2022年07月13日  その他 学部生・院生

医学部学生がイオンチャネル機能の仕組みを解明!

医学科6年生 紀谷拓音さんが、分子生理学講座(藤原祐一郎教授)の研究室において新しい人工膜電流測定法とマイクロスケール熱泳動法を駆使して、カリウムチャネルに特定のリン脂質が直接結合することによってチャネルが開くことを見出しました。

細胞膜のイオンの通り道であるイオンチャネルは、細胞膜を構成する多様なリン脂質によりその活性がコントロールされています。リン脂質の一種であるイノシトールリン脂質は多くのイオンチャネルを開かせることが知られていますが、そのメカニズムは分かっていませんでした。今回、原核生物がもつKcsAカリウムチャネルを対象に、マイクロスケール熱泳動法を用いてKcsAとリン脂質の結合の強さを解析し、リン脂質を添加した人工膜再構成系を用いてKcsAの電流機能を解析しました。その結果、リン脂質の結合の強さに比例してKcsAチャネルの開く確率が高くなり、特にイノシトールリン脂質のなかでも多くのイオンチャネルの機能を制御しているPIP2が最も高い効果を示しました。

本研究は、シンプルな構造のKcsAチャネルもPIP2により機能制御されていることを見出しただけでなく、イオンチャネルにおいて“脂質との結合の強さ”と“電流機能”の間に相関があることを示した初めての報告です。今後さらに研究を発展させ、本解析手法を哺乳類の複雑なイオンチャネルに適用することで、より多くの細胞膜にかかわる生命現象や病気発症のメカニズムの解明が期待されます。

本研究は、香川大学医学部と理化学研究所放射光科学研究センターが共同で行いました。この研究成果は、紀谷さんが筆頭著者となる論文として、Journal of Biological Chemistry誌に公開されました。

 

論文情報
Takunari Kiya, Kohei Takeshita, Akira Kawanabe, Yuichiro Fujiwara “Intermolecular functional coupling between phosphoinositides and the potassium channel KcsA”
J. Biol. Chem., in press

リンク
https://www.jbc.org/article/S0021-9258(22)00699-8/fulltext