全国のカンボジア児童の健康診断データを集約するクラウド上のデータ管理システムについて運用を実査しました。
wordアイコン20220907-09渡航研修

2022年12月6日から10日までカンボジア教育青年スポーツ省から来日研修が行われました。
12月7日(水)、文部科学省EDU-Portニッポン事業の研修に参加するため、カンボジア教育青年スポーツ省学校保健局のYung Kunthearith(ユン・クンテアリス)副局長とSuon Pileap(スオン・ピレープ)氏が本学筧学長を表敬訪問しました。
本事業では、東京で文部科学省での講義、JICA本部での情報交換、港区立青山小学校での視察、香川県庁での講義、香川大学では、創造工学部でのデータマネージメントシステムの作業、教育学部での学校保健研修などが行われました。
PDFファイル230116_EDU-Port.pdf

アジア最大の教育見本市DAIDAC INDIA2023で紹介されました。PDFファイル9_DIDAC INDIA 2023 _.pdf

4年後の現地政府による自走を報告します。
https://www.eduport.mext.go.jp/journal/project/kagawa-univ_cambodia_2023/

4.厚生労働省委託国立国際医療研究センター:2019-2020年度医療技術等国際展開推進事業

2019年度7月から2020年度2月まで、「カンボジア国における学校健康診断の技術研修事業」の採択をうけ、日本の医師・看護師によるカンボジアでの学校歯科・内科健康診断モデルを2019-20年で実施しました。JICA草の根事業モデルとともに、学校健康診断モデルは、カンボジア学校保健国家計画に盛り込まれました。国家計画冊子には香川大学のメークがつき、中央政府やカンボジア全土に配布されます。この計画は、日本の文部科学省やJICAのFace Bookで紹介されています。

JICA四国Face Book 2月10日:https://www.facebook.com/jicashikoku(文部科学省Face Bookリンク)                                                                                                                                         令和2年度 医療技術等国際展開推進事業web報告会 | 国際医療協力局 (ncgm.go.jp)
https://kyokuhp.ncgm.go.jp/activity/open/R2houkokukai.html

5.ボランティアサークルを支援

2018年度に医学部ボランティアサークルを清水教授が顧問を務め、創設しました。
次のような活動を支援しています。
1)カンボジア国際ボランティア
2019年8月に看護学科学生3名がカンボジアJICA草の根事業の展開地域、カンダール州カンダルスタン郡小学校を訪問し、国内で寄付を募ったタオルや石鹸を寄贈しました。また、国立健康科学大学看護学生とも交流し、2019年10月の香川大学と同大学との学術交流協定の先鞭となりました。
交流した看護学生らの協力を得て、4年生の「看護研究」を実施し、フィードバックのオンライン・ミーティングを実施しました。
医学部HP:https://www.med.kagawa-u.ac.jp/articles/000/001/774/
https://www.kagawa-u.ac.jp/files/4716/0825/5718/1218_igakubukanngogakusei_compressed.pdf
2)香川県内の在宅療養ALS患者さんの訪問・オンラインボランティアを実施しています。
朝日新聞に紹介されました。
医学部HP:https://www.med.kagawa-u.ac.jp/topics/student/als/
https://www.kagawa-u.ac.jp/files/8316/0731/5935/20201207_igakububorantelia_.pdf
朝日新聞デジタル2021年3月1日:https://www.asahi.com/articles/ASP2X6WGRP2SPTLC00P.html
大学HP;SDGs貢献で紹介 https://www.kagawa-u.ac.jp/sdgs_action/sdgs/als/

3)2022年2月;清水教授が日本筋萎縮性側索硬化症(ALS)協会香川県支部顧問に就任

6.学術集会の開催

日本リハビリテーション連携科学学会第23回大会(大会長 清水裕子)
https://www.reha-renkei.org/activity/conference/index.html

2022年3月5-6日オンラインで学術集会を開催しました。
テーマは「リハビリテーション専門職の癒やす力~スピリチュアルケアコンピテンシー」でした。
大学HPで報告 https://www.med.kagawa-u.ac.jp/topics/event/231/

教職員

職名氏名専門分野
教授 清水 裕子 臨床看護学 看護教育学 看護心理学 老年学
助教
上原 星奈
慢性期看護 スピリチュアルケア
客員研究員 峠 哲男 神経内科学、臨床神経生理学